高原にて
王都の外れに広がる高原は、朝の光を受けて静かに揺れていた。
アルトはいつもの私服のまま、弓を背負い、カイとユナと並んで歩いていた。
今日は薬草採取の日だ。
三人で昼食を食べる約束もしていた。
……のだが。
「なんで、こんなに人がいるの……?」
アルトは後ろを振り返った。
そこには、リオル、従者、騎士2名、そしてマーティンまでついてきていた。
まるで小規模な遠征隊だ。
「いやあ、せっかくだしね。外に出るのも悪くないだろう?」
リオルは笑っている。
「俺は貧乏貴族というやつだからな。今後は鍛治職人になる予定だから、素材の知識は必要でな」
マーティンは少し照れたように言った。
アルトは小さく首を傾げた。
(……薬草採りに、こんなに人が来るものなのだろうか)
カイとユナは楽しそうに話している。
「ねえアルト、冒険者ギルドに行くんだって?」
「うん、リオルさんと一緒にね!」
アルトは頷いた。
「ええ。今日の採取が終わったら、案内してもらう予定だよ」
その時だった。
森の奥から、枝を踏み砕くような音が響いた。
「……?」
次の瞬間、焦った様子の狼よな風貌をしたモンスターが3体、飛び出してきた。
「構えろ!」
騎士が叫び、従者とマーティンが武器を抜く。
だが、彼らが構え終わるより早く──
ひゅ、と風を切る音が四つ。
次の瞬間、3体のモンスターは同時に地面へ崩れ落ちた。
眉間に、一本ずつ矢が深々と刺さっている。
アルトは淡々と弓を下ろした。
「……今日は、少し遅かったかもしれません」
リオルは目を丸くした。
「アルト……今の、どうやって……?」
マーティンも驚愕している。
「構えから射つまでが……速すぎる……」
騎士は倒れたモンスターを見て、息を呑んだ。
「この距離で……眉間に……? 魔法の補助もなしで……?」
従者は静かに呟いた。
「……魔法が使えないのに、ここまで正確に……」
アルトは倒れたモンスターに歩み寄りながら言った。
「高原まで出てくるのは珍しいですね。何かあったのでしょうか」
カイとユナも近づき、頷く。
「確かに……森の奥にいるはずなのに」
その時、森の中から三人の男女が姿を現した。
傭兵のような服装をしている。男性二人、女性一人。
彼らは倒れたモンスターを見て、警戒した。
「……全部、眉間に……?」
従者と騎士が手を振り、敵意がないことを示すと、三人はほっとしたように近づいてきた。
「助かった……俺たちは冒険者パーティーだ。森でモンスターに遭遇して……」
「王都のある高原側に追い込んだのか?」
マーティンが眉を寄せる。
三人は慌てて首を振った。
「ち、違う! 近くにワイバーンが出たんだ!
そのせいでモンスターも俺たちもパニックになって……一部が高原に逃げたから追いかけてきたんだ!」
リオル、従者、騎士、マーティン──全員が驚いた。
「王都の近くに……ワイバーン……?」
アルトだけが首を傾げた。
(ワイバーン……ドラゴンのことだったような……?)
アルトは淡々とモンスターを捌きながら考えた。
その時、空気を震わせるような咆哮が森の奥から響いた。
全員がそちらを向く。
遠くの空に、鳥のようなシルエットが飛んでいた。
アルトは冒険者たちに声をかけた。
「私たちは、これから冒険者ギルドに行く予定です。あなたたちはどうするのですか?」
冒険者の女性が答えた。
「もちろん、ギルドに報告しに行くよ。ワイバーンが出たなんて、大事件だからね」
「では……一緒に行きましょう」
アルトがそう言うと、カイとユナが嬉しそうに笑った。
「冒険者と一緒にギルドに行けるなんて、すごいね!」
「うん、楽しみ!」
「一応緊急事態だからな?」
アルトは周囲を見渡し、静かに思った。
(……人が多いなあ)




