師匠
センスタ港町西部に位置する6つの山の中で、最北端に位置する『アース』。
その標高1600メートル地点には、立派な山小屋が建っていた。ちなみに道中、どういうわけか魔物とは一匹も遭遇しなかった。
「狭い所だが、上がってくれ」
大剣をむき出しのまま担ぐ爺さんに連れられて小屋の中に入ると、無駄に生活感が漂う空間が広がっていた。おそらくここで1年以上は生活しているのだろう。雄哉たちは4人がけの大きなソファに腰を下ろす。
男はおそらく自作と思われるいびつな形をした木製の椅子に座り、一息ついてから頭を下げた。
「取りあえずは謝らせてもらおう。すまなかった。さっきの魔物はここより少し上に住んでいたんだが、戦っている最中に逃がしてしまってね。私の不注意が原因だ」
「い、いえ! こちらこそ助けていただいてありがとうございました!」
ヨルキが慌てて頭を下げる。それに合わせて雄哉と美咲も頭を下げた。
全員が再び顔を上げたところで、男がまず口を開く。
「まずは自己紹介をしておこう。私はニト。ニト=ヴァルクだ」
「武山雄哉だ」
「ヨルキ=ルミエスです」
『ミサキです』
「それにしても、なぜこんな山に登っていたんだい? ここは凶悪な魔物が住み着いている。君たちのような若い子には荷が重いだろう」
「そりゃ、あんたに会うためだよ、ニトさん」
「……私に? いったいなんのために」
首をかしげるニトに、雄哉はもう一度頭を下げた。
「俺たちを、あんたの弟子にしてくれ!」
◇◇◇◇
事情を説明すると、ニトはからからと笑った。
「ハハハ、なるほど。ランクAの冒険者になるためか。しかし私のような者を師匠にしてもいいのか? あまり有名でもなければ、人に物を教えるのも得意ではないぞ」
「ある程度の戦闘技術が学べれば、それでいいんです。お願いできませんか?」
「ふむ……」
ヨルキの頼みに唸るニト。
しかし、数秒考えただけで答えは出たようだった。
「そうだな。ここで一度、自流の剣術を客観的に見るのも悪くはないのかもしれない。ちょうど実力が伸び悩んでいた所だ、いい機会だろう」
「じゃ、じゃあ!」
「ああ。構わない。私の技術でよければ教えてやろう」
「よっしゃ!」
『おめでとうございます』
意外にあっさりと、師匠への弟子入りが完了する。
喜ぶ三人に、ニトはさっそく師匠としての役割をこなし始めた。
「そうと決まれば、まずは君たちの実力を見せてくれ。魔力量と適正魔法を確かめたい」
「ああ、はい。構いませんよ」
「はいよ」
「……」
ニトは雄哉たちが差し出したプレートを一枚ずつ確認していく。
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武山雄哉 男 十七歳
職業 冒険者(ランクB)
魔力量 97000
適正魔法 無属性 闇属性
習得魔法 無属性魔法 LV6 闇属性魔法 LV6 火属性魔法 LV4 水属性魔法 LV3 地属性魔法 LV3 風属性魔法 LV3
特殊技能 毒耐性 LV10 麻痺耐性 LV10
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ヨルキ=ルミエス 男 十四歳
職業 冒険者(ランクB)
魔力量 79300
適正魔法 風属性
習得魔法 風属性魔法 LV7 無属性魔法 LV5 火属性魔法 LV5 水属性魔法 LV5 地属性魔法 LV5 光属性魔法 LV5
特殊技能 不幸 LV7
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美咲 女 十六歳
職業 メイド 冒険者(ランクB)
魔力量 8200
適正魔法 ???
習得魔法 火属性魔法 LV5 水属性魔法 LV4 地属性魔法 LV4 風属性魔法 LV4 無属性魔法 LV3
特殊技能 料理 LV8 魔力圧縮 LV3
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目を通し終えたニトはぶつぶつとつぶやく。
「うむ、ユーヤとヨルキはいいポテンシャルを秘めている……ミサキは魔力量が少なめか。いや、魔力圧縮の技能があるということは、私の技術を取り込めばあるいは――」
「……爺さん?」
「いや、なんでもない。よし、とりあえず今の実力はわかった。まず私がお前たちにまず教えたいのは特殊技能、『魔力効率』だな」
初めて聞く言葉に、雄哉たちは疑問を頭に浮かべる。
質問したのは美咲だった。
『「魔力効率」、とはなんですか?』
「そうさなぁ。では、私の能力値を見てみるといい」
そう言ってニトが取り出した自身のプレートを雄哉に渡す。
プレートを覗き込んだ三人は驚愕した。
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ニト=ヴァルク 男 六三歳
魔力量 2100
適正魔法 地属性
習得魔法 地属性魔法 LV10 強化魔法 LV9
特殊技能 魔力効率 LV10 魔力圧縮 LV7
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あまりの衝撃に思わずヨルキが声を荒げる。
「魔力量、たったの2100!? それであの怪物をあっさりと倒したんですか!?」
「いかにも。『魔力効率』とはつまり、魔力をどれだけ効率よく生かすことができるかという技能だ。感覚的に、私は1の魔力を使っただけで1万以上の魔力を使った時と同等の魔法を扱える」
それはつまり、単純に計算すれば実質的にニトの魔力量は2100万ということになる。
まさしく、雄哉たちとは桁が違うわけだ。
「これがあるのと無いのとではこれから先、大きく違ってくるだろう。私の剣術を覚えるのはまずこれを身に着けてからでも遅くはない」
「確かに……」
「私がやった修行方法は教えてやろう。あとは自力で学んでいくといい。そうさな、取りあえずの目標はこの私の小屋まで3人の力を合わせて来ることができるようになること。これでどうだろう」
「よっしゃ、やってやるぜ」
「やる気湧いてきましたね!」
『頑張りましょう』
そんなわけで、ニトの元での修行がついに幕を開けた。
次回、ガッツリ修行パート




