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10/33

火災再現、試作開始。

翌日の放課後。

裏庭には、昨日の会議で顔を合わせたリーダーたちがすでに集まっていた。

初等部、中等部、高等部──学年も制服も違う生徒たちが、同じ目的で一つの場所に立っている。

アルトが到着すると、マーティンが軽く手を挙げた。

「来たな、アルト。今日は全員で試作だ」

「よろしくお願いします。」

アルトが頭を下げると、周囲のリーダーたちも軽く会釈を返した。

昨日の会議での教師の態度に、皆どこか不満を抱えているのが伝わってくる。

マーティンは言う。

「敬語はいいと言っただろう」

「よろしく、マーティン?」

ぎこちないが、反応は良かったようだ。

マーティンの顔がふっと和らいだ。

「昨日の資料、読んだよ」

中等部のリーダーの一人が声をかけてきた。

「初等部の子が書いたとは思えないくらい、細かかった」

「ありがとうございます」

アルトは静かに答えた。

その時──

ハリスが手を叩いた。

「じゃあ、始めるぞ。煙は俺がやる」

リーダーたちが一斉に注目する。

ハリスが魔力を練ると、指先から淡い光が漏れ、

白い粒子が空気中にふわりと舞い始めた。

最初は霧のようだったが、

魔力が増すにつれ、粒子は濃度を増し、

ゆっくりと“煙の壁”へと変わっていく。

「……すごい」

誰かが小さく呟いた。

アルトは煙の中を覗き込み、冷静に判断する。

「この濃さでお願いします。

 廊下の奥が見えないくらいで、近くの人は識別できる程度です」

ハリスが頷く。

「承知した!」

「今度は俺が炎の幻影を作り出そう。」

次に、マーティンが手をかざした。

空気がわずかに震え、光が揺らめく。

炎の幻影が、ゆっくりと形を成した。

「……本物みたいだ」

中等部のリーダーが息を呑む。

熱はない。

だが、光の揺らぎ、影の動き、炎の形──

どれも本物の火に近い。

マーティンがアルトを見る。

「どうだ?」

アルトは静かに答えた。

「完璧です。

これなら、訓練として十分に成立します」

その言葉に、周囲のリーダーたちも頷いた。

「これなら本番もいけるな」

「形だけの訓練より、ずっと意味がある」

「昨日の教師とは大違いだな……」

小さな声があちこちから漏れる。

アルトは煙の向こうに揺れる炎を見つめた。

昨日の会議で流された提案。

それでも諦めずに通した“本物の火災再現”。

その結果が、今ここにある。

「……皆さん、ありがとうございます。

この訓練は、必ず成功させます」

マーティンが静かに笑った。

「そのために俺たちがいるんだろう」

ハリスも頷く。

「本番が楽しみになってきたな」

夕暮れの裏庭に、煙と炎の幻影が揺れ続ける。

その光景は、どこか神聖で、そして不穏だった。

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