私は生理が来ないんです
まーちゃんへ
私に生理が来ないことを不審に思った家宰の人が、私を医者に診せたよ。そうしたら、過酷な生活のせいでうまく発育できなかったんだろうだって。
そういうわけで、一生生理は来ないってことらしい。
で、最近の私は、日々、貴族たちの茶会に引っ張り出されていたんだけど一息ついたよ。行かなきゃいけない有力貴族たちのお茶会に出たから。
いつもお供は家宰の人と護衛の騎士の人が数人ね。あ、家宰の人はリュミエールっていう名前ね。
奴隷にさ、護衛つけてるんだよ。
事情を知らない人からみたら、笑っちゃうだろうけれど、私の能力は本当にすごいらしいんだよ。
まず、屋敷に入るじゃない。
で、当主が言うわけ、「我が家に悪しき魔法がないか感じてほしいって」
で、一通り感じるわけ。
「この置物に、運気が下がる魔法を感じます」って教えてあげると、当主が手配していた解呪師が解呪するわけ。
それが終わってから、お茶会がスタートね。
で、お茶会では私が童話をお話するの。それが終わったら、大抵の話題が、私に生理が一生こないってやつ。
皆が私を可哀想なものを見るような目で見るよ。人質時代の生活に良く耐えたわねって褒めてくれるよ。
なんで、こんなことが広まっているかというとね、方々に言いふらした人間がいるからだよ。
リュミエール様と王専用区画に向かって歩いていると、王妃が出てきて、
「アニエラ! あなた、生理が一生ないんですってね! 可哀想」
ニコニコ笑顔で言うんだよ。
十中八九、言い触らしたのはこいつだろうなって、思うね。
王妃つきの侍女たちもニコニコしてる。で、帰っていくわけ。
私は日本にいた時、養父に犯されそうになったからさ、子どもが産めない体だってわかった時は、少し嬉しかったね。
もしも、自分が子どもを産んで、自分が子どもに暴力を振るったらどうしようって、ずっと心配してたから、開放感すらあるよ。
それに、子どもが産めないのは、まーちゃんも一緒じゃんか。
でも、死ぬほど子ども欲しがってたよね。
リュミエール様は王妃が見えなくなってから、小声で呟いた。
「地獄に堕ちろ、クソアマ」
私の方を向いて、
「あなたのことじゃないですよ」
「はい」
私が子どもを産めないと知れ渡ったから、王妃は私がオリヴィエ王の部屋で寝ていることに、文句を言わなくなったんだって。
逆に、裏で、「アニエラが王の気を引いて、リュシルの所に王が行かないようにしてくれないかしら」って言ってるよ。
それは、ごめんこうむる。




