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魔眼の王と恋する奴隷  作者: 桜雨実世


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呪いの木

 私は巫女長に頭を下げて、挨拶をした。

 

 神官がフォニィ様の言葉を付け加えるように、

「巫女長がこの神殿で一番、高い魔力を持ち、祭祀や解呪、加護や主語の魔法の儀を執り行っておられる」


 漫画の聖女みたいなものか。


 私は彼女の使う魔法をさらに知ろうと、感知能力を使った。

 確かに、フォニィ様はこの神殿内で一番の魔力を持っていて、癒やしや加護、守護、解呪、浄化の優れた魔法の使い手だ。

 ただ、布や護符にその魔法を込めるような付与系の魔法は使えない気がする。


 私は頷いてから、

「私を呼んだのは、あの木の解呪時に、勝手に魔法が発動されるのを防ぐためですか?」

「あら、察しがいいわね。優れた魔法感知能力のおかげかしら?」

 巫女長は驚きを隠せずに言った。


 私は黒い木を見つめながら、

「この木からは恨みや恐怖といったネガティブな感情が強く感じられます。そして、恐らく解呪した時に強力な呪いの魔法が発動するように仕掛けられています」

「その通りよ。この木はつい最近、ルーンブルクの神殿の地下で見つかったの。恐らく何らかの儀式で使われ、その時の人々の思念が木に移ったのでしょう」


 私は脳裏にエルスピオを思い出した。

 ルーンブルク王族の血を使って、人に強烈な呪いをかけるというのが、ルーンブルク神殿の信仰だ。


 私は木をよく見て、込められた魔法を強く感じることにした。

 馬上試合で感じた憎悪と同様のものが感じられたから、恐らくエルスピオはこの木を呪いの道具として使ったに違いない。


 巫女長が、

「早速始めていいかしら?」


 私は頷くと、巫女長が室内にいる全員に強力な加護の魔法をかけた。これなら、かなり強力な呪いも受けることはない。


 彼女が解呪の魔法を使うと、木が黄金の光で包みこまれた。


 木からは早速、怨念みたいなのが溢れ出し、禍々しい巨大な角を持つ山羊の形へと具現化しようとするのを、私は防いだ。


 解呪の魔法の第二段階へと進んだ。黄金の光は更に強く輝く。

 でも、それまでだった。


 木がいきなり破裂したかと思うと、解呪の魔法が打ち消された。衝撃で室内にいる全員が吹き飛んでしまった。


 床に強く打ち付けられ、体に鈍い痛みが走る。

 私は衝撃のせいで、魔法の発動阻止の力が途切れてしまう。


 木の内部には血のような赤黒い魔石があり、それが、禍々しい巨大な角を持つ山羊の化物へと変貌した。


「申し訳ございません。しくじりました」

 私は叫んだ。

「私もしくじったわ」

 巫女長が言った。


 化物は黒い瘴気を放出しながら、私たちに襲いかかろうとゆっくりと歩む。

 あの瘴気に体が触れたら、ただじゃ済まない。


 カシェが前に出ようとしたので、私は慌てて、

「止まってください! 瘴気にアテられたら大変なことになります!」

「えぇ! そうなんですか! 僕はいつヒーローとして活躍できるんですか?」

「知らないですけど、下がってください」


 カシェは言われた通り、後ろに下がった。


 巫女長が立ち上がり、

「あれが本体というわけ? 逆に具現化してくれたほうが助かるわ」


 そう言って、強烈な浄化の魔法を放った。


 浄化に抗おうと化物は抵抗するけれど、巫女長の敵ではなかった。


 あとに残ったのは、赤黒い宝石だけ。見ているだけで、禍々しい感情が込められた魔道具なのがわかる。吐き気を催すくらいの気持ち悪さだ。


 巫女長はその魔道具にさらに強力な魔法を込めて、浄化すると、宝石は消えてしまった。


 本当にすごい高い魔力と加護や守護、浄化の魔法の使い手だ。

 もしも、この人が馬上試合の時、結界を張っていたら、エルスピオの呪いは全て届かなかっただろうと思う。


 そして、神殿がこの人を神殿から出さないのもよくわかる。

 私と一緒で、この人も一種の兵器なんだ。敵に渡すわけにはいかないから、閉じこめておくしかないんだ。


 私たちは役目を終えて、城へと戻った。


 夕方、執務からオリヴィエ王が戻ってきて、私の記憶を確認すると、山羊の化物に怯えた。


 彼は不安な表情で、

「怖すぎるよ。夢に出てきたらどうしよう」


 じゃあ、今日、ホラー映画見ようよ。もっと怖いの見たら、山羊でないと思うよ。


「それはもっとやだ」

  

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