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やりたいことを 3

「じゃ、ビーフシチューで。」


ノインが先程のマッシュカウを使った料理をする、ということで肉もキノコも使えるようにビーフシチューを頼んだ。


「ん、わかった。待ってて。」


ふっとノインがいなくなると、私とライガは地面に敷いたレジャーシートの上で並んで待つことに。


腕輪から辞書を取り出して、近くの木の枝を持って、ガリガリと地面をノートに文字練習をする。


すると、ライガがそれを見ながら、さっと避けたり、文字を消したりし始めた。


「こら、ライガ。私、勉強中なんだから。」


そういうが、ライガは遊んでもらってると思ってるので、嬉しそうに飛び回ったり、文字を消したりしている。


はい、可愛い。許す。


それからしばらく、本を百科事典に変え、流し読みをする私の傍で、ライガは付かず離れずの距離で遊んでいた。


「お待たせ。」


と声がして、顔をあげるとパンの入った篭と鍋をもったノインが帰って来た。


レジャーシートの上に鍋敷きを置き、お玉で深めの木の器にビーフシチューを盛り、私に差し出した。


「ありがとう。」


「ライガはこっち。」


とノインは、ライガ用に柔らかくほぐした肉が入った木の器を地面に置いた。


すぐさまライガが飛び付くように器に顔を埋めた。


「ライガの分までありがとう、ノイン。」


「ううん。途中までは一緒だから。」


ノインはさらに水の入った皿をライガの近くに置くと、そちらにも顔を埋めた。


「にゃあぁ。」


そして、きちんと礼を言うライガ。


従魔契約したあとから、なんとなくだけど喜怒哀楽がわかるようになった。


元々なのか、ライガは礼儀をわきまえてる気がした。


「うん、美味しい!」


ノインのビーフシチューは絶品で、パンにつけて食べながら、ノインも目がキラキラしていた。


「さっきウィリアからもらった百科事典に、食べられる魔物の代表格なんだって書いてあったね。」


そんな話をしながら、用意されたお茶を飲む。


「うん。でも、おかしい。普段は温厚。」


「あ、それも書いてあったね。何があったんだろうね。」


すると食べ終わったライガが、ノインを向いて鳴き出した。


「ねぐらを襲われたって。」


ライガの言葉がわかるノインの通訳によると、ライガの家族を含むフォレストキャットがねぐらにしていた洞窟になだれ込んできたらしく、交戦したものの、弱いライガは母親と離脱できたが、すぐに一匹に追い回されたのだという。


「途中で母親もやられて、逃げたのがさっき。」


「うわ、そんなに強いの?マッシュカウ。」


私の言葉にノインは首を横にふった。


「そこまでじゃない。だから、変。」


ずずっとお茶をすすりながら、ライガを撫でると母親を思い出したのか、悲しげに鳴いた。


「大丈夫、私達がいるからね。」


そう言って撫でまくってると、落ち着いたのか太ももを枕に横になった。


「んー、何にせよ、一度街に行ってみようか。何か情報があるかもしれないし。」


「わかった。片付ける。」


ノインは私から器を受け取ると、篭と鍋をもって再びいなくなった。


食後の軽い休憩中に、遠見の魔法や熱感知の魔法など周囲の警戒をしてみる。


特に今のところは、微かな風が吹き続ける草原しか見当たらなかった。


「終わった、行こうか。」


ノインが帰って来て、私はライガを起こすと立ち上がった。


「じゃ、向かいますか。」










平和な旅路は、やがてちらほらと小屋や畑が見えた頃に終着となった。


周囲には壁がそびえ立ち、右側の大きな川と、左側の森に挟まれた街だ。


少し小高い丘から街道は下るように進み、街へ向かう。


「あれが、イズリールね。」


「うん。アネモネ、これ。」


ノインが私に一枚のカードを差し出す。


「ん?これは。」


受け取ったカードを見ると、キラキラした銀色のカードで表面に文字が刻まれているが、何て書いてあるかは一部はわからなかった。


ただ、さっき練習した私の名前は読めた。


「冒険者のギルドカード。昨日の内に作った。」


「えっ、私の登録、してくれたの?」


すでにカードを用意されてるとは思わず、ノインにそう聞くと、彼は申し訳なさそうに謝った。


「ごめん、身分証明の一つだから用意した。」


「そっか、なんかごめんね。本来は私がやらなきゃいけなかったでしょ?」


ノインは首を横にふった。


「旅をするのは冒険者と行商人位。街には身分証明がないと入れない。」


下界ならではの面倒な事情があったらしく、ノインは嫌そうな顔で話した。


「そっか、ありがとう。使わせてもらうね。」


文字を読み書きできないこの状況で、ギルド登録したら面倒なことになりそうだったし。


ありがたく受け取ると、ギルドカードは腕輪にしまった。


「ランクは4、下から2つ目。」


「数字なんだ、ランクは。」


「うん。下から、5・4・3・2・1。5だと遠出が出来ないから4にした。」


ノインが軽く冒険者ギルドのシステムを教えてくれた。


私はなるほど、と呟いて礼を言った。


「冒険者ギルドに裏口入門した気分ね。」


「合ってる。だから、言わないで。」


ノインの忠告を素直に受けとる。まぁ、話したところで信じないでしょ?


私は元異世界人で、この世界の主神から世界を変えろと使命を帯びてて、仲間のノインが万能属神です─────とかさ?


ふと足元でだっこをせがむライガを見て、抱き上げながらノインに聞く。


「ライガを連れて歩いて大丈夫かな?」


「旅の途中で従魔契約した、って言えば良い。多分、何も言われない。」


ノインは抱き上げたライガを撫でながら答えた。


ご機嫌なライガは喉をならして甘えている。


「なら、大丈夫かな。いこっか。」


私達は街道を下り、長閑な畑が並ぶエリアを通りながら、門の方へ進む。


途中、川の方へいく道があったが、街を迂回するルートらしく、私達は無視して街へ向かう。


やがて、数人の鎧を着込んだ兵士らしき人と石造りの小屋、そして、見上げる程の高さがある石壁に頑丈な跳ね橋門のある検問所にたどり着いた。


検問所の所に数人が並び、兵士が呼ばれるのを待ってるようなので、私達も列に加わる。


少し前に並んだ人が呼ばれ、兵士といくつかの会話の後、カードを差し出した。すぐ、兵士が小屋の小窓からカードを何かにかざしていた。確認できたのか、すぐにカードは持ち主に返され、門をくぐっていった。


「へぇ、なるほど。」


どんな街でもこんな形でチェックしていれば、身分証明も必要だろう。


ノインのおかげで、スムーズに通れそうだ。


「次!」


私達の番となり、兵士に近づいて挨拶する。


「こんにちは。」


「ん?冒険者か、ギルドカードを。」


腰の剣を見られた後、兵士が差し出した手にカードを渡す。ノインも同じくギルドカードを渡すと、兵士は小窓から中へのめり込むように入り、何かを探してるようだった。


すぐに小窓から這い出て、戻ってきた兵士には私達のカードと、何かの首飾りがあった。


「確認した。それから、足元にいるフォレストキャットは従魔か?」


「はい、ライガと言います。」


「ん。なら、従魔登録がなかったから、ギルドへ行って申請してくれ。街中ではこいつを見える位置に身に付けさせてくれ。」


兵士の指示にしたがい、私は足元にいるライガに首飾りをつけると、気になるのか前足で数回叩いたのち、くるくる回り始めた。


首飾りを貰えて嬉しかったようだ。


「特にないなら、ずっとつけておいてくれ。ほら、カードを返す。」


「ありがとうございます。」


私はギルドカードをポケットにしまうふりをして、腕輪の中に戻した。


「それから、宿は決まってるのか?」


兵士からそんなことを聞かれて、隣のノインを見るが、彼は首を横にふったので、私はいいえ、と答えた。


「そうか。オススメは風見亭だ。飯がうまいぞ。」


と兵士はやや笑みを見せながら、わざわざ宿のオススメを教えてくれた。


私はニコニコと笑いながら礼を言って立ち去った。兵士も満更でもない顔で咳払いして、次の人を呼んだ。


私達は無事、門をくぐってイズリールの街中へ入った。


「イイ人だね、宿を教えてくれるなんて。」


「今の、ナンパの手口。」


やや不機嫌そうにノインが呟いた。


「えっ、ナンパ?あれ、ナンパだったの?」


「運が良ければそこで会えるから。」


──────言われて納得した。


そうか、言われた通りに風見亭に私達が泊まれば、兵士がそこにいけば会えるということか。


まわりくどいナンパだな。人生初なんだから、もうちょいインパクトのある内容で、かつイケメンがよかったな。


しかも街中じゃなくて、真っ先に門で会うとは。


「宿は別のところにする。」


ノインがまだ不機嫌にしている。


────これ、嫉妬してくれてる?喜んでいいのか?まぁ、好意的に思っておこう。


「うん、今は恋愛する気もないし。」


とノインの提案に乗っておくことにした。


ごめんね、兵士さん!

アネモネの理想のナンパ、ベストスリー


第三位 「ピンチの時に颯爽と現れて見事に解決した後、報酬は君のキスでと言われること。」


第二位 「身近で必死なアピールをしまくった後、突然いなくなり、めちゃめちゃかっこよくなって帰ってきたとき。」


第一位 「舞踏会やパーティーでいきなりダンスを申し込まれ、失敗しても可愛いと流してくれた上で、星空のテラスで片膝ついて花を渡してくれた時。」



げきあまぁぁぁぁぁぁいっ!!!!

砂糖吐き出すくらいあまぁぁぁぁぁぁいっ!!!

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