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再び巡る想い出の道 2

久々に起きたくない朝なのに、眩しい朝日に結局目が覚めてしまった。

どうしようかと悩んで寝返りすると、ふと視界の端に何かが見えて、私は固まった。


「いやぁ、おはようアネモネ。寝起きは良い方のようだね。」


────アイズが、ベッドの横にいた。


一気に覚醒した私は思わず掛けていたタオルケットに顔を埋めて悶えた。


「~~~~ッ!!~~~ッ!!~~~ッ!!」


「なんでかと言われても、愛する婚約者の旅立ちを見送るためさ。ただ、気が急いて寝起きに立ち会ってしまったが、」


アイズはとても嬉しそうに喋っているので、私はタオルケットからチラッと目線だけ出して伺う。


「とても幸せだよ。」


その言葉には高揚感と優越感、幸福感が入り交じっていた。


私は寝起きが一番見られたくないのにィ!


「うう、寝言とか、変な寝顔でしたら、申し訳ありませんでした。」


「まさか!」


アイズはどの君でも愛らしいよ、と返すので、やはり間抜けな寝顔だったんだろう。

私は真っ赤になりながらまたタオルケットに顔を埋めた。


「アネモネ、ごめん。」


椅子に座っていたアイズの後ろから、ノインが申し訳なさそうに出てくるので、私はまた顔をあげた。


「ノインが謝らなくていいよ。アイズ様が嫌な気持ちになったら、申し訳なさすぎるだけだし。」


「またそれを言うのか。アネモネは何をしても愛らしいよ。」


「もう!アイズ様!私の気が済まないんです!」


と私がベッドから飛び出ると、アイズはとても楽しそうに笑ってみせた。


「悪かったよ、アネモネ。でも、君が気にするようなことはない。婚約者だからといって、大袈裟な言い方をしてる訳じゃないんだ。」


「むぅ。」


「───そんなに気にするなら、私は毎夜、寂しくなってしまうよ。」


アイズの言葉に、私は彼が言いたいことを察して再び真っ赤になってしまう。


そ、それって夜、一緒に寝たり、とか?


「あ、いや、アイズ様!が、嫌じゃなければ、その────。」


「なんだい?」


アイズはわざとらしく問いかけてくる。


ぐ、頑張れ私ッ!!!


「一緒に過ごせるようになったら、い、一緒に寝させて、下さい。」


「何を言うかと思ったら、当然だよ。」


あー!!もう!!!言わされたぁぁぁ!!


アイズはとても満足げに笑って椅子から立ち上がる。


「さて、さすがに着替えるようなら、一旦出ようか。」


といって、さっさと部屋から出ていってしまった。ようやく去った嵐のような出来事に、私は深いため息をこぼした。


「大丈夫?」


ノインがまだ申し訳なさそうな顔でこちらを伺うので、私はあはは、と笑ってタオルケットを離した。


「大丈夫、大丈夫。」


心配そうに見つめるノインに、笑みを浮かべて返す。


「はは、恥ずかしい。」


「アネモネは美人、大丈夫。」


「もう、ノインまで。」


いつものような小さな笑みを浮かべたノインに照れつつも返すと、洗面所に向かっていく。

ささっと入ってからドアを後ろ手で閉めてから、その場にうずくまった。


ああああもううううなにいわせんだぁぁぁ!!


心の中でがっつり叫んで、言い様のない言葉でなんとか発散する。

一通りそれを済ませると、はぁとため息をこぼしてから立ち上がる。


さ、さて、気を取り直して着替えよ。


今日の服装は、薄紫色のオフショルダートップスに、手首までのフリルがついた白い手袋。ハーフパンツ丈のオフホワイトのズボン。白いブーツを履いて、マントは腰よりも上の丈にし、フードを付けるがわざと被らずに下ろす。

髪型は一つにまとめてお団子にして、アネモネの髪飾りと組紐で結ぶ。

いつものアクセサリーをつけて、私はもう一度鏡を再確認する。


「よし。」


朝の一騒動があったが、概ねいつも通りの気持ちに戻ってきた。


「まぁ、いつかはそうなるよね。」


そう呟いてから、タンスを腕輪にしまった。












「またいつでも会いに来てくれ。」


そう言ってからアイズは私を抱き締める。


早朝の城の出入口は誰もおらず、遠くの方では兵士が数名巡回してる姿が見える。


「勿論です、アイズ様。」


「また土産を楽しみにしてるよ。」


私は名残惜しさをぐっとこらえて、手を振りながら城を後にした。

早朝の街中はまだ静かさがあり、朝早くから空く店には忙しなく人が出入りしていた。


アッシャルダからマーシャットへ向かう町の出入口から抜けると、マルスと歩いたあの左側に"神山"を見ながら、土が踏み固められ剥き出しの道に入った。


「そろそろ飛んでも大丈夫かな。」


と背後を振り返り、前に意識を向けた時だった。


────あれ?なんか懐かしい気配が感じる。


それは一つではなく、6つも。しかも、それは物凄い勢いで元々あった魔の森の方角からやってきたのだ。


「ソウヤとクロバは、初めてになるんだっけ。」


と話しかけると二匹は首を傾げるが、次の瞬間には二匹は空を見上げた。


「お、二人とも気づいたのね。」


「流石にあんなに大きな気配は気づきます。」


「なに?!なに?!」


空には大きな翼を広げ、悠々とその巨体を見せつけるように6つの龍が飛び回りながら、私に近づいてきた。


『アネモネー!!』


聞こえてきた懐かしい声達が聞こえ、私は胸から込み上げる気持ちを押さえて、空にいる龍達に声をあげた。


「モモ姉さん!モリス姉さん!サラ姉さん!ミーゲル兄さん!ガラード兄さん!シルト兄さん!!!」


全員の名を呼ぶと龍達は空中で人形態に変え、モモとサラが真っ先に私に抱きついてきた。


「会いたかった!会いたかった!アネモネェ!」


「アネモネちゃーーん!」


二人とも熱烈な抱擁で会いたかった気持ちを伝えてくれた。それがすごく嬉しくって涙がこみ上げてきそうになる。


「なかなか来れなくてごめんなさい。」


「何言ってるんだよ、アネモネ。忙しいのにわざわざ立ち寄ってくれて、本当にありがとう。」


ミーゲルがにこやかに微笑み、そっと頭を撫でてくれた。


「ツェルクには会えましたか?」


声をかけてくれたシルトが優しい笑みで近づいてきたので、サラを抱き締めたまま私はそちらに向いて答えた。


「はい、クーラさんにも。」


「良かったね。おや?また従魔が増えたの?」


モリスがソウヤとクロバを見て、ニッコリと優しく微笑む姿を見て、二匹は一度私の顔を見る。


「この人たちが、前に話した兄弟の契りを交わした龍人族の人達だよ。」


「───そうでしたか。お初にお目にかかります、ソウヤと申します。」


「ボク、クロバ!」


従魔二匹が挨拶する中、ライガはというと。


「おぅ、もっとやってくれ。」


何故かガラードの腕の中でモフられまくっていた。


「ガラード兄さん、お久しぶりです。」


「あぁ。」


素っ気ない返答だが、顔は仏頂面の割にライガを撫でる手はやめる気配はない。


「てっきりツェルク兄さんと一緒かと思ってました。」


「───たまにいく。」


「あ、そうなんだ。」


と話してみていたが、やはりライガのモフりに集中してるガラードの返答は素っ気ない。


まぁ、ライガが気に入ってるようだからいっか。


「アネモネ!じいじ達が待ってるよ!乗って乗って!」


サラが一瞬で龍形態に変わると、私の前で身体を地に伏せてくれた。


「そうだね、行こうか。」


三度、ドラゴンズキャッスルへ向かう龍の群れは空に舞うように、壮観な光景だっただろう。

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