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再び巡る想い出の道 1

「味はどうかな?アネモネ。」


和やかな夕食のテーブルに、アイズはとても幸せそうに私に話しかけた。


「とても美味しいです。」


並べられたのは寿司で、目の前でシェフが握っていて、どれを美味しくてついつい頼んでしまう。


この小さめな個室にカウンターがあり、隣にはアイズのみ。


気分はまるでお忍びで高級寿司店に来たようだった。


「アネモネと二人での食事は、まだしてなかったからな。」


とアイズは笑みを浮かべていた。


それを賛成してくれたノインに、アイズはビックリした様子だったが、食べながら渡した懐中時計の話に納得していた。


「騎士、か。確かに彼にしかつとめられないな。今はまだアネモネの傍にはいられない私の代わりに、大役を果たしてくれて感謝しきれないな。」


若干僻みっぽい言い方に聞こえたが、アイズは変わらず寿司を口にしていたので、私も気にせず寿司を食べる。


「何も言わずに来てしまったのに、こんな贅沢な食事をありがとうございます。」


「いや、大したことが出来ない婚約者の不甲斐なさを許してくれ。」


「そんなことを言わないで下さい。次はきちんと連絡しますから。」


と二人の世界になりつつある中を、寿司を握るシェフは終始にこやかにしているせいか、和やかな食事を過ごしている。


「明日は早く出るのか?」


「朝方には出ようかな、と。あまり長居してると離れられなくなりそうですから。」


「そうだな。私も同じ気持ちになってしまいそうだよ。」


食後もそんな話をしながらイチャついている時にふとあっ、とやろうとしたことを思い出した。


「なんだい?」


「いえ、アイズ様。以前私が渡した水晶はお持ちですか?」


アイズは勿論、と首から外して見せてくれた。


───本当に肌身離さず持っててくれたんだ。


私はそれを受け取ると、すっと目を閉じて集中して、水晶に魔力と生命力を籠めていく。


「アネモネ?」


アイズはビックリしていたが、私は構わずに籠めた後に目を開けて、ちゃんと出来てるのか確認してから、アイズに返した。


「遅くなってすみません。やっとお返し出来ましたね。」


「いいのかい?」


「勿論です。本当はヴァーレデルドでやるつもりだったんですが、他に居ましたから。」


食事が終わった後にいつの間にシェフが個室から出ていっていたので、今しかないと思った。


「───ありがとう。」


染み入るような嬉しさを、アイズは微笑と共に私に向けてくれた。

それだけでやった価値はあったな、と私はその嬉しさを、心の中でしっかり刻み付けた。











今夜はそのままアッシャルダ城内の客間に泊まることにした私は、豪華すぎる湯船の中で先程の余韻にフワフワしていた。


「えへへ。」


食事中もワインやカクテルを飲んでたのもあるのか、先程のやり取りが嬉しすぎたのか、私は満たされまくっていた。


やっとアイズに渡したあの水晶に、魔力と生命力を籠めることが出来た。


「やっとだー。」


お湯に口元まで潜って沈むが、念のためにお風呂時にはなるべく水中呼吸が出来るあの珊瑚色の布のチョーカーをつけている。

まぁ、人目のある露天風呂や大衆浴場では使わないつもりだから、これくらいは勘弁してほしい。


「明日はドラゴンズキャッスルでお土産と、ツェルク兄さんの預かりものを、ヴァッツさんに渡して、」


といった辺りでふと、私はツェルクとガラードの父親であるヴァッツのことを、どう思ってるか考え始めた。


そういや、私がツェルク達と魂の契りを交わしていることをヴァッツは知ってるんだったっけ?

私は話した記憶がないが、もしかしたらツェルク達が話してくれてるかな。


とあまり問題ないと判断して、私は次にやることを思い浮かべながら、湯船に浸かって歌を歌ってみた。


もう会うこともない、あの憧れのアイドルの歌だったが、気持ちはすっかり離れていたおかげで、悲観することはなかった。


ふとアイドルの顔を思い出そうとしたが、浮かばなくなっていて、なんとなくノインやアイズ、マルスの顔を当てはめて、MVを脳内再生してみた。


「────あ、ヤバい。尊い!!!めちゃくちゃ尊い!!!ありがとうございます!ありがとうございますぅぅぅぅ!!!!」


豪華すぎる浴室に私のあまりにも下らない黄色い悲鳴と湯船から跳ねるお湯の音が木霊したが、幸いにも誰にも聞かれずに済んだ。

アネモネ「え?やらない?好きなアイドルの顔を好きな人に当てはめて妄想しない?」


作者「夢女子バロスwwww」

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