表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

 賢者。そう聞かされた俺は、ノアと名乗った彼女の顔をまじまじと見る。

 相変わらず整っている顔立ちは勿論、その肌は若々しくシワ一つない。賢者というと、妙齢のイメージがあったから、少し意外だった。


「……疑っているとはいえ、見すぎじゃないかい?」


 ノアは恥ずかしそうに顔を逸らしながらそう言う。


「……すまん」

「いいよ。疑われるのは、慣れてるからさ」

「信じてないわけじゃないんだ。この世界の賢者のことを良く知らないっていうか、何というか……」


 そう言うと、ノアは驚いた様に声を漏らした。


「知らない、ねえ。ますます、君のことが気になるよ」

「そんなに有名なのか?」

「まあ人類に限れば、知らないのなんて君くらいだろうね。なんせ賢者は――千年前、勇者パーティーに所属していた、魔法使いの名なんだから」


 なるほど、勇者パーティーに賢者とは定番な話だ。

 ……ん?


「てことは……」


 ノアは自身が賢者であると名乗った。そして、賢者は千年前の人物であると。

 彼女を見る。その顔には相変わらず、愉快そうな笑みを浮かべている。


「君は、千年生きてるってことか?」

「さてね」


 ノアは否定も、肯定もしないまま笑う。


「正確な年齢なんて、もう覚えていないさ。ただ一つ言えるのは……君はもう休むべきってこと」

「何を言って――」


 いつの間にか至近距離に立っていたノアの指が、額に触れる。

 まるで、ワープでもしたかのようだ。


「お休みアキラ。良い夢を」


 ――視界に閃光が走る。

 意識が遠のいていく感覚。声すら出せず、俺は気を失った。



***



 ――鳥の声が、聞こえた。

(朝?)

 そうだ俺は気を失って、というか失わされて……。

 意識が浮上していき、頭に柔らかい感触が届く。ベットにでも寝かされているのだろうか。

 だがにしては、マットレスはやけに固い。まるで、地面の上にそのまま寝ているかのよう。

 やけに心地の良い枕に、悪いマットレス。そのちぐはぐさに違和感を覚え、閉じた瞼をゆっくりと開けると……


「やあ、ようやくお目覚めかな」


 こちらを覗き込む、件の賢者と目が合った。


「……」


 無言の俺と、ノアの視線が交差する。


「あれ? まだ寝ぼけてるのかな?」

「いや、状況を整理してるとこだ」


 寝転んでいる俺、そして覗き込むノア。加えて、頭に柔らかい感触と来た。

 これが何を表しているのか、気づかぬ俺ではない。


「なんで膝枕を?」

「固い地面じゃ寝ずらいと思ってね。私の膝を貸してあげていたのさ」

「君が俺を気絶させたのにか?」

「ああした方が都合が良かったんだよ。話を聞くのも良いけど、寝ている君を解ぼ――いや、調べた方がずっと早いからね」

「はい?」


 何やら、とんでもない話が聞こえたような。

 上半身を起こし、彼女を見る。すると彼女は露骨に目を逸らした。


「今解剖って言いかけたよな?」


 思わず服を捲って、腹部を確認する。しかし解剖の傷や跡は一切なく、不健康そうな腹部が呼吸と共に上下するだけ。

 ノアはそんな俺を無視して話を続ける。


「……それで、調べた結果なんだけど」

「いやだから解剖って」

「驚くべきことが分かったんだ。聞きたいかい?」


 どうやら、俺の話を聞く気はないようだ。……仕方ない。今は諦めて、彼女の言った驚くべき事とやらを聞くことにした。


「……続けて」

「君、この世界の人間じゃないだろう」


 言葉が出なかった。突然事実を突かれて、動揺から体が固まる。

 ノアはそんな俺を意に介さず、話を続ける。


「ずっと疑問だったんだ。なぜ東の出身を名乗ったのか、どうして賢者を知らないのか。加えてアキラは私と出会った時、魔法を見てひどく驚いていたね。まるで、初めて見たかのように」


 一つずつ、疑問を挙げていくノア。その目には、確信が浮かんでいる。


「君が寝て、体の内部に流れる魔力を調べてみたら分かったんだ。――君には、魔力が存在しない。通常この世界の生物は皆、体内に魔力を持っているはず。誰でも知っている情報を知らない、魔力がない、そして先の動揺。答えはいくつかあるけど、君を見る限り、私は間違っていないようだ」


 ノアは結論に至るまでのプロセスを、懇切丁寧に説明していく。探偵かよ、と言いたくなるが彼女は賢者である。


「興味深い。私の知る限り、そんな人間は君で()()()だ」


 俺の内心を知ってか知らずか、ノアは、心底楽しそうに笑った

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ