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フリーターの俺に世界が救えると思いますか?  作者: 干物


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27話


「2階は毒が充満してるらしいけど、どうする?」


エントランスには戻りたくないから進むしかない。


「翔琉1人なら大丈夫なの?」

「多分」

「じゃあバフを全部かけるから片付けてきて!」

「任せろ」

「ワンッ!」

「カゲツはみかと休憩な」

「クゥン……」


魔獣肉を出すと機嫌が良くなった。

単純な奴だな。


「水よ」


顔を水で包む。

これでなんとかなってほしいな。


2階に上がると毒が充満しているせいで身体が重く感じる。

それにだんだん視界がボヤけてきた。


「これ、まずいかも…」


急いで全身に水を纏わせると少しマシになったが、気分は悪い。吐きそうだ。


水を全身に纏わせながら戦うことができないから頭の部分だけ包んでいたが、吸い込まなくても身体に害がある毒だったみたいだ。


この階のスライムを全て倒せば毒も消えるか?


「しょうがないよな。元々如月さんに頼まれて来たし、すこーしぐらい壊してもいいよな…」


身体に纏わせていた水を解除した。


爆風で全てぶっ飛ばしてやる!


「火よ、風よ」


持っているナイフを持てるだけ取り出して火と風を纏わせ投げ続けた。


【レベルアップしました】


全部倒せたか?

まぁ呼吸をしても問題ないし、とりあえず大丈夫か。


2階には机やパソコンなど、色々あったが綺麗さっぱり爆散し、全て無くなっていたから生き残りを探すまでもなかった。


「流石にやりすぎたな…」


弁償しろとか言われたらどうしよう。


何か言われたら、ボスは倒しただろ?って言おう。ある程度許してくれるはずだ。多分…


さっきのが毒をくらった状態か。

速攻で倒せない敵が毒の攻撃をしてきたらまずいな。


「ワォーン!」

「カゲツ?」


カゲツが走って抱きついてきた。

倒したのがわかったのか?


「終わった?もう大丈夫?」

「みかもなんで来たんだよ」

「爆発がしたと思ったらカゲツが走って行っちゃったんだもん」

「心配してくれたのか?」

「ワンッ!」


可愛いやつだなぁ!

撫でておこう。カゲツはふわふわしてるから気持ちいい。


「おやー?おやおや、さきほどの爆発を聞きつけやってきたのですがこの痕跡、救世主様がやったのでしょう?」

「なんでコイツがここにいるんだよ…」

「ごめん。乱暴なことをすると社長に迷惑がかかることになるかもしれなくて無理やり止めれなくて…」


水無瀬もいるし申し訳なさそうな顔をしている。


「桜井さんとその化物は1階にいたのはわかっていますよ?こう見えて私も覚醒者でしてね。貴方達の動きをある程度ですが把握することができるんですよ」


覚醒者のくせにあんなにビビってたのかよ…。

戦闘をするようにはまったく見えないし、探知系の職業でスキルを使ったりしてるのか?


みかはこのリポーター達を見ようともしていない。

やっぱこういうタイプ嫌いだよな。わかるよ。


「次は炎を纏うスライムみたいだし、一緒に行くか?」

「寝なくて大丈夫?」

「ボス以外を倒そうと思ってる。上から覚醒者がするし、はやめに助けに行ってやらないと」

「じゃあ行こう!」

「ワンッ」

「では私も」


変なのが1人混ざってるな…。


「邪魔だ。来るな」

「おやおや、ようやく私と会話をしてくれる気になってくれましたか?前回は覚醒者でもない人間を2人連れていたではありませんか。それに比べて私は覚醒者です。自分の身は自分で守りますよ?」

「そのカメラマンは?」

「私が面倒を見ますので、お気になさらず」


一緒に行きたくないが勝手についてくるだろうな。相手にしなかったらいいか。


「はぁ…勝手にしろ…」

「えー!?マジで言ってんの!?」

「その代わり、俺達に話しかけてくるな。それが守れないならそのカメラを壊す」

「おぉ怖い怖い!わかりました。貴方達には話しかけず、大人しくしておきます。そういえば名乗っていませんでしたね。私は浅田(あさだ) 健太(けんた)です。よろしくお願いしますね?」


妥協点。それならいいだろう。


みかは嫌そうな顔をしてるけど我慢してほしい。

カゲツは爆破の跡をクンクン嗅いだりしている。初めて見るから興味があるんだろうな。


「カゲツー!」

「ワーン」


呼んだら来た。

完全に犬だな。


3階に行くと暑かった。

めちゃくちゃ暑い。

夏の車の中のような暑さをしている。


「あっづい〜。なにこれ〜?」

「炎を纏ったスライムがたくさんいるせいで熱が籠っているみたいだね」

「あんたも来たのか」

「邪魔はしないよ。できるだけあの人達のことを見ておくから」

「助かるよ」


浅田はニコニコしながら付いてきている。

大人しくすることをちゃんと守ってるのか。


「あれがここのスライムだよ」


ファイヤースライム。

たしかに炎を纏っているな。


「水よ」

「水をかけても蒸発してしまうよ?」

「蒸発されたら水を追加すればいいだけだ」


限界まで冷たくした大きめの水の球体でファイヤースライムを包むとたしかに蒸発していっているのがわかる。


「水よ」


さらに大きな水の球体で包み込む。


「なんだ、根性ないじゃないか」


するとすぐにファイヤースライムの炎は消えてしまった。

だが、今度は岩のように硬くなってしまった。


「ワンッ!キャイーンッ…」

「なにやってんだよ…」


カゲツが子犬のまま噛みついたが砕けなかった。

かなり強めに噛んだせいで痛そうにしてる。


「どうするんだい?」

「どうって、砕くしかないだろ」


普通に殴ったら砕けた。

前出会ったロックタートルよりかは柔らかい。


「これなら問題なく倒せそうだな」

「燈黒くん…いや、すごいね。流石だよ」

「脳筋すぎー!今筋力いくつなの?」

「50だな」

「50!?いったいレベルはいくつなんだい?」

「さっき26になったよ」

「26!?僕よりも5倍上なのか…いったいどれだけ戦ってきたんだ…」


心配そうに見てくれている。

この人は優しいな。

でも、優しいからこそこの先心配なんだよな。誰かを守るために自分を犠牲にしそうで。


「この部屋を水で満たしたら一掃できるかな?」

「他の方法はないかい?さっきのフロアでもう損害がヤバいかもしれない」

「もうここのパソコンとかも壊れてるだろうしよくないか?」

「うっ…僕の口からはなんとも言えない…」


会社員というのは大変だな。

命が危険なこの状況でも損害か。


「なら1体ずつ倒していくよ」

「助かるよ。ありがとう!」


水無瀬が安心したように胸を撫で下ろしている。

さっきおもいきり爆破させた俺にはもう怖いものがないからやってやろうと思ったけどやめておこう。


「風よ」


今度は黒刀に風を纏わせ、核を斬れるか試してみよう。


久しぶりに隠密を使用し、核がある場所を斬ってみる。


ドガーンッ!


核は斬ることができたが爆発してしまった。

風はダメだな…


「いってぇ…」


爆発したせいで壁まで飛ばされてしまった。


「大丈夫!?リジェネレイト!」

「ありがとう、バカなことしたわ」

「いいから休んで!」

「いや、みかは下がってくれ。さっきの爆発のせいでスライム達が寄ってきてる」

「血がでるぐらいの大怪我だよ?1回下がって回復しようよ!」


まぁそれが安牌だよな。

でも俺がバカなことをしたせいで助けに行くのが遅れるなんて俺が許せない。


「影よ」


風のように身体に纏わせようとしても上手くできなかった。

たしかカゲツは影を纏って大きい狼のような身体になってたよな?


今度は鎧をイメージして纏うと成功した。


カゲツは影を纏って火力と防御力を上げていたから俺にもその効果はあるはず。


「行ってくる」

「え、う、うん…大丈夫だよね?」

「大丈夫。みかのおかげで傷も塞がったからな」


黒刀にも影を纏わせようとらするが上手くできなかった。

黒刀に影を纏わせようとすると鎧が解けてしまいそうになる。


まぁ大丈夫だろう。

鎧を纏ってから少しだけ力が湧いてくる感じがするし、なんとかなるはず。


飛び込んできたファイヤースライムの核を斬り、そのまま別の個体も斬っていく。


「水よ」


影に集中していて、形など設定する余裕がないのでただただデカイ水の球体でファイヤースライムを何体か捕え、他のファイヤースライム達を斬っていく。


捕らえたファイヤースライム以外の核を斬り終えたので水を解除し、動きが鈍ったスライム達を斬りたおした。


全て倒しきり、影を解除した。


「はぁ…はぁ…」


影を全身に纏わせるのはかなり疲れた。

学校の行事でマラソンをしたときと同じぐらい疲れる。


「ワンワンッ!」

「翔琉…!?大丈夫なの!?」

「大げさだなー。これぐらい大丈夫だって」

「翔琉がそんなに疲れてるのおかしいじゃん!大怪我してるんじゃないの!?」


あー、なるほど。

俺がいつも余裕たっぷりでピンピンしてるのに、さっき怪我をしたのとこんなに疲れてるから心配してるのか。


スキルのせいで疲れたことを言うとさっき怪我をした場所を叩かれた。


「いってー!傷口が開いたりどうすんだよ!」

「うっさいバカ!もう治ってるでしょ!?」

「ワンワンッ!ワンッ!」


1人と1匹が怒っている…

こんなに心配されるなら怪我なんてできないな。


「次行くぞ」

「ほんとに大丈夫なの?」

「大丈夫だって。影の消耗が激しくて疲れただけって言ってるだろ?心配しすぎだ」

「心配なんだもん。少しは私の気持ち考えてよ」

「わかったよ、気をつけるから」


みかにシュンとされると調子狂うな。

カゲツは抱くまで足にすがりついてくるし、心配性だなぁ。


眠いしだるい。

さっさと助けに行こう。


「本当に大丈夫かい?無理しなくていいよ。自分の命を一番に考えてほしい」

「大丈夫だって!何回も言わせるな。ボス以外ならなんとかなる」


水無瀬が心配そうに見てくるが、無理やり止めようとはしてこない。


浅田はニコニコしながら黙ってカメラマンといる。


4階へ。


フロアの中央にモンスターがいる。名前はガーディアンスライム。

写真で見たときよりも大きくないか?


床と天井に細長い糸のようなものを伸ばして身体は細かったはずなのに、今はそこら中に糸を伸ばし身体の部分が丸くなっている。


「なんなんだこいつ?」


ビシッ


ガーディアンスライムから触手が飛び出してきた。

凄い速さだ。

完全に油断していたからたまたま避けることができてよかった。


みか達は大丈夫だ。攻撃されていない。

2発目も来ることがなかった。


「風よ」


ガーディアンスライムが攻撃してくるが斬り落とす。気を抜いていなければ大丈夫だな。


なるほど、声に反応して攻撃をしてくるんだな。


ナイフをガーディアンスライムの手前あたりに投げると、床に落ちる前に破壊された。


音と一定の距離で反応するのか?


「お前らは動くなよ」


声に反応してる攻撃なら来るタイミングもわかりやすい。


問題は近付けるかどうかだよな。


少しずつ前に進んでいくと部屋の端の方で寝転んでいる人達がいた。


その人達の場所へ行こうとすると首を振られてしまった。


来るなってことか?


とりあえず進んでみるとものすごい速さで触手が俺の顔めがけてきた。


これ以上先に進むと攻撃されるのか。それにさっきよりも速い。

近付いたせいで警戒度が上がってるのか?


ガーディアンスライムを先に倒したいけど、このフロアにいる人達が巻き込まれるかもしれないので倒しに行けない。


どうしようか…


1人なら倒せそうなんだけど…守りながら戦うのって難しいな。


「ガルルルルルルルァッ!」


カゲツ!?


カゲツが影を纏い大きな狼の姿になってシャドウスピアを使って触手を弾きながらガーディアンスライム目がけて走り出した。


「あのバカ犬が…!」


カゲツが触手を弾きながら突撃している今しかない!


「影よ」


黒刀にだけ影を纏わせ、刀身を伸ばした。


「ガウッ…!グアアアアッ!」


カゲツが触手に刺されたが勢いを止めず走り続ける後ろを付いていき、ガーディアンスライムの目の前まできた。


「グルルァッ…!」

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」


カゲツが最後まで触手を防いでくれたおかげで俺は黒刀を振り、核を斬ることができた。


【レベルアップしました】

【強敵を討伐しました】

【特別報酬:銀の盾を獲得しました】


報酬なんて今はどうでもいい。


急いでカゲツのステータスを見るとレベルが上がっているし、HPも満タンだ。


「カゲツ」

「ワンッ!」


名前を呼ぶと元の姿に戻っていたカゲツが走ってきた。


「お前なぁ!」

「ワン?」

「はぁぁぁぁぁ…よくやったよ。よくここにいる皆を守ったな」

「ワン!」


勝手に飛び出したカゲツを怒ろうとしたけど、あまりにも純粋な顔で見てきたので怒れなかった。


まぁ実際カゲツが来てくれなかったら死人がでていたかもしれないし。


カゲツはこの場にいる全員を守りながら戦っていた。

まさか社員の人に当たりそうな攻撃をシャドウスピアで全て相殺しながら突っ込むなんてな。


魔獣肉を渡すと元気よく食べている。


「助けに来てくれてありがとうございます!」

「礼ならここの社長とカゲツに言ってくれ」

「カゲツ?」

「この真っ黒の犬だよ」

「え!?もしかしてさっきの大きい狼がこの子!?」

「ワン?」


ここにいた社員の人は26人。

何人かはさっきのガーディアンスライムに殺されてしまったみたいだった。


生き残った社員の人達はカゲツを撫でたり、「ありがとうね、わんちゃん!」など泣きながら言っている人もいる。


「燈黒くん、ありがとう。君のおかげで…」

「礼はいらないって!それよりカゲツに食べ物をあげてやってくれ」

「そうだね、お肉でいいのかな?落ち着いたら買ってくるね。でも、燈黒くんがこの場所に来てくれたからこれだけの人が助かったんだよ。ありがとう」


真正面から感謝されるのは苦手だ。

しかも純粋な気持ち100%だとなおさら。


「助かってよかったな。この人達が生き残ったのは必死で生きようとしたからだろ。それに俺に感謝するなら如月さんに言って報酬の額を上げるよう言ってくれ」

「この男は恥ずかしくてこう言ってるだけですからね!」

「ふふふ、わかっているよ」


うるさい、恥ずかしい。


まだ全部終わった訳じゃないのに。


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