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やる気なし勇者の異世界道  作者: 国衣任谷
一章
20/57

仲間

 朝。目覚めが別段悪くない雄哉は、7時にいつも通り目が覚めた。


「はーっ……大丈夫だ。問題なし。ノープロブレム」


 昨夜はちょっとしたトラブルが発生したわけだが、それはもう忘れることにしていた。

 人間の三大欲求とはいえ、食欲と睡眠欲だけでも生きていける。性欲など我慢しようと思えば我慢できる程度のものだろう。というか、我慢しなければならない。


「依頼、頑張ろう……」


 とにかく、今は冒険者ランクBを目指す。

 すべては元の世界に帰るために必要なことなのだ。

 どうやらお風呂の効果は意外に大きかったようで、心身共に完全回復していた。この分ならば今日も魔物の討伐を行うぐらいどうということはないだろうが、一応気分転換もかねて難易度Dの依頼を消化しようと決めるのだった。



 ◇◇◇◇



 その後起きてきた美咲の朝食を食べてから、ギルドで難易度Dの依頼を複数受注し、片っ端から片づけていく。

 結局のところ、雑用作業など慣れてしまえばどうということはない。依頼を遂行し、感謝されながらを繰り返すこと3時間。仕事に区切りがついたため一度ギルドに報告に向った。

 すると。


「あ、あの……どなたか一緒に討伐依頼を……その……えっと……」

「?」


 ギルド内の難易度Cの依頼を張り付けている掲示板の前で、一人の少年がわたわたと周囲に声をかけていた。ライラに依頼完了の報告しながら事情を尋ねてみる。


「ああ、あの方は昨日冒険者ランクがCになったばかりでして。一人でもこなせる難易度の討伐依頼を紹介したのですが、どうしても不安らしいです。ああして、誰かがパーティーを組んでくれないか頼み込んでいるそうですよ」

「へー」


 雄哉は知り合いがいなかったため仕方なく一人で行ったが、知り合いがいなくても彼のように周りへ呼びかければよかったのかと今更なことに気が付く。

 報酬を受け取った雄哉は少年に近づいた。


「なぁ」

「! あ、あの。僕と討伐依頼に行ってくれませんか?」


 泣きそうな目になっていた少年だが、雄哉が近づくと同時にパッと表情が明るくなる。


「ああ、いや。俺も昨日、討伐依頼を初めてこなしたんだ。お前と同じ初心者でさ。力にはあんまりなれないかもしれない。それでも良ければ同行するけど」

「かまいません、お願いします! 心強いです!!」


 少年は嬉しそうに頭を下げた。

 あわてて腰に差していた短い鞘に入った剣を見せながら自己紹介を始める。


「僕はヨルキと言います。武器はこの短剣です」

「俺は雄哉だ。武器はこのバタフライ・ナイフ」

「よろしくお願いします!!」


 ヨルキと名乗る少年は雄哉よりも頭一つほど身長が低かった。雰囲気からおそらく13~4歳ぐらいだろう。髪はボサボサで、防具は動きやすそうな分厚い革装備一式。腰には短剣と、小さなポーチ。かなりの軽装だが、それは雄哉も変わらない。駆け出しの冒険者は大体こんな装備なのだろう。


「そんじゃちょっと準備してくる。ここで飯でも食って待っててくれ」

「分かりました、お待ちしてます!」


 完全に難易度Dの依頼を受けるモードだった雄哉は装備を取りに一度部屋へ戻る。

 美咲は自分で作った昼食を食べている最中だった。雄哉も絶品料理を食べて腹を満たす。

 黒いロングコートを羽織り、グローブを手にはめる、そしてリュックを背負うために手をかけた時、ピンときた。


「いや、これこそ『陰空間』に突っ込んじまえばいいじゃねぇか」


 リュックは冒険者として必要なものが詰め込まれているため、どうしても持ち歩かなければならない。動くのに邪魔なので昨日は戦闘中に一々放り出して戦っていたが、『陰空間』の中に入れておけば必要な時だけ取り出せばいいのでとても便利である。さっそく活用できたことに満足しつつ、再び美咲に留守番を頼んでギルドへ。

 ヨルキもご飯を食べ終えたらしく、すでに準備は万端のようだった。


「それじゃ、行くか」

「はい!」


 二人はさっそく、討伐依頼へと向かった。



 ◇◇◇◇



「うわああああああああ!」

「落ち着けって、まっすぐ突っ込んでくるだけだから横に避ければいいんだ!!」

「そ、そんなこと言われても~~~~!!」


 今回の討伐依頼は例によって初心者向けの魔物【アングボア】の討伐。やって来たのは城下町東部にある山の中だった。二人がかりで、雄哉はすでに討伐経験済みということなので目標討伐数は10体。

 ヨルキはイノシシの殺気にあてられて冷静な判断能力を失い逃げ惑う。

 その姿を見て苦笑いを浮かべつつ、雄哉はフォローに徹した。雄哉が倒してしまえば簡単に終わる話だが、それではヨルキのためにならない。これからも一人で討伐依頼を受けることはあるだろうから、魔物との戦闘には慣れさせておく必要があるだろう。

 と言っても雄哉だって昨日まで全く同じ姿をしていたのだから、あまり偉そうには言えないわけだが。


「本当にヤバくなったら俺が助けに入るから、まずは殺気に慣れろ! その魔物と正面から向き合え!」

「絶対ですよ! 絶対ですからね!?」


 ヨルキは強化魔法を行使し、全身からエメラルドグリーンの魔力を放っていた。その状態での全力疾走は中々のスピードだったが、アングボアには少しずつ距離を詰められている。

 意を決した少年は急ブレーキをかけて後ろを振り返り、迫りくるイノシシに対し、


「ひ、ひいいいいいい!?」


 なんとかアドバイス通り、横に飛んで攻撃を回避する。すると偶然にも、アングボアはすぐ後ろにあった木の幹に激突した。


「プギッ!?」

「! いまだヨルキ、短剣を叩き込んでやれ!」

「は、はい!?」


 すぐに起き上がり、腰に差していた短剣を抜く。そのまま慣れない動作でアングボアの胴体に刃を突き立てた。

 鮮血が散る。魔物の口からうめき声が漏れ、一気に動きが鈍った。

 動揺したヨルキだが、雄哉は大声で言葉を投げかける。


「止めを刺せ!倒さないと意味ないぞ!!」

「うっ……うわああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ザグンッ!! と切れ味の鋭い短剣が根元まで深く刺さり、大量の血が流れる。雄哉もまだ完璧に慣れたとは言い難いので少し気分が悪くなったが、ここは少し先輩風を吹かせるためにも耐えた。


「よし、一匹目だな。気分はどうだ?」

「最悪ですよ……」

「だよな」


 しかし、一度戦闘を経験してしまえば後は早かった。

 雄哉と交互にアングボアを倒していき、次第にヨルキも慣れてくる。9匹目のアングボアと戦う時にはすでに、


「よいしょっ」

「ブギャッ!!」


 正面からアングボアと向き合っても怖気づかず、堂々と戦っていた。

 さっさと牙を剥ぎ取り、流れた血を処理してから最後のアングボア討伐に向う。

 道中、雑談をするぐらいの余裕もあった。


「やっぱ実力的には俺と変わらねーな」

「いえ、そんな。ユーヤさんがいなかったら、こんなに早く戦えるようにはなりませんでしたよ」

「でもベテランの冒険者に習ったら、もっと早く上達できたと思うぞ」

「あはは、確かに。でも、同じぐらいの実力の人と一緒だとなんか安心します。気安いですし」

「それもそうか」


 一応自分の方が年上ではあるはずだが、その辺は気にしないのが雄哉だ。

 森の中を歩きつつ、アングボアを探す。しばらくすると前方から殺気。ここまでくると、魔物の殺気も二人は多少わかるようになってきていた。


「おし、最後は二人で連携してサクッと倒そうぜ」

「賛成です。ああ、報酬が楽しみだなぁ」


 茂みをかき分けてやって来たのはやはりアングボア。

 先に飛び出したのは雄哉だった。

 全身から強化魔法の黒い魔力を放ち、疾走する。突進してくる魔物をひらりと躱し、すれ違いざまにバタフライ・ナイフで足を斬り付ける。

 当然、出血と共に走れなくなったイノシシは地面に転がる。そこにヨルキが短剣で止め。

 戦闘は一瞬で終わった。


「よっしゃ、依頼完了! 帰ろうぜ」

「そうですね。実は結構精神的に疲れてて……」

「俺もそうだったよ。まあこればっかりは慣れるしかないんだろうな。俺は昨日よりもマシだし」


 依頼は終了したため、あとは無事山を下りて帰るだけ。

 雄哉とヨルキは踵を返し、元来た道を帰ろうとした。

 その時。


「「!!??」」


 後方から、殺気を感じ取った。

 アングボアとか、フロンティーラビットのように弱い魔物の殺気よりも格段に大きい。いつまでもこんなものを浴び続けていたら死んでしまいそうな、とてつもない物。

 二人の足が震えだす。これは生物としての本能だった。

 恐怖。

 明らかに、自分達よりも実力が上の、ヤバイ魔物。

 それが、いる。後ろに。まだ離れているものの、すでにターゲットになってしまっている。


「ユ、ユーヤさん。逃げましょう。この感じだと、僕たちの手には負えないと思います……!」

「奇遇だな、俺もそうしようと思ったところだ……!」


 三十六計逃げるにしかず。

 雄哉とヨルキは強化魔法を発動させるや否や、全力疾走を開始した。

 しかし殺気は離れない。延々とついてくる。


「お、追いかけられてませんかこれ!! どうするんですか!!」

「知らねーよ!! 俺に聞くんじゃねぇ!!」


 全速力で走っているはずなのに、一向に距離が離れない。いや、むしろ少しずつ接近されている。追いつかれている。

 足を動かしながら、雄哉は考えた。どうにかこの状況を打開する策は無いものかと。


(戦う必要はないんだ! とにかく逃げ延びることができればいい! 『陰空間』の中に緊急避難は……やめといた方がいいか、魔力が切れたら出れなくなる! いや、少なくともヨルキだけなら逃がせるか? でもその場合、俺はどうすんだよ! いや、待てよ? 魔法なら遠距離からでも攻撃できるんじゃないか!?)


 簡単なことだ。魔物との戦闘に魔法を使ってはならないという規則などない。今まで強化魔法しか使ってはこなかったが、そもそも魔法は強化魔法だけではない。属性だけでも七つ、さらにイメージの数だけ魔法は無数に存在するのだ。むしろ、今までなぜこんな簡単なことに気が付かなかったのかと自分を責める。

 とにかく、雄哉は走りながら声を張り上げた。


「ヨルキ、魔法だ! 火属性でも水属性でも、何でもいい! 魔法で遠距離攻撃して、距離を離すぞ!!」

「そ、そうか、その手がありましたね!」


 二人は走る足は止めず、後ろを振り返って手をかざす。

 そして、それぞれ魔法を行使した。


「『火弾』!!」

「『飛岩』!!」


 雄哉がイメージしたのは火の塊。手のひらから魔法陣が現れ、その中央から敵に接触すれば小爆発を起こす、火の玉が吐き出される。

 一方、ヨルキがイメージしたのは岩の塊。魔法陣からこぶし大の岩が形成され、勢いよく飛び出す。

 後方十数メートルほどにいるであろう魔物に、二人の攻撃は直撃したようだった。

 火の玉は爆発し、追い打ちをかけるように堅い岩がヒット。

 しかし。


「グォアアアアァァァァァァァ!!」

「効いてないみたいですよ!? しかもさっきより速くなってるとしか思えないんですけど!!」

「言ってる場合かよ、いいから逃げろ!!」


 むしろ魔物の怒りを買ってしまったようで、さらに猛スピードで追い上げてくる。

 そしてついに、茂みを割って魔物の姿が見えた。


「【ドワールベアー】じゃないですかあれ!! 冒険者ランクBでも苦戦する魔物ですよ、なんでこんなところに!?」

「知るか! 最近は魔物が凶暴化してるとか聞くし、その辺が関係してんじゃねーの!?」


 ドワールベアー。ヨルキが言う通り、冒険者ランクBでも一人で倒すのは少し苦戦する魔物だ。

 何と言ってもこの魔物の特徴は、強力な強化魔法にある。強化された脚力は馬にも並ぶ速さで巨体を動かすため図体の割に素早く、その腕力は木の幹をたやすくへし折ってしまう。その上、強化状態だとそこらのなまくら武器は簡単に壊してしまうほどの硬い革も強さに拍車をかけている。

 今の二人には荷が重すぎる相手だった。


(考えろ、考えろ! 逃げてても追いつかれるだけだ! どうにかして隠れないと!!)


 強化魔法を使っているとはいえ、体力は無限ではない。少しずつだが確かに疲労は溜まっており、このままでは殺されてしまう可能性すらある。とにかく逃げなければならないが、そのためにはまずあの巨大なクマの認識から外れる必要があった。

 雄哉は何かいい魔法を作れないか、イメージを爆発させる。


(俺の魔法はレベルが低いし効かない。考えるべきは逃げるための魔法だ。つっても、強化魔法じゃ逃げ切れない。何か工夫がいる。あのクマから逃げる、隠れる、見つからないようにする。そのためにはどうすれば――)


 ここでふと、あることに気が付いた。

 そういえば雄哉は、影が薄い。それなりに名前は広まっているはずなのに、町中を歩いていても誰にも話しかけられない。店に入っても気が付かれなかったりして、驚かれることもあった。

 ならば魔法で、意図的にさらに影を薄くしてしまうことはできまいか。

 イメージする。

 そこにいるはずなのに誰にも見つけてもらえない。

 視界には入っているのに、認識されない。そんな自分を。

 雄哉は胸に手を当て、闇属性魔法を行使した。


「……『薄影』、ってとこか!?」


 魔法陣が形成される。それは光り輝き、体に吸い込まれて消えていく。

 これで自分自身に効果が付与されたはずだった。

 その瞬間。


「あ、あれっ!? ユーヤさん、どこに行ったんですか! ユーヤさん!?」


 ヨルキが唐突に雄哉の姿を見失った。すぐ隣にいるはずなのに、目が合っても雄哉の存在を認識できていなかった。成功である。

 雄哉は走りながら、すぐさま並走するヨルキにも『薄影』を行使。

 すると。


「グオァ……、……」

「あ、あれ? 止まった? なんで?」


 ドワールベアーが急ブレーキをかけ、不思議そうに顔をキョロキョロ左右に振る。獲物を突然見失い、動揺しているようだ。ヨルキも同じく、訳も分からずにボーっとていた。

 雄哉は少年の肩を叩く。


「俺がやったんだ。今俺たちはこのクマから認識されてないはずだぞ」

「なんかよく分かんないけど、今のうちに逃げ――いや、ユーヤさん! どこですか!?」

「こんなに近くてもわからないのか……」


 すぐ隣で肩を叩いても気が付かれない。とんでもない魔法を考え出してしまったなと、雄哉は我ながら驚いてしまう。

 と、いうより。


「今ならこのクマ、倒せるんじゃないか?」


『薄影』の消費魔力は発動時間に作用されるようだった。とにかく逃げるためにかなりの量を消費して自分とヨルキに使ったわけだが、まだ効果がきれる気配はない。

 試しにドワールベアーのすぐ目の前まで体を晒す。魔物は鼻を鳴らし、ひたすら獲物がどこに行ったのかを探している様子だった。

 バタフライ・ナイフを取出し、無慈悲にクマの両目を一閃、斬り付ける。


「ゴオゥ!!??」


 突然視界を失い、動揺して暴れ出す。

 いきなりの出来事にヨルキは目を見開いた。


「えっ、えっ? なに、どうなってるの? まさか見つかった!?」


 ハテナマークを浮かべ続けるヨルキは放っておいて、雄哉はクマの体にナイフを突き立てる。しかし、ギッ、とまるで布を押しているかのように刃が通らない。


「ああ、そうか。こういう時のための武器強化か」


 無属性魔法、『武器強化』。強化を体ではなく、武器に付加させる魔法だ。刃であれば切れ味が鋭くなったり、鈍器であれば硬化して頑丈になったりする。

 試しに使ってみると、雄哉の黒い魔力がバタフライ・ナイフの刀身を包み込む。その状態で再び切りつければ、あっさりとその皮に刃が通った。


「悪いけど、サンドバッグだ」


『薄影』の効果が切れる前に、雄哉は一方的にドワールベアーへ攻撃を加えた。なかなかしぶとい相手ではあったが、数分の格闘の末、雄哉は無傷で勝利を収める。

 するとちょうど、『薄影』の効果も切れた。そこでようやくヨルキが雄哉の姿を見つける。


「あっ、ユーヤさん!? 今までどこにいたんですか。というより聞いてくださいよ、僕は何もしてないのに、なぜかドワールベアーが傷だらけになって倒れて……」

「いや、それ俺がやったんだ」

「えっ!?」


 何が起こったのか説明する。するとヨルキは目を輝かせた。


「すごい……すごいですよユーヤさん! まさかそんな魔法を作りだすなんて!」

「そ、そうか?」

「だってドワールベアーを無傷で倒せる魔法ですよ!? 昨日冒険者になったばかりなのに、できることじゃありません。僕も頑張らないと……!」

「お、おう。とりあえず素材剥ぎ取って、帰ろうぜ」


 とにもかくにも、危機を乗り越えた二人は協力してドワールベアーの皮を全身剥ぎ、雄哉の『陰空間』にしまってからギルドへと帰った。



 ◇◇◇◇



「ええっ!? 二人でドワールベアーを倒しちゃったんですか!?」

「まぁ、運が良かったというか」

「そんな、ユーヤさんの実力ですよ。すごかったなぁ、一方的に倒しちゃうあの姿!」

「いや、お前俺の事認識できてなかったろ。ああ、これが剥ぎ取った皮な。買い取ってくれ。コツは掴んだから、割ときれいに剥ぎ取れたと思うぞ」


『陰空間』から取り出したドワールベアーの皮をライラに引き渡す。


「ほ、本当だ……まさか初心者が倒すなんて」

「いくらになるわけ?」

「あ、はい。とりあえずアングボア討伐の依頼は完了です。報酬は牙の買い取りと合わせて10万リアンとなりますね。こっちの皮は……随分と状態が良いですね。50万リアンで買い取らせていただきます」

「「50万!!??」」


 雄哉とヨルキは思わず声をあげていた。まさかここまでの値打ちがあるとは思ってもいなかったのである。


「やったなおい! 一人当たり30万リアンだぞ。しばらく金には困らねぇ!」

「えっ、僕もそんなに貰えるんですか? 一人で倒してたのに……」

「そもそも今日この依頼を受けるきっかけをくれたのはお前じゃないか。それにあの魔法があればこれからの冒険者生活も楽になるだろうし、それだけで十分収穫だ」

「そ、そうですか? いただけるならもらっちゃいますけど」


 ヨルキは喜びを隠しきれず、ものすごくニヤニヤしていた。もし雄哉が初めての討伐依頼で30万リアンも稼げば似たような反応をしたに違いない。

 報酬を受け取った二人はギルドを出た。

 そこで、ヨルキは雄哉に向って提案を出す。


「あの、ユーヤさん。もしよかったら、これからも一緒に討伐依頼を受けませんか? 僕の目標はAランクの冒険者になることなんです。ユーヤさんと一緒になら、一気に目標に近づけると思うんです!」

「そんなことは無いと思うけどな……」

「ありますよ!」


 輝く目でヨルキは訴えてくる。

 雄哉は考えた。

 一人で討伐依頼をこなすのは、正直なところ危険だ。緊急事態が発生した場合に対処できなくなる場合がある。ヨルキと出会ったのも、何かの縁かもしれない。せっかく同じ冒険者ランクCの初心者同士なのだから、手を組んでお互いを助け合うのは悪くない話だ。


「ああ、わかった。これからよろしくな、ヨルキ!」

「わぁ! ありがとうございますユーヤさん! 明日からもお願いしますね!!」


 二人は固い握手を交わす。

 雄哉にとっては異世界に来て初めてできた仲間だった。


ヨルキ が なかま に くわわった !

雄哉も便利な魔法を開発しましたね。さあ、二人でもっと強くなれ

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