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「あと、もう1つ疑問なんだけど」
強者たちが、それぞれ持っていた【夢幻絵巻】を確認しているのを横目で見ながら、雪華は訊く。
「あの蛇女がやってた魔法の無効化。
アレ、他にできる人っていないの??」
投げかけられた疑問に、その場の全員が気まずい目配せをする。
雪華からすれば、当然の疑問だからだ。
この場にいるほぼ全員が、おそらく魔法を斬って無効化できる。
実際それを行っている。
しかし、相手が早すぎて斬ることができずにいる。
ならば、リオがかつて雪華や恋の前で見せた魔法の無効化をすればいい。
アレが出来れば、事は簡単に済むはずなのだ。
なのに、蛇女ことリオはそれをする素振りがない。
何故なのか?
「いない」
参加者の一人が、夢幻絵巻から視線を上げもせず言った。
続いて別の一人が、
「つーか、出来ない。
雪華が言ってるのは、手を叩くか指パッチンで魔法を無効化するやつだろ?」
雪華は頷く。
「それが出来るのはスネークだけだ」
「なんで??」
間髪入れずに、冬真が答える。
「教えてもらって無いからだ」
「教えてもらってない?」
ここでまた別の参加者が口を挟む。
「知ってるとは思うが。
魔滅の剣含め、俺たちが使ってる魔法、技と呼ばれるもののいくつかは自然に授かったものじゃない。
スネークに教えてもらって、使えるようになったものだ。
とくに、魔法を斬る、無効化する、そして魔物や魔族に対する目くらまし系のやつはほぼ百パーセントの確率でアイツが教え、広まったやつだ」
「目くらまし??」
参加者が答える。
「最近だと、そうだなぁ。
ほら、あの名家の子が使ってた桜の花がぶわぁってなるやつ。
アレもたぶんネタ元はスネークだ」
それは、以前バベル内でデウス・エクス・マキナとスレ民たちが勝手に呼称している存在達との戦闘で、楫取恋が使った魔法のことだ。
「え??」
なんで、ここで彼女のことが出てくるのだろう。
正確には、彼女が使っていた攻撃にすらならない魔法に繋がるのだろう。
「楫取家とスネークに繋がりは無かったはずだから、たぶん誰かがあの子に教えたんだろうな。
なにせ、活動期間だけならスネークはこの世の誰よりも長く活動してる。
と、これは答えになってないな。
えーと、スネークがなんで魔法の無効化を今使わないのか、だったか??
元々の質問は??」
「え、えぇ」
「知らん」
参加者が答えると、冬真がそれに続く。
「俺も知らん」
さらにほかの参加者の声が続く。
「知らないなー」
「たしかに知らない」
その中で、一人だけ答えを示す者がいた。
「知らないけど、想像はできる。
たぶん、使えないんだと思う」
冬真がポンと手を叩く。
「あ、なるほど」
その横で、雪華がさらに疑問をぶつける。
「無効化の魔法を使うには使用条件条があるってこと?」
「たぶんな。
それに……」
参加者は言葉の途中だが言うのをやめた。
続くのは、ただの憶測に過ぎない内容だったからだ。
雪華はその場の全員をぐるりと見回して、少し呆れたように言った。
「あの蛇女のこと、あなた達は何も知らないの??」
その言葉に被さるように、一人が声をあげる。
「もしかして、これか?!
わかったぞ!!
魔族がクソ強い理由!!」
夢幻絵巻は文字通り絵巻物の形をしている。
そこに持ち主の知りたい情報が浮かんでくるシステムのようだ。
ようやくその情報にアクセスできたらしい。
「現状ダンジョンの外だと、キールを中心にして半径一キロ以内にいる挑戦者のなかでも一番強いやつのレベルに合わせる仕様になってるみたいだ!」
その場の全員が静まり返る。
「え、それってつまり……」
全員の視線が、未だにキールから逃げ回るスネークへ向けられる。
この場で一番強いのは、おそらく彼女だからだ。
「無理じゃね??」
まじでどーすんだ、これ。
という空気が流れるのだった。




