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いざ、未来に紡げ 6

途中、陽風屋に立ち寄り、玄関先にいたメリルに夕食を断りつつ、バルマ達が案内するファレンジア神教の教会へ向かう。


いつも、メリルって玄関先にいるよね。タイミングが合うのかな?


そんなことを考えながら、ファレンジア神教の教会に到着した。


見た目は本当によく見かける宗教の教会だった。屋根の一番高いところには、ひし形の飾りがついていた。


「さぁ、こちらですぞ。」


バルマの案内なので、スローペースで進む。


出入り口は頑丈な木製のドアで、ノブにも細工がされてとても豪華なのが解る。


ジルとラーファにドアを開けてもらうと、私達は教会の中へと入った。


「うわぁぁ。」


中にはベンチと支柱が整列していて、高い天井はこの教会の広さを実感出来た。正面の台付近には神官が人々と談話している。

そして、左右にはきらびやかステンドグラスがあり、中の照明に照らされて綺麗だった。


「いかがされましたかな?」


バルマが私の声に反応して振り返って聞く。私はあ、と呟いて見上げた。


「ステンドグラスが綺麗だったので。」


「見るのは初めてでしたかな?アッシャルダのガラス技術は他よりも高いのです。」


「そうでしたか。」


ステンドグラス自体はあっちの世界でも見たことあったけど、実物はなかったな。

昼間見に来たら、太陽の光でキラキラして綺麗だろうなぁ。


そんなことを考えながら見ていると、バルマはこちらへ、と私達を台の向こうにあるドアへ案内した。


神官や市民達が有名人に会えた、と歓声と会釈や握手に対応しながら、ドアを通る。


「いやはや、大人気ですな。」


「私も驚きました。」


なんか、一躍トップアイドルになった気分だよ。嬉しいような怖いような、不思議な気分で正直居心地悪い。


ドアの向こうは長い廊下で、左側には中庭に沿って窓が並び、右側には等間隔にドアが並んでいた。


とあるドアの前に立つと、バルマ達は中へ、私達を招き入れた。

一瞬、アイズの私室ばりの豪華さに引いたが、並んでいる芸術品は、宗教画のようだった。

本棚には分厚い本が何冊も並び、おそらく聖書や哲学的な本だろう。


────あの分厚さのラノベあったけど、縦の長さが足りないか。


「どうぞ、こちらに。」


アイズの私室にあったような豪華なソファに座ると、すぐジルが紅茶を用意し始める。

目の前のソファには、バルマとラーファが座った。


「いかがでしたか?私どものアッシャルダ支部の教会は。」


「ええ、とても綺麗でした。」


「御使い様にお褒めいただけるとは光栄ですな。」


紅茶が運ばれてきて、一口飲んで一息つく。

─────あ、普通においしい。


「用件は?」


今まで不機嫌のまま黙りこんでいたノインが、たまらずバルマに話しかけた。


「では、手短に。私達ファレンジア神教会はアネモネ様の全面サポートをしたいと思っております。」


「いらない。」


バルマの話をバッサリと切り捨てたノイン。


「し、しかし、」


「我が主には、自分がいればいい。」


あまりにもバッサリと切り捨てるので、バルマも食い下がれず項垂れた。隣にいるラーファも顔をしかめる。


一度、ノインの顔を見てから念話を飛ばす。


『そんなに嫌なんだね。』


『ぶら下がりたいだけ。アネモネのためにならない。』


ノインは顔色ひとつ変えずに、バルマ達を睨み付けるように見つめている。


「一つ、伺ってもいいですか?」


「何でしょうかな?」


「このファレンジア神教は、我らが偉大なる主神様を崇めてるのですよね。」


ずっと聞きたかったことを、バルマに聞いてみようと話しかけると、バルマは頷く。


「属神様方に関しては崇めてないのですか?」


「属神?────あぁ、昔は確かにそう呼ばれていた存在がありましたな。主神と共に崇めていたと史実を見ましたな。」


「今は、違うのですか?」


ようやく絞り出したように思い出したバルマは、私にさも当然のように頷く。


「属神も元は主神と同じですから、私達ファレンジア神教会は主神だけを崇める方針になったのです。」


────なるほど、これが、"否定"か。まぁ、なんというか、複雑な気持ちだわ。


だって、属神からしたら勝手な都合で生み出され、そして消された。

でも、人間からしたら次々と属神が生まれ、数えきれなくなったら、崇める対象が変わってしまうから、統一するしかなかった。


ノインは最早、敵意に近い不機嫌な雰囲気を出しながら、バルマ達を睨んでいる。


「そうですか。ちなみにいつ頃そうなったんですか?」


「確か、70年位前でしたかな?ファレンジア神教教典内に史実がありますので、確認が出来ますが?」


「いえ、だいたいの年月がわかればいいので。それと、あともう一つ。」


私は真っ直ぐと、バルマ達を見て問いかける。


「貴方達は、ファレンジア神教をどう思っていますか?」


敢えて直球な聞き方をすると、バルマ達は言葉をつまらせた。


自身の崇める宗教をどう思うか、を即答するかを見ていたが、バルマ達は詰まった。


「どうしました?」


御使いの前で即答できず、嘘もつけないから何を言えばいいか、詰まったんだろうけど。


───ああ、そんな程度なんだ。


「いや、どういう意味ですかな?」


「そのままですが?」


天然っぽく装って首をかしげる私に、バルマ達は意図が読めずに戸惑っている。


「弱き人々の支え、です。」


おずおずとラーファがそれらしい回答を返してきたが、バルマとジルは頷くだけだった。


「そうですか。教えて頂きありがとうございます。そろそろ時間ですから、これで失礼させて頂きますね。」


やや早口で切り上げ、私達はソファから立ち上がると、ドアに向かった。


「お待ち下さい!」


ジルが慌てて私達に近づくが、ノインが間に入った。一瞬、戸惑ったジルだが構わずに私に話しかける。


「出立はいつ頃なんでしょうか?」


「何故それを聞くんですか?」


私は気になって聞き返すと、ジルは取り繕ったように話す。


「あぁ、いや。ぜひ、信者の皆様に会っていただければと思いまして。」


「─────我が主は見世物じゃない。」


ノインは腰の剣に手をかけながら、ジルに威圧をかけた。殺気を感じたのか、ジルは真っ青な顔で後退する。


「ノイン。」


と優しく肩を叩いて、ノインを制する。チラッと私を見たあとに、ノインは剣から手を離した。


「申し訳ないですが、これ以上は時間は取れないです。では、失礼します。」


私はスッと会釈すると、ノインとライガと共にドアを開けて出る。


閉める間際、私は振り返ってバルマ達を見る。敢えて冷めた目で見下すような顔で見ると、閉まったと同時にひぃっと小さい悲鳴が聞こえた。


教会の廊下を歩きながら、私は今後の目標の中に、一つの項目を足した。


─────ファレンジア神教を変える、と。

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