薄暗い学園長室で
教頭が静かに口を開く。
「……今回の件、調査班の報告がまとまりました。
原因は錬金術部の“未承認の錬金式”の使用です」
学園長は眉をひそめた。
「部活動で扱えるレベルではないはずだ。
どうしてそんなものを」
教頭は視線を顧問へ向ける。
「顧問の先生から、直接説明を」
顧問は深く頭を下げたまま、震える声で話し始めた。
「……私の判断ミスです。
今年の錬金術大会で結果を出せなければ、部の予算も人員も削られると聞かされていました。
生徒たちの未来を守りたくて……
焦ってしまったのです」
学園長の表情が険しくなる。
「だから危険な式に手を出したのか」
「はい……。
制御できると思っていました。
ですが、魔力が暴走し……あの“個体”が生まれてしまった」
顧問は拳を握りしめた。
「すぐに処理しようとしました。
ですが、あれはもう……私の知っている“素材”ではなく、“生き物”になっていたのです。
逃げ出した時、私は……止められませんでした」
その声には、後悔と恐怖が入り混じっていた。
学園長は長い沈黙の後、重く口を開いた。
「中等部だけじゃない。
初等部の子どもたちが巻き込まれた。
これは重大な事故だ。顧問としての責任は免れない」
顧問は深く頭を下げた。
「……覚悟しています。
ただ、生徒たちが無事だったことだけが……救いです」
教頭が補足する。
「特に、初等部の子どもたちの働きが大きかったようです。
子どもとは思えない判断力で、暴走した個体を誘導し、被害を最小限に抑えました」
学園長は静かに目を閉じた。
夕陽が沈み、学園長室は薄暗くなる。
その静けさの中で、三人はそれぞれの胸に重いものを抱えたまま、言葉を失っていた。




