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呪われた英雄と裏切りの聖女  作者: 寝不足魔王


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第4話 王都の熱狂と冷たい視線

第4話をお届けします。


王都セルフィアに到着し、民衆の熱狂と教会の上層部との初対面を描きました。

二人が「希望の光」として期待される一方で、上層部の冷たい計算が少しずつ見え始めます。


ディオンとアリアの微かな絆と、呪いの影の対比を意識して書きました。

シリアスダークファンタジーとして、これからもじっくり進めていきます。

ごゆっくりお読みください。

王都セルフィアの白い城壁が、午後の陽光に輝いていた。


エテルノ王国の中心、聖堂大聖堂の尖塔が空を突き、街全体が活気に満ちている。馬車が正門をくぐると、民衆の歓声が一気に沸き上がった。


「聖女様だ!」「英雄ディオン卿もいらっしゃるぞ!」


道の両側に集まった人々が、手を振り、白い布を掲げて二人を迎える。子供たちは花を投げ、母親たちは祈るように手を合わせた。


アリアは馬車の窓から身を乗り出し、銀髪を風に揺らしながら優しく手を振り返した。青みがかった金色の瞳に、純粋な喜びが浮かぶ。


「みんな……こんなに温かく迎えてくださるなんて」


対面に座るディオンは、黒い長衣のまま腕を組み、灰色の瞳で外を冷たく見つめていた。表情は変わらず淡々としており、歓声など耳に入っていないようだ。


(希望の光……か。俺たちがここにいるだけで、こんなに期待を背負わされる)


内心でディオンは苦く思う。過去の記憶がよみがえる。家族が英雄の血統を信じた結果、次々と失われていった光景。民衆の声は優しいが、それが呪いを加速させることを、彼は誰より知っていた。


馬車は大聖堂前の広場で止まった。教会の白いローブを着た聖職者たちが整然と並び、出迎えている。


先頭に立つのは、高位司教ガルド。五十代半ばの男で、穏やかな微笑みを浮かべているが、目には計算高い光が宿っていた。


「ようこそ、王都へ。英雄ディオン・ヴァルデン卿、そして聖女アリア・ルミナ殿。お二人の到着を、心よりお待ちしておりました」


ガルド司教は優しく頭を下げ、アリアに視線を向けた。


「アリアよ、浄化の力は健在か? 英雄卿の呪いを抑えるため、存分に力を貸してくれ」


アリアは丁寧に膝を折り、頭を下げた。


「はい、司教様。私にできる限りのことをいたします」


ディオンは馬車から降り立つと、司教を灰色の瞳でじっと見つめた。


「……俺の呪いを抑えるためだけに来たわけじゃないはずだ。災厄の話はどうなっている」


ガルド司教は微笑みを崩さず、穏やかに答えた。


「もちろんです。国境近くに魔王の眷属が現れ、村々が襲われています。勇者パーティを編成し、お二方を中心に討伐に向かっていただきます。民衆はすでに『希望の光』としてお二人を崇めておりますゆえ……どうか、期待に応えてください」


その言葉に、周囲の聖職者や騎士たちが頷く。視線は敬意を装っているが、本質は「道具」を見る冷たさだった。


アリアは気づかないふりをしながらも、胸の奥で小さな違和感を覚えた。教会で育った彼女は、こうした視線に慣れていたが、ディオンの横に立つ今は、それがより強く感じられた。


その夜、大聖堂の控室で、二人は短い休息を取っていた。


アリアは聖女衣装のまま、ディオンの隣に座り、そっと黄金の光を放った。浄化の力で、英雄の呪いの疼きを和らげる。


「ディオン様……今日は民衆の方々が、とても喜んでくれましたね。私たちを必要としてくれている……それが、少し嬉しいです」


ディオンは壁に寄りかかり、淡々と答えた。


「嬉しい、か。お前はまだ甘いな。アリア。あの視線は、俺たちを救世主として見ているんじゃない。ただの『希望の道具』だ。教会は浄化の力を、王国は英雄の剣を欲しがっているだけ。期待が大きくなれば……失望も、裏切りも大きくなる」


アリアの指がわずかに震えた。銀髪がランプの光に照らされ、幻想的に揺れる。


「それでも……私は信じたいんです。貴方様と一緒にいれば、何か変えられるかもしれないって。一人で苦しむ貴方様を、見過ごしたくないんです」


ディオンは灰色の瞳を彼女に向け、苦い笑みを浮かべた。


「お前は優しすぎる。俺の側にいれば、その優しさが呪いに染まるぞ。家族を失った俺は……もう、誰かを信じられない」


部屋に沈黙が落ちた。


アリアは静かに手を伸ばし、ディオンの袖に触れた。


「私も、教会では道具としてしか扱われませんでした。でも、貴方様と出会ってから……初めて、本当に誰かのために力を使いたいと思いました。どうか、一人にならないでください」


ディオンは彼女の手を振り払うことはせず、ただ静かに目を伏せた。


(この温もり……いつまで続くのだろう。俺が英雄に近づけば、必ず壊れる)


王都の夜は華やかだったが、二人の胸には、すでに暗い影が忍び寄っていた。


明日からは勇者パーティとの合流。

新たな災厄との戦いが始まるが、それは同時に、英雄の呪いが強まるきっかけにもなる。


救世主であること自体が、最大の呪い——

その事実が、少しずつ現実味を帯び始めていた。

第4話、いかがでしたでしょうか。


王都の華やかさと、二人の内面的な孤独を対比させました。

これから勇者パーティへの加入や、初の災厄戦が近づきます。


ディオンの自己否定の強さ、アリアの献身的な優しさ……二人の関係が少しずつ変化していく過程を楽しんでいただければ幸いです。


感想やご意見、応援などいただけるととても励みになります。

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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