第15話 次の任務と限界の光
第15話をお届けします。
次の任務「灰の山脈」の発表と、アリアの浄化が限界に近づく様子を描きました。
上層部の期待と、二人の内面的な苦しみの対比を意識しています。
これから物語はさらに暗い局面へ進んでいきます。
シリアスな心理描写をお楽しみください。
王都セルフィア到着から二日後。
大聖堂の作戦会議の間に、再び勇者パーティの面々が集められていた。
円卓の中央に座る高位司教ガルドは、穏やかな微笑みを浮かべながら羊皮紙を広げた。騎士団長レオン・ヴァイスと数名の上級聖職者も同席している。
ディオンとアリアは円卓の端に並んで座っていた。アリアの顔色はさらに悪く、銀髪が少し乱れ、青みがかった金色の瞳に力がない。ディオンは黒い長衣のまま腕を組み、灰色の瞳でガルドを冷たく見つめていた。
ガルド司教が静かに切り出した。
「皆の者、よく聞いてくれ。黒霧の谷での勝利は確かに大きい。しかし、魔王の眷属は完全に滅びたわけではない。新たな脅威が、東部の山岳地帯『灰の山脈』に現れたとの報告が入った。そこに古い遺跡があり、強力な眷属が目覚めようとしている」
レオン騎士団長が頷き、続けた。
「次の任務は、灰の山脈への調査と、必要に応じた討伐だ。英雄ディオン卿を隊長とし、聖女アリア殿を補佐とする。出発は三日後だ」
部屋に緊張した空気が流れた。
ミリアが少し興奮気味に言った。
「またすぐに任務ですか……でも、英雄様と聖女様がいれば大丈夫ですよね!」
ディオンは即座に淡々と言った。
「……三日後、か。俺の呪いがさらに強まる前に、急いでいるようだな」
ガルドは微笑みを崩さず、優しく答えた。
「英雄卿、心配はいりません。聖女アリアの浄化があれば、君の力は十分に制御できるはずだ。民衆はすでに次の勝利を期待している。希望の光として、ぜひ応えてほしい」
アリアは膝の上で手を握りしめ、弱々しく言った。
「私……頑張ります。ディオン様の呪いを抑え、皆さんを支えられるよう……」
その言葉の途中で、アリアの体が大きく揺れた。彼女は慌ててテーブルに手をついたが、顔から血の気が引いている。
ディオンはすぐに立ち上がり、彼女の肩を支えた。
「アリア……もう限界だ。座っていろ」
アリアは震える声で答えた。
「大丈夫です……ただ、少し疲れただけ……ディオン様の呪いを抑えるためなら……」
ガルド司教の目がわずかに細くなった。
「アリアよ。君の浄化の力は確かに優秀だ。しかし、連続使用の負担は大きい。無理は禁物だぞ?」
アリアは無理に微笑もうとしたが、力が入らない。
「私は……平気です。皆さんの期待に応えたいんです。ディオン様と一緒に……」
会議の後、二人は大聖堂の控室に戻された。
アリアはベッドに腰を下ろし、ディオンがその隣に座った。部屋には二人きりだった。
アリアはそっと手を掲げ、黄金の光を灯そうとした。しかし、光は以前よりさらに弱く、すぐに揺らめいて消えてしまった。
「ごめんなさい……ディオン様。また……ほとんど出なくて……」
ディオンは彼女の手をそっと握り、淡々とした声で言った。
「もういい。アリア、お前はもう十分にやった。国境での戦いから帰還まで、ほとんど休まず浄化を使い続けている。お前の希望まで削られているのが、俺にもわかる」
アリアはディオンの手に自分の額を寄せ、震える声で答えた。
「でも……貴方様が一人で戦う姿を見ているのが、一番辛いんです。私も、必要とされたい……教会ではただの道具でした。でも、貴方様の側では……本当に生きている気がするんです。どうか……離さないでください」
ディオンは灰色の瞳を伏せ、静かに息を吐いた。
「お前がそう言うたび、俺は怖くなる。家族を失ったように……お前も失う日が来るかもしれない。それでも、まだ俺の側にいたいと言うのか?」
アリアは弱々しく、しかしはっきりと言った。
「はい……います。貴方様が苦しんでいるのに、見て見ぬふりはできません。私にとって、貴方様は……ただの英雄様じゃありません」
ディオンは彼女の銀髪をそっと撫で、珍しく優しい響きを込めて言った。
「……お前は本当に優しすぎる。アリア。俺の呪いが、お前を壊してしまう前に……」
その時、控室の扉がノックされ、レオン騎士団長が入ってきた。
「英雄卿、聖女殿。次の任務の詳細を伝えておく。灰の山脈は危険な場所だ。英雄卿の力と聖女殿の浄化が鍵になる。期待しているぞ」
レオンはそう言い残し、部屋を出て行った。
ディオンはドアが閉まるのを見送り、苦い思いを胸に押し込んだ。
(期待……またその言葉か。お前たちは、アリアを消耗させてまで俺の力を使おうとしている
第15話、いかがでしたでしょうか。
アリアの疲弊が深刻になり、ディオンとの会話がより切ないものになりました。
次の任務への出発が近づき、物語の緊張感が増してきています。
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次回もどうぞよろしくお願いいたします。




