17話 王都への帰還
九条は馬を引きながら、コンラードを背負い村に向かった。
「何が起きたんだ?記憶が曖昧で・・・・あまり憶えていないんだが・・・」
コンラードは頭を押さえながら、九条に捕まり歩いて行く。
九条はというと、さっき走り、人を殴り、結構疲れてしまっている。それ故、体力的にも意識的にも倒れてしまいたい。
「あの・・・・・本当に大丈夫なんですか?」
「すまない。記憶が曖昧で・・・・事情を教えてくれないか?」
九条はコンラードに一部始終話した。
その間に二人は村に着いた。だが、その頃にはコンラードの顔は体力とは関係無しに、真っ青になっていた。
村人は森の入り口に全員集まっており、死んでいるかどうか分からない者まで、未だ寄りついてる。
「おい!もう良いって!あ・り・が・と・う!だからもう良いって!」
九条は急いで、その人たちに命令を解除し、コンラードと共に村人に寄った。
そして、事情を話そうとするが、全然聞き入れようとしない。
「俺たちが何をした!?お前らに何もしてないだろ?王が後ろ盾だからってやって良い事と悪い事があるだろう!」
「ちょっと待ってください!これには事情があって!・・・・・・そうだ!テントで倒れていた人はいませんでしたか?」
九条は必死にコンラードの無実を証明しようとする。
「俺だが・・・・・」
人の中から、もう一人に肩を捕まりながら男がやって来た。
「何か憶えていませんか!?人に何かやられたとか!」
「たしか・・・狩りの帰りに・・・・・突然誰かに頭を掴まれたんだ・・・・・そして、耳元で・・・・何か囁いたんだ、・・・・・・・だがそれ以降が曖昧で気が付いたら皆がいて・・・・」
男はその場に座り込み、頭を抑える。
「頭大丈夫ですか?」
「あぁ、さっきから頭痛してな、さっきから止まないんだ」
そういえば、森を歩いてた時もコンラードも頭を押さえていたような・・・。
コンラードを見ると、隣に居なくなっていた。
「コンラードさん!何処にいるんですか!?」
〔レイ君!〕
鮎川の声が頭を過る。どこにいるのかと、周りを見渡すが鮎川の姿はない。
〔こっちこっち!〕
相変わらず、こっちと言っても分からないとなぜ気が付かない。
九条は無視して、コンラードを探し始めた。
「おい!俺らの事は無視するのかよ!?」
「そーよ!この村をどうするつもりなのよ!あんたがここに来て変な事ばっかり!出ていけ!」
逆に聞きたいが・・・。僕はあんたらを助けようとしたんだが、恩を仇で返されるとはこういう事なのだろうか?
よく見ると、集団の中で、数人は気を失っており地面で寝かされているか、死んでしまったのか横で知り合いらしき人達が泣いている。
多分、九条が命令した者達だろう。九条は解除したから行動も止まり、ただの意志を持たぬ者に戻ってしまった。
これからどうするべきなのか・・・・。と九条はため息をつく。
「待ってください!この人は悪くありません!」
突然、シャルルやアルカが九条を庇った。
「なんで、そんな奴を庇うの?!」
「僕は見たんです!この人が魔法みたいので、その倒れている人たちを操って僕らを助けてくれたこと。皆だってそうでしょ!死んでしまったと思ったらその人が助けてくれた。それはこの人がやってくれたからなんだよ!」
九条は唖然とシャルルの言葉を聞いていた。
すると、他の人たちも、思い当たる節があるらしく、「そうだ」「俺も見た」と立ち上った。
「もうこういった事は起きないはずです。それでは僕はこれで・・・」
〔ちょっと待ってー!〕
鮎川が人ごみの中から飛び出してきた。
「何処にいたんですか!こっちじゃ分かりませんよ!」
九条は鮎川に言った事を聞き返し、やるべき事はやってくれたと一安心した。
「本当は危険な事なのに、ありがとうございます」
〔いーよそれくらい、彼はこっちにいるはずだから〕
九条は鮎川を持ち上げると、言われるままについて行った。
鮎川の判断は正しかったのかもしれない。
兵士たちは村人がいる場所の反対側に集められていた。
「コンラードさん!大丈夫ですか!」
数十人と言う兵士の傍らでコンラードは横になっていた。
しかし、大半は頭を抱えておらず、コンラードも無事だと九条に言った。
「村の人達は皆がやったんだと思っています。どうしましょうか?」
「これらは俺たちの問題だ。仕方がない。そうか、『信用』っていうのはこういう事だったんだな」
コンラードは周りの兵士を見る。
「時間を見て、王都に帰還するぞ。分かったか!お前ら!」
兵士のほとんどは、へ!?という顔だったが、ここに居るよりましだという顔にもなった。
「だが、その際ここに人質を数人置いていく。数日で戻ってくるが、ここに残りたい者はいないか?!」
だが、誰も名を乗り上げる者はいなかった。そりゃそうだ。ここに残ったら、村の誰に何を言われても、こちらは何も言えないのだから。こちらに全くの意志がなくとも、その手で殺めてしまった事には変わりはない。
「すまないが、俺の独断で決める事にした。・・・・・・フリッツ、ガルシャ、二人は此処に残ってくれ」
その二人だと思われる人物が立ち上り、コンラードに近づいた。
「「御命令とあらば」」
二人はそう言うと、村人の方へと歩いて行ってしまった。
やるべき事はやる人なんだなと。この時九条はそう思った。それと同時にコンラードに対する不信さも消えていた。
しばらくして、数十人の兵士とコンラードは村人の前で、全員で土下座をした。
「やったのは俺・・・いや私たちではない。それだけは信じてほしい!」
「信じられるか!俺たちは見たんだ!お前らが不敵な笑みで俺たちの家族を、友人を、めちゃくちゃにしたのを!」
気持ちは分かるが、この人たちがやったのではない事を九条も知っている。だが、証明のしようがない事は分かっていた。
「数日後、私たちは、ここに資材、数ヶ月分の食料、資金を持ってくる。だが、その際ここに置いていく私の戦友を返してもらいたい」
コンラードは村長らしき人と交渉をすると、成立したらしく二人は頭を下げた。
「九条、君はついて来るのか?俺らは止めないが」
九条は後ろを振り向いた。卑怯かもしれない。だが、王都にも興味があったし、この世界の実態を掴んでおく必要がある。
「僕はあなた方について行きます」
「そうか、分かった」
コンラードは九条から返事を聞くと、馬に跨った。
「センセー行きましょうか」
〔そうだね。でも、レイ君鞄は?〕
九条は背中や周りを見たが鞄はなかった。
「お兄ちゃーーーん!袋!忘れてるよ!」
アルカとシャルルが鞄を持ってきて走って来た。
「ありがとうございます。それじゃぁまた会ったらその時はあのゲームのやり方でも教えてください」
二人は大きく返事をすると、九条に笑った。
九条も鮎川を首だけ出して、鞄に入れると二人に微笑んだ。




