休日の朝
まーちゃんへ
今日は視る王は洗面とか着替えが終わっても、部屋から出ていかないよ。
「今日が休日だからだよ。平日はセリーヌとリュシルと日替わりで朝ご飯を食べることにしてるからね。ねえ、その視る王って僕の新しいあだ名かい? それもダサいよ。人前ではオリヴィエ王とかオリヴィエ様って言うんだよ。でも、二人っきりの時はもっとかっこいいあだ名で呼んでほしいな」
昨日、家宰の人に召使いの人が報告に来たのね。
その時、私にクッキーを一枚くれたから、後で食べようと思ってベッドの下に隠したんだ。
食べよう。
「朝ごはん食べてから、食べるんだよ。ねえ、僕にも一口だけわけてくれないかな」
クッキー、おいしい。
「あ、食べちゃった。まあ、一枚だけだから朝ご飯食べるのに問題はないか」
家宰の人が部屋に入ってきた。
「陛下。朝食をお持ちしました」
「ありがとう。彼女が城の者たちに良くしてもらえてるみたいでよかったよ」
「痩せていて、背も低くて、見ためが可哀想な子どもだからでしょう」
「本当に。十七歳の女性とは思えないよね」
「最初に、着替えと入浴の手伝いをさせた女の召使いは、あまりにも体が骨皮だし、全身があざや火傷や刃物傷の痕ばかりだったので、泣いてましたよ」
「歴戦の戦士の体のほうが傷が少ないだろうからね。よく生きてたもんだよ」
「やっと標準の体になってきましたが、見ためはやはり子どもですから、召使いたちも可愛がりたくもなるんでしょう」
「セリーヌやリュシルはそんな子と僕が励むんじゃないかって不安がってるんだよな。僕だって、女ならなんでもいいわけじゃないのにな」
「そうですね。あれに、手を出したら、変態ですよ」
「そうだよな。何事も限度があるんだよ」
視る王が朝ご飯を食べ終わったら、家宰の人が私にも朝ご飯を持ってきてくれた。
私はベッドの脇の隅っこでそれを受け取って、食べ始めた。
家宰の人も私と同じものを、私の隣で床に座りながら食べる。
最近はフルーツヨーグルトとパン。
今日のパンはいつもと違う。中に何か入ってる。
おいしい。
「アニエラ」
「はい」
「そのパンは、先日オープンした店の新しいパンで、木の実入りです。おいしいでしょう」
「はい」
「君たちは仲が良いな。羨ましいよ。僕も同じ物が食べたいな」
「王様に、卑しき我々が食べるような物を出すわけには参りません」
「僕だって、新規開店したパン屋のパンくらい食べたくなるじゃないか」
「王族や貴族の方々が行けるような品のいいパン屋ではありません」
「僕だって、たまには、君たちが食べるような質の悪い小麦粉を食べても良いと思うんだ」
「陛下の胃袋が耐えられるか心配です」
視る王が、私の目の前に来た。
私を呼ばないということは、私に用はないんだ。無視していい。
「ちょっとは僕にかまってほしいな」
まーちゃん、この世界のフルーツは甘酸っぱくておいしい。
さくらんぼみたいな感じ、だと思う。
家宰の人の家の庭でとれたやつだって、家宰の人がこの間言ってた。
「食べる姿も子供っぽくて可愛いよね。頭撫でたくなっちゃうな」
「彼女が身構えるか殴られモードに入るのでやめてください」
「わかってるよ。調子が悪くなることもあるし」
「調子が悪くなると、ぼんやりととしながらぐったりとしてしまいます」
「トラウマを思い出してる時だよ」
朝ご飯を食べ終わったら、お皿とスプーンは家宰の人が下げた。
視る王が、
「アニエラ。ちょっとだけ僕と一緒におでかけしよう」
おでかけ?
命令されたから、ついて行かないと。
これから、寝たいのにな。
「正確には、のぞみさんのアパートに戻るが正しいかな」
そう言って、視る王は力を発動させ、精神世界を作った。




