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第145話 人間メンバーでミーティング

 その日の昼食後は独立小隊レイヴンミーティングを行う。

 アデーレさん、エディットちゃん、シモーネちゃんの屋敷メンバー以外の全員が参加だが、人外メンバーも当然に同じラウンジで寛いでいる。


 アルさんとクバウナさんが金竜さんの宮殿に向かったので少し寂しいと思ったのも束の間、ドリュア様とミネル様が当たり前のように座っているのが眼に入る。

 なお、ミネル様が当屋敷に暫く滞在することは、昼食の席で皆には紹介済みだ。もちろん大喜びだったのはライナさんだよね。


 それで人間のメンバーが集まり、人外メンバーは少し離れて静かにしているといういつもの感じなのだが。


「へー、カリちゃんはそっちなのね」

「わたしはザックさまの秘書でありますから」

「あー、そんなこと言ってたわよねー。それでザックさんの両脇にエステルちゃんとカリちゃんで、それからジェルちゃんたち女性騎士とかリーアさんとユディちゃんだっけ? たくさんの女性たちに囲まれてる訳かー」

「ぱっと見ると、なんでしたっけ、人間の言い方で言うところの……」

「はーれむ、とか言うんじゃない? ドリュアちゃん」

「それですわ」


 こういった場面に初めて触れるミネル様とドリュア様なのだが、騒がしいですぞ。確かにうちは女性メンバーが多いのだけどさ。


「おまえたち、煩いぞ。ザックたちは仕事で集まっておるのだから、静かにしていなさい」

「ドリュアさんとミネルさんは余計なこと言わないのよ」

「はーい」


 ほら、ケリュさんとシルフェ様に注意された。


「いちおう、あらためて皆の立場を紹介しておきますと、ジェルさんが調査外交局独立小隊レイヴンという僕の麾下の隊の隊長で騎士で、ライナさんとオネルさんも同じく騎士。ブルーノさんとティモさんが従騎士で、ユディちゃんとそっちに居るフォルくんが従騎士見習い。リーアさんはエステルちゃん付きの調査外交局員で、ユルヨ爺が顧問、アルポさんとエルノさんが特別局員。それでカリちゃんは本人が言ったように、長官付き秘書ということになります」


「ふんふん。要するにここに居る人たちが、いざとなればザックさんの戦闘部隊メンバーということよねー。人間にしては、みんなかなり強そうだわ。それに、そうかー、ほとんどがシルフェさんの風の加護とかの影響で、ライナちゃんは別格として魔法もみんなそれなりに遣えるのねー。あ、ユディちゃんとフォル坊やは、あなたたち見た目は人族にそっくりだけど竜人族ね。だから火魔法も上手そうなんだ」

「僕は、フォル坊や、ですか……」

「カァカァ」


 いまは14歳になったフォルくん、恥ずかしそうに下を向かなくていいからね。

 あと、今日はユディちゃんの膝の上で丸くなっているクロウちゃんは、そうやって余計なことを言わない。


「だから、煩いぞミネル。ザックたちのミーティングが始まらないだろうが。いいから静かにしとけ」

「はーい」


 俺たちがミーティングを行っているときは、ケリュさんをはじめとした人外メンバーは人間のことには口出しをしないということで、必要な場合以外はだいたい静かにしているのが常なのだけど、ミネル様が加わるとこれまでとはどうも様子が違って来そうだ。



「こほん。あー、それではミーティングを始めますぞ」と、それまで口を開くタイミングを逃していた進行役のジェルさんが、ようやくミーティング開始を宣言した。


「今回は急遽、王都屋敷に戻った訳だが、大切な目的であったお客さま方の訪問滞在もひと段落したことから、これからの予定について皆で確認と共有を行いたいと思う」


 そう、今日のミーティングはそのためのものですね。

 三戦神と精霊三姉妹が顔を揃えての会議からのアマラ様とヨムヘル様の訪問と、いきなり持ち上がったイベントのために俺たちは王都屋敷に戻って来ていたのです。


「事前にザカリーさまからいただいている指示では、まずは王宮訪問による国王陛下との面会だな。これはリガニア紛争関係をお話するのが目的となるが、オネル、先方へのアポはどうだ?」


「はい、ジェル隊長。ザカリーさまのご指示により、本日午前に王宮内務部に行って来ました」


 調査外交局の対外リエゾン役でもあるオネルさんは、早速今日の午前中に王宮まで行ってくれたんだね。

 国王への面会願いなので、王宮内務部が窓口となる。


「担当職員に話を通しましたところ、折よくブランドン・アーチボルド長官殿がおられ、直接にお話しすることが出来ました。それで、もちろんわたしからは詳細は話しておりませんが、リガニア紛争を調査した結果をご報告したく、当家ザカリー長官が国王陛下とお会いしたい旨、お願いをしてまいりました。ブランドン長官殿には本件を快諾していただき、国王陛下のご意向と予定を確認次第、直ぐにご連絡くださることとなりました」


 本来は武闘派肌のオネルさんだけど、持ち前の冷静沈着な性格からこういった役割もだいぶ板に付いて来たみたいですな。

 闘ったら強くて怖いけど普段は賑やかな3人のお姉さん方も、それぞれに自分の個性を活かすようになっております。


「うむ、ご苦労だった、オネル。では日程については先方の返答を待てば良いのだな」

「はい。ブランドン長官殿のお話では、そう間を置かずにご連絡くださるとのことでした」


 人外メンバー席の方から「ここの人間の国王かー。わたしも暫くこの地に居る訳だし、ひとつ顔でも見ておくかなぁ」「おまえは行かんで良い、ミネル」とかなんとかの小声でのやりとりが聞こえて来たけど、取りあえず無視しておきます。



「わかった。それでは次の件だが、ザカリーさまの後輩たち、学院の総合武術部と強化剣術研究部の合同合宿に今年も参加するかどうかということだが。ザカリーさま、あらためて確認なのですが、これについてザカリーさまとしては、出来れば参加したいということでよろしいのですかな?」


 今日が8月の1日で、これまで通りなら合同合宿は18、19、20日の3日間だね。

 そろそろ俺たちの参加の可否を決めておかないといけないな。尤も現役部員たちは夏休み中で、いま頃はみんな帰省している筈だ。


「そうだね、ジェルさん。リガニア紛争の調査探索もひとまず終了して、お客様訪問も取りあえず済んで、あとはドワーフ王国襲撃事件の余波があるかどうかだけど、これもこれまでの経緯から直ぐに何かが起きるということは無いと思うので、8月のその時期は大丈夫なんじゃないかなと思う。なので、出来れば参加の方向で」


「わかりました」

「ひとつ良いかしら」

「はい、何でしょうかエステルさま」


 このタイミングで珍しくエステルちゃんが、「はいっ」と手を挙げて口を開いた。


「ザックさまやうちのみんなが合宿に参加するのは、いまの現役部員さんたちのためにも良いと思うのですけど、今年は参加するとして、来年は、その翌年はって、これからのことも考えておいた方が良いと思うのよ」

「これからのこと、ですか?」

「ええ、それはね……」


 エステルちゃんが指摘したのは、俺がと言うかうちが合宿に参加するというかたちで今後も毎年関与するのかどうか、ということだ。

 彼女はそれが良く無いと言っているのではなく、今後も当面そうするのであれば、こちらの立ち位置というか役割をある程度ははっきりさせておいた方が良いのではと話した。


 というのも、俺が在学中のこれまでの4年間は、合宿に必要な野営道具一式をはじめとして食料やらなんやらを、部長である俺のグリフィン子爵家と、副部長のヴィオちゃんのセリュジエ伯爵家が援助というか丸抱えで行っていたからだね。


 うちが関与しなければ、それが今年からは丸々無い。

 それで今回は合宿をどう行おうとしているのか、そう言えばカシュパル部長に聞いていなかったよな。


 まあ、うちやセリュジエ伯爵家が援助していたのは、ある意味で領主貴族家の所謂ノブレス・オブリージュ(貴族に相応しい責任)とそう言ったら偉そうだけど、助けられる立場の者が助けるという考え方もあってのものだ。


 それで今年の総合武術部員はというと、4年生のカシュパル部長が騎士爵家の師弟で、副部長で3年生のヘルミちゃんは準男爵家の次女さん。

 以下、2年生のフレッドくんはヴァイラント子爵家の次男で、ブリュちゃんは魔導騎士爵家の子女。1年生のディックくんは準男爵家で、マヌエリタちゃんはサルディネロ伯爵家だよな。

 あー、あと途中入部となった隣国ミラジェス王国の王太子であるバルトロメオくんがおりますけど。


 騎士爵家はもちろん準男爵家もこの国では領主貴族ほどの余裕は無いだろうから、家格だけで言えばフレッドくんとマヌエリタちゃんの家なのだけど、まだ2年生と1年生だし、さてどうなのでしょうね。


 フレッドくんの叔母さんでヴァイラント子爵家王都屋敷執事のマルハレータさんとかは、うちが援助するとか張り切りそうだよどね。

 あと、辺境伯夫人のエルヴィーラさんの実家であるサルディネロ伯爵家はうちの親戚筋にあたるし、あそこも助けそうか。


 ともかく今年の合宿をどうやって行うのか、そこら辺の確認も含めて、うちとしてどう関わるのかを決めないといけない。



 それからもうひとつエステルちゃんが言ったのは、俺が部長として日々の部活動を共にして来たのが現在の2年生までだということだ。


 1年生のふたりとは事前に知り合っているし、バルトロメオ王太子は俺が入部を助けたようなものだから良いのだけど、それが来年、そしてその次の年と経過して行くと、やがてがっつり関わった下級生は卒業して行く。

 まあ早い話、フレッドくんとブリュちゃんが4年生になる再来年までだよね。


 俺もその頃にはどうなっていて何をしているのかは分からない。

 でもあと3年間と期限を付けて、その後は関わりが自然に薄くなって行くのも寂しい話だし、総合武術部を創った本人としては、まだ見ぬ将来の後輩にも部が存続している限り何かしてあげたいという気持ちはある。


 だけどエステルちゃんの指摘は、創部して卒業してしまった先輩にいつまでも頼るような関わり方が本当にいいのでしょうか、ということだった。

 つまり、俺やグリフィン子爵家が関わらなくても自立して続いて行くのが、学院の課外部としての本来のあり方なのでは、という尤もな意見だ。


「ザックさまはおせっかいで、色んな人をどんどん自分の手元に引き寄せる性質があって、いつまでも放っておけない性格で。そこは良いところではあるのですけど、学院の子たちって、そのときそのときの状況を踏まえて、自分たちでなんとかするっていう自主独立の精神が基本なんですよね?」

「そうでありますね」


「ザックさまも在学中はそうして来ましたよね?」

「はい、であります」

「そうしたらそこのところを、あの子たちのため、これからのためと思って、ちゃんと考えてあげてくださいね」

「はい」


 エステルちゃんは、それは良くてこれはダメとか具体的な意見は言わなかったけれど、おっしゃる通りでありました。


「あはは、やっぱりエステルちゃんがいちばん強くて、いちばんしっかりしてるんだわー」

「ですねぇ。どこかのご夫婦と似てますよね」

「そうよねぇ。さすが義理とはいえ、兄弟はなんとなく似てるわねー」


「ドリュアさん」

「あ、わたし何か言いましたっけ? シルフェお姉さま」

「ミネルも変なところで妙に納得するんじゃない。我はだな……」

「まあ、ケリュよりもザックさんの方が、奥さんの言うことは素直に聞いてるわよね」

「あなたもそう思うでしょ、ミネルさん」

「シルフェ、我だっていつも素直に……」

「何十年も行方知れずだったあなたが、そう言います?」

「あー」


 なんだかあっちから益体も無い会話が聞こえて来たけど、まあ無視しましょう。



「そうしましたら、総合武術部の合同合宿は、基本は参加する方向で、ただしこちらからこれまでのような援助が必要なのかどうかも含めて、事前にザカリーさまがカシュパル部長なりと連絡を取って確認したうえで、最終的にご判断いただくということで。それでよろしいですかな?」

「はいであります」


「それでは、ザカリーさまから事前にお聞きしている最後の議題としては、当王都屋敷内に祭祀のやしろを設ける件でしたな」


 祭祀のやしろという体裁のお菓子転送装置ね。

 アマラ様とヨムヘル様からショコレトールなどの当家謹製のお菓子やカーファ、そしてたぶん地上世界のお酒なんかも送るように言われているのは、皆にもなんとなく話してあった。


 それで送る方法としては、天界との繋がりが強くなっているこの場所に祭祀のやしろを建立して、そこに供えれば良いというのがミネル様の意見だった。

 ですよね? ミネル様。


「うん? 発言していいのかな?」

「お願いします」

「うふ。簡単な話よね。要するに窓口を作ればいい訳で、それにはあなたたちが言うところの祭祀のやしろっていうのが、人間にはいちばん作り易くて使い易いと思うわー」


「なるほど、ですな。ですが、祭祀のやしろを建立して維持するとなると、依り代をどうするのかとか、祭祀を行う者を置くとか……」

「あら、ユルヨのお爺ちゃん。そんなのは簡単なことよ」

「ユルヨのお爺ちゃん、ですか……。ミネル様にそう呼ばれると、なんとも畏れ多い」


 ユルヨ爺がそう呟きながら少し顔を赤らめていたのは、見なかったことにしましょう。


「だってさ。ここにはそもそも天界の神や地上の自然界を司る精霊が居て、なによりもアマラさまとヨムヘルさまの息子さんが居るんだから。なので、依り代なんかいらないのだけど、そうねぇ、確かアマラさまは普通は鏡で、ヨムヘルさまは剣だと思うので、そこらから鏡と剣を持って来てくれれば、わたしとケリュで依り代にしてあげるわ。やしろの建物はどんなんでもいいわよ」


 ははぁ、そういうものですか。でも鏡と剣をそこらからって。要するに物の元の価値は問わないということですかね。


「わかりました。で、やしろにはやっぱり、武神三神とかそれぞれの精霊様とかの祠も作った方がいいんですかね?」

「それを本人を前にして聞くか? ザック」


「だって、義兄上あにうえって、ファータの里のやしろに行ったときに風の精霊様の祠で何か祈ってたじゃないですか」

「お、おま、それをここでバラすかぁ」


「あははははは」

「まあ、ケリュ義兄さま」

「あなた、何してるの」

「あー、そのだな……」


 ミネル様は笑い過ぎですよ。

 まあいつも奥さんには素直なケリュさんだそうだから、奥さんに日頃の感謝を直接言えなくて、ああやって奥さんの祠に感謝を捧げていたって、あとでちゃんとそんな理由を話しましょうね。


 それはともかく、そうしたら早速、祭祀のやしろの建立に取り掛かりましょうかね。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

引き続きこの物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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