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溷惑  作者: 紀之介


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4/4

復讐

「ガシソ殿も…」


 レワレの口から、息が漏れる。


「今、この肉を食しましたな」


「はい」


「で、味はどうでした? <封禁>の術は成功ですかな?」


 食事卓の皿の上の肉にガシソの視線が移動する。


「さあ、どうでしょうな。某には過去に食した経験がありません故」


----------


「…レワレ殿?」


 突然、頭に浮かんだ引っかかりをガシソは言語化した。


「……先ほど貴公は………この味をずっと探していたとおっしゃった記憶があるのだが??」


 頷いたレワレに、ガシソは言葉を続けた


「…………という事は……………以前???」


「食した事になるのでしょうな」


----------


「その昔、辺境のウキヘで歓待されたおり…」


 口の中に一時溜めた言葉を、レワレが発する。


「振る舞われたのが、人肉だったようです」


「─」


「どうも、彼らの最大限の歓待とは、人の肉を振る舞うことだったらしいですな」


----------


「貴殿が特に何をしなくても──」


 微妙に表情を引きつらせるガシソに、レワレは硬い笑顔を向けた。


「既に我は、<獄穴>に落ちる事を決定付けられていたらしい」


「…いずれにしても某は、悠久連れを確保できましたから」


「お互いに、これから末永い付き合いになる訳ですな」


「はい」


----------


(…まあ)


 食後、ガシソとの会話が途切れた折。


 レワレは、食事卓に出された茶に指を伸ばした。


(……本当は神など信じていない自分が向かう死後の世界は、<冥門>の先の<冥地>どころか、<獄穴>の底の<獄地>であるかどうかも怪しいのだがな)


 同じ様に茶器を手で取った、食事卓の向こうの顔にレワレの視線が移動する。


(………ならば、ガシソ殿はひとりで落ちた<獄地>で、悠久の孤独とやらを味わう事になるのかな? それこそを、今回の件に対する我の復讐とするか)

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