第1話 異世界転生
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この作品ではChatGPTを使用しています。
初稿は私が執筆し、その後の推敲や文章の整理、書き直しの一部にChatGPTを使用しています。
最終的な確認・修正は私自身が行ったうえで投稿していますが、AIを活用した作品に抵抗のある方は、あらかじめご了承のうえでお読みいただくか、閲覧をお控えください。
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【毎日 21:00~22:00 に一話ずつ更新予定です】
頬がくすぐったい。
意識の底からゆっくり浮かび上がってきた俺は、さわさわと何かが肌を撫でる感触に眉をひそめた。風が吹くたび、それは頬に触れては離れ、また触れてくる。
寝ぼけたまま目を開くと、視界いっぱいに広がっていたのは、見慣れた天井でも校舎の屋上でもなく、どこまでも青い空だった。
「……は?」
思わず漏れた声と一緒に、上体を起こす。
顔のすぐ横には、背の低い草が揺れていた。制服の袖にも草の葉が何本か絡んでいる。寝転がっていたらしい。けれど、寝転がるにしたって場所がおかしい。
あたりを見渡して、俺はしばらく固まった。
広い。とにかく広かった。
風に揺れる草原が、遠くまでずっと続いている。ところどころに木立が見えて、そのさらに向こうには、うっすらと壁のようなものが横に長く伸びていた。町を囲う城壁にも見えるし、ただの大きな外壁にも見える。でも少なくとも、日本で見慣れた景色ではなかった。
「……ここ、どこだ?」
口に出してみても、当然返事はない。
電柱がない。道路もない。車の音もしない。歩けば見つかるコンビニなんてものも、もちろんない。あるのは草の擦れる音と、吹き抜ける風の気配だけだ。
俺は慌てて立ち上がり、自分の体を確かめた。
ブレザー。ネクタイ。見慣れた制服姿。腕を曲げて、脚を動かして、肩を回してみる。頭も触って、首を軽く回す。痛みはない。血も出ていない。骨が折れてる感じもしない。
少なくとも、体に目立った異常はなさそうだった。
「いや、待ってくれ」
ついさっきまで、俺は学校の屋上にいたはずだ。昼休みにだらけて空を見ていたのは覚えている。いつもみたいにぼーっとして、そのまま少しうとうとしていた気もする。
でも、だからって次に目を開けたら草原のど真ん中って、どういう理屈だ。
誘拐。いや、ない。制服の男子高校生をわざわざこんな場所に運んで寝かせる意味がわからない。ドッキリ。もっとない。そんな手の込んだ企画では採算が取れない。
そうやって一つずつ思考を潰していった先で、どうしても頭に浮かんでしまう言葉があった。
遠くの城壁らしきものを見ながら、俺はごくりと喉を鳴らす。
「……異世界転生、なのか?」
言った瞬間、自分でも馬鹿みたいだと思った。
でも、こういうのって大抵そういうやつだ。突然知らない場所で目を覚まして、周囲には大自然、文明レベルの違いそうな建造物、そして自分だけ場違いな格好。物語の導入としてはあまりにもそれっぽい。
普通はその前に、死ぬイベントがあるはずだけど。
「いやいやいや……」
俺は頭を抱えた。
トラックだの階段だの、そういうベタな事故に遭った覚えはない。せいぜい思い当たるのは、ゲームとアニメを見すぎて寝不足だったことくらいだ。けど、寝不足で屋上で寝て、そのまま異世界に来るなんて、そんな雑な入り方あるか?
……いや、でも。
もし本当に、そうなんだとしたら。
そこまで考えたところで、遅れて別の感情が胸の奥から湧いてきた。
怖い。わけがわからない。帰れるのかもわからない。ここが安全かどうかもわからない。
なのに、それと同じくらい、あるいはそれ以上に。
めちゃくちゃテンションが上がってきた。
「やばいだろ、これ……」
口元が勝手に緩む。頬が熱い。誰も見ていない草原のど真ん中でよかった。もし人通りの多い場所だったら、俺は今ごろ相当気持ち悪い顔をしている。
「異世界転生って、マジであるのかよ……!」
思わずその場で小さく跳ねる。足元の草がばさっと揺れた。
いや、落ち着け。興奮してる場合じゃない。こういうときに大事なのは、まず情報整理だ。浮かれて突っ走って痛い目を見るのはテンプレ主人公の悪い例でよくあるやつだし、できれば俺はそうなりたくない。
「まずは所持品だな」
俺は制服のポケットを順番に探っていった。
ティッシュ、ハンカチ、財布、スマホ、イヤホン。
「うーわ、現代日本セット……」
あまりにも見慣れた中身に、逆に現実感が薄れる。
財布を開く。千円札が一枚と、小銭が少し。あとはポイントカードと交通系ICカード。どう考えてもこの世界で使える気がしない。仮にここが異世界じゃなくて海外だったとしても、どっちにしろ頼りにはならないだろう。
スマホを見れば、充電は残り二パーセント。
「終わってる」
思わずそう呟いてしまった。
地図にも翻訳にも連絡手段にもなりそうな文明の結晶が、残り五パーセントで瀕死。実質、今まともに役立ちそうなのはハンカチとティッシュくらいだった。
「詰んでないか、これ」
苦笑いが漏れる。
異世界転生かもしれないという高揚は確かにある。けれど、それはそれとして現実問題が重い。金は使えない、スマホは死にかけ、周りに人影はなし。ゲームだったら序盤のチュートリアルに案内役が出てくるところだけど、残念ながらその気配もない。
でも、まだ本格的に慌てる段階じゃない。
腹は減っていない。喉も今すぐどうこうという感じではない。怪我もないし、意識もはっきりしている。今のうちに動けば、どうにかなる可能性のほうが高い。
俺は一度、ゆっくり息を吸った。
土と草の匂いが肺に入ってくる。少し乾いた空気が、頭の熱をほんの少しだけ冷ましてくれた。
そして、遠くに見える壁のようなものへ視線を向ける。
近くで見るとどうなのかはわからない。でも、あそこが町か城か、なんでもいい。少なくとも人がいる可能性は高い。
「あそこまで行けば、誰かしらいるだろ」
声に出すと、不思議と腹が決まった。
ここで立ち尽くしていても状況は変わらない。なら動くしかない。異世界転生だろうがそうじゃなかろうが、まずは人のいる場所に行く。それが一番まともな選択肢だ。
「よし」
制服についた草と土を手で払う。靴のつま先に絡んだ葉を落として、しゃがんで靴紐も結び直した。
こんなところで靴紐を踏んで転んで、異世界生活開始五分で怪我とかしたくない。そんなことになれば、情けなさすぎて泣く。
立ち上がって顔を上げると、また風が吹いた。
草原が一斉に揺れる。視界の端から端まで、緑の波が走っていく。その向こうにある城壁らしきものは、相変わらず遠い。けれど、さっきまでよりはっきりと、そこが目指すべき場所に見えた。
「行くか」
一歩踏み出す。
柔らかい草を踏む感触が、靴底越しに伝わってきた。いつものアスファルトとは違って、少し沈む。ところどころ地面が傾いていて歩きにくい。でも、その不便さすら今は少し楽しい。
「せめて説明役くらいいれば助かるんだけどな……」
半分本気でぼやきながら、俺は城壁へ向かって歩き出す。
そのときだった。
風に混じって、かすかに音が届いた。
人の声。そう思った次の瞬間、さらにはっきりとその声が聞こえてきた。




