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世界を滅ぼしたい勇者✕世界を救いたい魔王~勇者様、ちゃんと魔王を倒してください!~  作者: よし はるか


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番外編 伯父様との再会

 魔王が倒されてから数ヶ月が経った。

 セレス家当主、ハリー・セレス男爵は妻子を伴い王都のタウンハウスに戻っていた。

 ハリーは五年前、妹リーサをバルク侯爵家に嫁がせたことをずっと後悔していた。

 姪のアリサが魔王になってバルク侯爵とリーサを殺したなどと、荒唐無稽な噂が流れてきても信じなかったが、世間の目は冷たく、妻子を守るために領地へ籠ることを余儀なくされた。

 それでも、彼なりにずっとアリサが生きていると信じていた。


 タウンハウスに戻ってきて少し経った頃、隣のベルク子爵家から手紙を受け取った。

 正式な招待の手紙だった。

 何事かと思いつつ、了承の返事を出し約束の日を待つ。

 当日、正装を着込み、ベルク子爵家を訪れた。

 同じく正装を着込んだベルク子爵は、満面の笑みで出迎えてくれた。


「よく来てくれた。さあ、どうぞ」


 普段なら自室にそのまま招待されるが、この日は広い応接室に通された。

 式典用の鎧やきらびやかな剣など、騎士家らしい調度品が飾られている。

 応接室にはすでに二人、ソファに座っていた。


「お久しぶりです、伯父様」


 懐かしい声だった。

 それは黒髪に猫のような金の瞳の女性から紡がれた声。

 隣には、ベルク子爵によく似ている青年。勇者カインだった。

 ハリーは女性の顔を見つめた。目の奥が痛い。こみ上げてくる熱いものを止めるすべを、ハリーは持たない。


「アリサ……?」


「はい」


 髪の色も目の色も変わってしまったのに、面立ちはリーサによく似ていた。

 記憶の中のアリサはまだ少女の面影を残していたが、目の前のアリサはしとやかな女性に成長していた。


「すまなかった……」


 ずっと、喉の奥に詰まっていた言葉が漏れた。あんな男の元へ嫁がせなければ、リーサもアリサもまだセレス家で笑っていたかもしれないのだ。


「私も、ごめんなさい。もっと早く会いたかったのだけれど、叙爵されてからやることが多くて……」


 王家から非公式の書簡で、アリサがリーサを殺した犯人でないことは知らされていた。さらに魔王を倒した勇者であり、魔王になってしまった後も勇者の力で世界を守り続けていたことも。

 しかし、実際に会うまではどこか絵空事のように感じていたのは事実だ。


「生きていてくれて、ありがとう」


 アリサが勇者だとか魔王だとか、そんなことはどうでもよい。こうして、生きていてくれたことが救いだった。


「伯父様……」


 アリサの目が潤む。何度も何度も頷いてくれた。


「アリサ、報告」


 しばらく無言で見守っていたカインが、アリサに優しく声をかける。

 アリサはその声に笑顔で頷いて、ハリーに向き直った。


「伯父様、私カインと結婚することにしたの」


 頬を染めて、アリサが告げた。

 叙爵され、セレス家よりも上の爵位になったアリサに報告の義務はない。それでも、こうして報告してくれたことが嬉しかった。


「そうか、おめでとう」


 素直に祝福の言葉をかけた。今度こそ、アリサには幸せになってほしい。


「それで、領地で結婚式をすることになったんだけど、伯父様たちを招待したいの」


「それは……。セレスティア領までの道のりはとても危険なんだろう? 私にそれを乗り越えられるのか……」


 セレスティア領までは、勇者パーティでさえ片道で一月もかかるという。険しい山道や危険な獣が跋扈する森を通らねばならないとも聞く。

 アリサには申し訳ないが、戦う力がないハリーには、たどり着ける自信がなかった。


「そうなの。危険だから、ベルク子爵家に転移魔法陣を置かせてもらったのよ」


「ん?」


 なにか、さらっとおかしなことを言われた。

 転移魔法陣とは、勇者パーティに参加した最高峰の魔道士ロイドのような力のある魔道士が何人も、何か月も力を注ぎ入れてやっと出来上がる代物だ。


「大丈夫! ベルク子爵は信頼できる方だもの。転移魔法陣を置いておいても問題ないわ」


「そういうことじゃない」


 むしろ問題ありありだろう。

 そもそも設置できるのがおかしいのだ。


「? 結婚式のためだけだからと、王家に許可をもらっているわ」


「俺がもぎ取っておいたんですよ」


 にこやかにカインが追い打ちをかける。

 どうしよう、かわいい姪がおかしい方向に進化してしまった。

 ハリーは頭を抱えたのだった。





 セレスティア領で行われた結婚式は、領民たちみんなに祝福されたとても温かいものだった。

 額やこめかみに角を生やした魔族たちを見て、ハリーは肝を冷やしたが一度話してみれば人間とまったく変わらない。

 アリサを領主として大事に思ってくれているのが伝わって、ハリーは胸が温かくなった。

 聖女リンが癒やしの力を利用して、幻想の花びらを出現させる。

 ピンクの花びらが舞い散る中、カインと共に歩くアリサは、とても美しかった。

 カインは隣に並ぶアリサを見て幸せそうに目を細めていた。

 ハリーはその表情を見て、アリサはきっと幸せに生きていけるのだと、静かに確信した。


 ベルク子爵家に設置された転移魔法陣は、結婚式のための特別措置なので、これが終わったら撤去される予定だ。そうしたら、アリサに会うことは難しくなるだろう。

 ハリーは、会えなくてもずっと姪の幸せを願っていこうと心に誓った。


 ハリーはまだ知らなかった。

 アリサが自身の転移魔法で、たびたび王都に訪れるようになることを。 


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

とりあえずこの番外編でおしまいです。


現在新作を連載中です。

乙女ゲームの主人公に転生した女の子とモブ転生した女の子たちによるオフ会から始まる、それぞれの恋愛模様を描いた群像劇になります。

『拝啓 推しを攻略済みの転生者の皆様。主人公です。オフ会をしましょう。大丈夫です、怒ってません。ただ愚痴を言いたいだけなのです』〜残っていたのはヤンデレ幼馴染だけでした〜(https://ncode.syosetu.com/n3766mm/)

ご興味がありましたら、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

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