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異世界風・野営の道具準備

 カフェを出たあと、アルトはふと立ち止まった。

「……野宿か……セットがない」

その小さなつぶやきを、シルが聞き逃さなかった。

「じゃあ、道具屋行こう。ギルドの近くだよ」

キセルとジャックも頷き、リオルたちも当然のように後ろに続いた。



 道具屋の扉を開けると、冒険者向けの装備が所狭しと並んでいた。

テント、寝袋、調理器具、油ランタン。

革袋、ロープ、マント、矢筒。

どれも重そうで、どれも“普通の冒険者”が使うものだ。

アルトは棚を一巡したあと、静かに言った。

「うん、必要なのは、これだけです」

手に取ったのは、火打石と固形燃料、飯盒、ポンチョ、パラコード、ナイフ、そして靴下2枚。

シルが目を丸くした。

「いやいやいや!寝袋は?テントは?」

アルトは淡々と答える。

「地面で寝られます」

「寝るな!」とジャックが即座に突っ込んだ。

リオルも慌てて前に出る。

「アルトは軽装すぎる!」

キセルとシルとジャックが、慌てて“普通の冒険者装備”を持ってくる。

「寝袋!」「テント!」「ランタン!」「調理セット!」

アルトは一つひとつ見て、静かに首を振った。

「……重いと動けません」

その言葉に、全員が一瞬黙る。

アルトはまだ幼く、背も低い。

筋力も発達していない。

軍人としての技術はあっても、体はまだ子どもだ。

シルが困ったように眉を寄せた。

「でも……雨の日とか、どうするの?」

アルトはポンチョを軽く持ち上げた。

「布を二重に巻いて、油を塗れば撥水します。革袋の内側に葉を敷いて、松ヤニ…樹脂を塗れば、防水になります」

「松ヤニ……?」

「樹脂?そんな使い方する人初めて見た……」

ジャックとシルが同時に呟いた。

ジャックは腕を組んで考え込む。

「水はどうするの?魔法使いがいないと危ないよ?」

アルトは少しだけ考えてから答えた。

「煮れば大丈夫です。木炭で濾過すれば、もっと安全です」

「いや、そうじゃなくて……」

ジャックは額を押さえた。

「そもそも水が手に入らない場所はどうするの?」

アルトは目を見開いたあと、静かに言った。

「……水源を探します。地形と……植物を見れば、わかります」

キセルが呆れたように笑う。

「そんなの無理だろ……」

ジャックはため息をついたあと、アルトの肩に手を置いた。

「アルト。基礎の水魔法くらい、覚えておいた方がいいよ。

基礎魔法なら、魔力が弱くても出せる。コップ一杯くらい出せるかだけど……ないよりはずっといい」

マーティンも手を挙げた。

「魔力操作なら、僕も教えられる。鍛冶の魔力操作と似てるから、得意だ」

アルトは二人を見て、ゆっくりと頷いた。そして、深々と礼をした。

「教えてください」

ジャックが笑った。

「よし、決まり。じゃあ今日は道具を揃えて……明日、魔法の基礎から始めよう」

アルトは手に持った飯盒とポンチョを見つめた。

(水が手に入らない時、少しでも、安全になるなら、好きでない魔法だって使ってみよう)

その表情は、ほんの少しだけ、安心していた。

本作をお読みいただきありがとうございます。

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