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閑話:オレンジジュース


あおいは、基本的にいい子だった。

指示には従うし、危険なこともしないし、わがままも言わない。


だからこそ、先生や隊長、壮馬は心配していた。

でも、それは杞憂だった。


あおいが基地に来た次の日。

朝食に出たオレンジを気に入ったあおい。

運んできてもらった昼食を見て紗夏に聞く。

「……おれんじ ないの?」

「え? うん、ないよ」

「……そっかぁ」

「そんなに気に入ったんだ」


夕食時。

「……おれんじ ない」

「1日に何度も出ないよ」

「……そっかぁ」


次の日の朝。

「……おれんじ」

「連続で出ることないよ。次出るなら来週かな」

「……おれんじ」


その日は昼食にも夕食にもオレンジは出なかった。

あおいの肩が目に見えて落ちていた。


その週の定例会議。

事務的な報告が終わり、議題があおいに移る。


紗夏から、オレンジを気に入ったことが伝えられた。


料理担当からは、

「白米よりも五穀米の方が食べると紗夏から聞いて頻度を増やそうと思っていたところなのでオレンジもできるだけ出してあげたいのですが…………

生の果物は高いので予算が厳しいですね。ただ、協力はしたいところです。」

と、話があった。


隊長も、

「そうね。食事面で少しずつ好みが見えてきているならできる範囲で対応したいわね」

と呟く。


しかし、オレンジを出す頻度を上げる具体的な案が思いつかず会議は静まり返る。

数分後、あっ!と1人の隊員が声を挙げた。

「オレンジジュースはどう? ビタミン補充の目的で予算増量の申請通りやすいんじゃないかな。談話室の冷蔵庫に入れて、あおい以外も飲めるようにしたら不公平感は出ないだろうし」

「それなら、現実的な案ね」と隊長も賛成する。

周りにこれで解決したという温かい空気が流れるが、陸斗がそれを壊す一撃を出す。

「でも、あおいはジュースで満足するのか? 果物そのものが好きだったらどうする」

「陸斗……それはわたしが、明日確かめてみるよ」


紗夏が会議で話した通り、次の日もオレンジが出なくて肩を落としたあおいにオレンジジュースを渡す。

「……これ なに?」

「オレンジジュースだよ。オレンジ気に入ってたでしょ? それの果汁を絞って作られた飲み物。これはどうかなって思って」

ごくん、と一口飲む。

「……あまい」

「よかったー」


後日、紗夏があおいを談話室に連れて行く。

冷蔵庫を開けると、あおいの目がきらきらし始める。

中にはオレンジジュースが入っていた。

「1日2本まで好きな時に飲んでいいからね」

「……おれんじ いっぱい」

「聞いてる? 1日2本までだよ」

「……きいてる」


「……のんでいい?」

「いいよ。これは、いつでも飲んでいいやつだから」

「……わぁ」

1本手に取り、ストローを刺す。

一口飲むと目の輝きが増す。

「……あまい」

「よかった」



数日後、訓練終わりのあおいが談話室に居る。

その手にはもちろんオレンジジュースがあった。


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