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やる気なし勇者の異世界道  作者: 国衣任谷
一章
21/57

 翌日、ギルドで落ち合った雄哉とヨルキはお互いのプレートを見せ合った。現状、自分たちの力がどの程度なのかを把握するためである。

 ちなみに二人のステータスは現在このようになっている。


■■■■■■■■■■■■■■■■

 武山雄哉 男 十七歳

 職業   冒険者(ランクC)

 魔力量  5260

 適正魔法 無属性 闇属性

 習得魔法 無属性魔法 LV4 闇属性魔法 LV4 火属性魔法 LV2 水属性魔法 LV1 地属性魔法 LV1 風属性魔法 LV1

 特殊技能 毒耐性 LV10 麻痺耐性 LV10

■■■■■■■■■■■■■■■■


■■■■■■■■■■■■■■■■

 ヨルキ=ルミエス 男 十四歳

 職業   冒険者(ランクC)

 魔力量  4320

 適正魔法 風属性

 習得魔法 風属性魔法 LV3 無属性魔法 LV3 火属性魔法 LV2 水属性魔法 LV2 地属性魔法 LV2 光属性魔法 LV2

 特殊技能 不幸 LV5

■■■■■■■■■■■■■■■■


 雄哉のプレートを見たヨルキは驚愕した。


「特殊技能を持ってるんですね……って、毒と麻痺耐性LV10!? いったい何があったんですか!?」

「まぁ、色々あったんだよ。色々……」


 遠い目をする雄哉に、ヨルキはこれ以上なにも言わなかった。訊いてはいけない雰囲気だった。

 雄哉もヨルキのステータスに顔をゆがませる。


「不幸LV5……まさか昨日襲われた理由って」

「それ以上言わないでください」


 ヨルキもまた、遠い目をする。彼にもいろいろあるようだった。

 仕方なく雄哉は話題を変える。


「ヨルキの適正魔法は風属性か。風ねぇ……正直、使い道がわからないんだよな」

「そうですか? 例えば風を刃にして飛ばしたり、暴風で物を吹き飛ばしたり、色々できると思いますよ? まだ魔力が足りなくて使えませんけど」

「ふーん」


 言われても、雄哉にはいまいちイメージしづらかった。

 つまりそのあたりが魔法の得意不得意に関わってくるわけか、と魔法の教本で得た知識を思い出しながらプレートを返す。

 取りあえず、雄哉はこれからの目標を確認することにした。


「俺の目標はとりあえずランクBの冒険者になる事。ヨルキはランクAだったな」

「はい、そうです。そのためにはもっと強くならなきゃいけません」

「つっても、そう簡単に強くなれるかね?」


 強くなる。それではあまりにも目標が漠然としすぎている。

 一応、こちらの世界では魔力量が増えれば、使える魔法の質も回数も増えて強くなれる。

 では魔力量を増やすにはどうすればいいのかと言うと、


「しばらくは実戦あるのみ、ですね。とにかくたくさん魔法を使って、たくさん魔力を消費する。それでとりあえずはある程度まで強くなれるはずです」

「そう言われると、なんか簡単そうに聞こえるなぁ」

「本当に、ある程度ですけどね」


 実際のところ、ランクBぐらいならば到達はたやすい。一つ一つ丁寧に依頼をこなしていけば、よほどの事態が発生しない限り順調に力を付けていくことができるのだ。最近は魔物の凶暴化が目立つものの、そこは変わらない。

 問題はそれ以上だ。冒険者がランクAになるには、適正試験に受かる必要がある。ギルドが出した依頼を一人で完遂するという単純なものだが難易度は恐ろしいほど高く、最悪の場合は命を落とすこともありえる。


 ではランクAの強さを持つ冒険者とはどのような人間なのかというと、『技術』を身に着けているという点で他の冒険者と大きく異なる。

 例えるならばボディービルダーとボクサーの違いに近い。

 ボディビルダーは確かに立派な筋肉を持っているが、それを有効に扱えるかどうかは別の問題だ。同じ筋肉量でも、素人よりボクサーの繰り出すパンチの方が遥かに強い。

 冒険者も、魔力量を増やし、使える魔法を多くするだけで一定ラインまでは強くなれる。しかし、そこに+αで剣術や格闘術など、戦闘技能を兼ね備えている者とは強さの格が違ってくる。

 ましてやランクSなど、ミリンダスト王国に一人しかいない。その強さにたどり着くためには、それなりの試練をくぐらなければ不可能だ。

 ――という話を聞いた雄哉は、


「……目標変更。ランクAを目指す」

「本当ですか!? じゃあ一緒にがんばりましょうね!」

「ああ」


 ランクBで国を渡り歩くことができる程度の強さとライラは言っていたが、おそらくそれでは駄目だ。

 雄哉はいずれ世界を旅することになる。そのためにはそれ相応の強さが不可欠。一人の無力な少女を連れてでも危機に対処できるほどの強さとは、最低でもランクAレベルの実力が必要だろう。

 しかし、さしあたっては。


「ま、なんにせよとりあえずはランクBを目指して頑張ろうぜ。千里の道も一歩から、だ」

「はい!」


 ということになった。



 ◇◇◇◇



 雄哉とヨルキは力を合わせ、とにかく難易度Cの依頼を大量に受注し、消化した。最近は冒険者の数が減少傾向にあるため、依頼の数に事欠かない。おかげで思う存分に魔物と戦うことができたわけだ。

 一か月近く、ほぼ毎日のように戦いに明け暮れた二人は存分に鍛え上げられた。

 魔力量もさることながら、あちこちを走り回ったため足腰が鍛えられ、持久力もついている。筋力も次第に増えて逞しい体へと変貌していた。


 たまに大きな怪我もしつつ、それでも順調に力をつけていった雄哉とヨルキは、一か月後には一人で【ドワールベアー】に対抗できるようになっていた。


「ガルァ!!」

「……ッ!」


 体長五メートルに及ぶ巨体が、雄哉を殺すために迫る。

 それを必要最小限の動きで回避しつつ、逆手で握ったバタフライ・ナイフで目をつぶす。

 当然、激痛が走ると共に視界を失ったクマは暴れ出すが、雄哉の対処は冷静だった。

 無茶苦茶に振り回される腕を見切り、強化魔法による身体能力の向上を受けながら右へ左へと避け、懐へともぐりこむ。そのまま、


「ハッ!!」


 胸の中心をめがけてナイフを勢いよく突き刺した。武器強化により黒い魔力を纏うバタフライ・ナイフは、たやすく刃を体内に侵入させる。その直線状にあるのは――心臓だ。

 蛇口をひねったかのように大量の血が溢れだす。返り血を浴びる前に雄哉は飛び退き、ドワールベアーはその場に崩れ落ちた。


 一方で、ヨルキもまたもう一匹いたドワールベアーと対峙していた。

 巨体に見合わぬ素早い動きでヨルキの後ろに回り込み、クマはその凶悪な右手を振り下ろす。


「『風壁』」


 しかしヨルキが呟くと同時、地面に突如発生した魔法陣から暴風が吹き荒れる。クマは風圧で腕は薙ぎ払われてのけぞり、大きな隙が生まれた。振り返りざま、少年は右手から魔法を放つ。


「『嵐刃』!!」


 無数の風の刃が発生する。クマの全身に切り傷が生まれ、鮮血が散る。最後の止めとばかりにヨルキは地を蹴り、短剣をドワールベアーの心臓に突き刺した。そのまま巨大な魔物は大量の血を流し、絶命する。

 あっという間に戦闘が終了し、二人は合流した。


「お、そっちも終わったか」

「はい。これぐらいなら何匹来ようとも、もう怖くありません」

「言うねぇ。俺も同じような感想だけどな」


 言い合いながら、ギルドへ戻り、難易度C【ファングウルフ】10体討伐の任務を完了させる。

 そう。今回、ドワールベアーの討伐は依頼には含まれていない。

 しかし、ここで悪さをするのがヨルキの生まれつき持っていたという特殊技能『不幸』である。現在LV7まですくすくと成長してしまったこの技能は、難易度Cの依頼中にことごとく強い魔物を呼び寄せた。二人がクマの魔物と戦っていたのも、依頼途中で乱入されたからである。

 結果的に雄哉とヨルキは修羅場という修羅場を潜り抜けてきた。その結果、冒険者ランクはCなのにもかかわらずBでも十分通用する力を手にしていたのである。

 それはギルド側も理解しているようで、


「依頼完了です。報酬を受け取ってください。あと、お二人はランクBへの昇格が決まったようですよ。明日にでも手続きができます」


 ライラにそう言われ、二人は喜んだ。


「よし、第一目標突破!」

「あとはランクAになるだけですね!」


 しかし、あくまでもこれは通過点に過ぎない。

 これからはランクAを目指し、さらに精進していかねばならないのだ。

 ところが。


「お二人はランクAを目指しているのですか?」

「? その通りだけど。何か問題が?」

「いえ……それはこのミリンダスト王国だと、少し難しいと思いますよ」

「「?」」


 ライラの言葉に、雄哉とヨルキは首をかしげることしかできなかった。


修行シーンのデータ吹き飛んだので無慈悲なカット。しかし簡単にランクAにはさせんぞ

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