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魔法少女のマスコットは百合が見たい!  作者: ぬのきれタ
05.三人目の魔法少女
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第39話 次こそは

 モンスターに取り込まれていた親子を日常に戻して、うちは草加部さんと守里さんと帰り道を歩く。雨宮さんは戦いが終わったら月詠さんのところへ行ってしまったのでここにはいない。


「魔法少女、やってみてどうだった?」


 草加部さんがうちの顔を覗き込む。

 かわいい。小動物みたい。魔法少女の時にはでこ出しになるのに普段は片目が隠れてて謎めいているように見えるのもポイントが高い。――じゃなかった。ちゃんと草加部さんに返事をしなくちゃ。


「あ、楽しかったです……!」


 本音だった。本当に楽しかったのだ。だって、魔法なんて架空の世界にしかないと思っていた。まさか現代日本で、現実で魔法をこの手で使える日が来るなんて思わなかった。いつもより飛んだり跳ねたり、普段できないようなことができてすごく楽しかった。

 まるで自分がゲームの主人公にでもなったような気分になれた。


「うち、また魔法少女になりたいです」

「その心意気だ。次も頼むぞ、八雲」

「モンスターが現れることは良いことじゃないけどね」


 草加部さんが苦笑いする。うちはその隣にいる高校生ぐらいのお姉さんを見た。ショートカットで少し背の高いスポーティ女子って感じだ。百合の花園に出てくる酒井小百合にそっくりである。

 この人が守里咲さんだとは驚きだ。体育会系っぽいお姉さんの正体があの小さい妖精だなんて、今でも頭の中で結びつかない。

 それと一つ気になることがあった。守里さんは姿を自由に変身できると言っていた。つまり、この姿は自ら望んでなっている姿ということ。……守里さんの趣味全開って考えていいんだよね? 百合の花園に喰いついていたし。

 うちははっとする。そういえば、まだあの話をしてなかった。


「守里さん、あの……間違ってたらごめんなさいなんですけど……もしかして、“同志”ですか?」

「同志?」

「ああ、えっと」


 うちは小声で話す。


「守里さんは百合が好きなんですか?」

「好きだ」


 食い気味じゃん。守里さん、思ったよりハマってそう。

 でも良かった。好きなら一緒に語り合えるかもしれない!


「じゃ、じゃあ、今度うちに遊びに来ませんか? いろいろ漫画とか持ってるから一緒に語ってみたいです……!」

「ああ、いいぞ」


 心の中でがっつポーズする。オタク仲間でわいわいするのとか憧れだった。ネットの中にしかオタク仲間がいなかったから、現実で仲間と語り合うっていうのをやってみたかったのだ。


「ま、守里さん。……八雲さんの家に遊びに行くの?」


 草加部さんが守里さんの腕を掴む。


「行くぞ。今すぐじゃないけどな」

「私の家には来ないのに?」


 ああ、うちには分かる。草加部さんが嫉妬しているのが。草加部さん、結構草加部さんのこと気に入ってるのかな?




 家に帰ってから、いつもどおりゲームを付ける。ゲームの世界は相変わらずファンタジーが広がっている。

 でも、今日はゲームの世界みたいなことが目の前で起きたんだ。


「……あ」


 油断していると敵が攻撃してきた。うちのキャラクターが画面内で呆気なくダウンしている。


『棗氏、戦犯んんんんんん!!!www』

『やばいやばい、回復役いなくなった』

『この世の終わりか。短い人生だったな』

『短かったのは棗氏の生存時間ですけどねwwwww』


 うちがいない分、いつもより苦労しているパーティたち。それでも高レベルだからどんどんと体力を削ってようやくボスを倒すことができた。


『乙 拙者が先に落ちて申し訳ないでござる』

『それはマジでそうwww』

『珍しいな。棗さんが落ちるなんて』

『もしや棗殿は悩み事でもあるのか?』


 なんだかんだうちを心配してくれるみんなに心が温かくなる。心配させないようにうちはチャットを送った。


『いやいや。ただの拙者のミスでござる。集中してなかったで候』

『そういうことなら一旦反省してもろてw』

『過ちは誰にでもある。必要なのは次に生かすことだ』

『漆黒の堕天使さん、名言みたいなこと言ってる。まあ、そのとおりだけど』

『棗氏、もし念願の異世界転生してもすぐ死にそうwww』


 好き放題言ってくれちゃって。心配してくれたと思ったらこれか、苦笑いが浮かぶ。

 確かに少し前なら異世界転生に憧れていたし、ゲームの世界がリアルになればってずっと思っていた。でも、今は少し違う。

 守里さんにもらった緑のステッキに目を向ける。


『今は、現実世界もそこまで悪くないと拙者思うで候』

『え、どしたん棗氏。リアル滅べ主義の棗氏が珍しい』

『もしや。恋慕う相手が現れたか?』

『恋慕う、て。でも気になる。何か変化あったん?』


 何と打つか少し迷う。魔法少女になりました、は信じてもらえないだろう。ふと、百合の花園の漫画を眺めていた守里さんの姿を思い出した。


『リアルでともにオタトークできるレアキャラとの絆のレベル上げに成功したでござる』

『片仮名とござる口調が混ざってて頭に入らん。友達出来たってこと?』

『おそらく世界の卵殿の言うとおりであろう。良かったではないか。孤独を憂う日々が減ることへ祝杯を』

『減るだけでなくなりはしないんかwww』


 チャット欄が賑やかになる。その様子に顔が緩んだ。

 楽しいのはネットの中だけだと思っていた。だけど、今は少しだけ現実に期待してもいいかなって自分がいる。


 明日が楽しみだなんて思ったのは、今日が初めてかもしれない。

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