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呪われた英雄と裏切りの聖女  作者: 寝不足魔王


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第13話 王都の凱旋と冷たい称賛

第13話をお届けします。


王都への凱旋と、民衆の熱狂、そして教会の冷たい評価を描きました。

アリアの浄化限界がより明確になり、二人の関係に影が深くなっています。


勝利の裏側にある代償を、じっくり感じていただければ幸いです。

シリアスな心理描写を中心に進めています。

王都セルフィアの白い城壁が、再び一行の前に姿を現した。


国境任務から十日余り。黒霧の谷での勝利を携えた勇者パーティは、盛大な凱旋を迎えようとしていた。


正門をくぐると、民衆の歓声が一気に爆発した。


「英雄ディオン卿!」「聖女アリア様!」「希望の光が帰ってきたぞ!」


道の両側に集まった人々が手を振り、白い布や花を投げて二人を讃える。子供たちは興奮して飛び跳ね、母親たちは祈るように手を合わせた。


アリアは馬車の中から弱々しく手を振り、銀髪を風に揺らした。青みがかった金色の瞳は喜びを装っているが、明らかに疲労が深い。国境での連続浄化の代償が、彼女の体力を大きく削っていた。


ディオンは馬に乗り、黒いマントを翻しながら無表情で進んでいた。灰色の瞳は民衆の熱狂を冷たく見つめ、一切の感情を表に出さない。


レオン騎士団長が馬を並べてきて、満足げに言った。


「見てみろ、英雄卿。民衆は大喜びだ。お前たち二人が国境を救った英雄として、すでに伝説になりつつあるぞ」


ディオンは淡々と答えた。


「……伝説、か。俺が力を振るった結果に過ぎない。この歓声が、どれほど重い代償を生むか……お前たちはまだわかっていない」


レオンは笑って肩をすくめた。


「またその暗い言い方か。今日は素直に喜べ。教会と王国も、お前たちの功績を高く評価している」


大聖堂前の広場に到着すると、教会の聖職者たちが整然と並んで出迎えていた。


高位司教ガルドが穏やかな微笑みを浮かべて前に出た。


「英雄ディオン・ヴァルデン卿、聖女アリア・ルミナ殿。ご苦労様でした。黒霧の谷での勝利の報せは、王国中に響き渡っています。まさに希望の光……ルミナス神の加護を感じます」


ガルドの視線はアリアに向けられ、優しく問いかけた。


「アリアよ、浄化の力は問題なかったか? 英雄卿の呪いをしっかり抑えられたようだね」


アリアは馬車から降り、膝を折って頭を下げた。声がかすかに震えている。


「はい、司教様……私にできる限りのことをいたしました。ディオン様の呪いを、一時的にでも抑えられたなら……幸いです」


しかし、アリアの顔色は青白く、立っているのもやっとの様子だった。銀髪が汗で額に張り付き、黄金の光を灯そうとしても、掌から弱い輝きしか出ない。


ディオンはすぐに気づき、彼女の横に立って支えた。


「……アリア。もう無理をするな」


ガルド司教はそれを微笑みながら見つめ、続けた。


「素晴らしい。聖女の浄化と英雄の剣が揃えば、どんな災厄も退けられる。民衆は二人を『希望の光』と呼び、ますます期待を寄せています。今後はさらに大きな任務が待っているでしょう」


ディオンは灰色の瞳でガルドをじっと見つめ、淡々と告げた。


「期待……その言葉が、どれほど残酷か。俺の力が強まるほど、呪いは深くなる。アリアの浄化も、すでに限界に近い。お前たちは、それを『延命』と呼んで満足しているのか?」


ガルドの微笑みが一瞬だけ凍りついたが、すぐに穏やかな表情に戻った。


「英雄卿、心配はいりません。アリアの力はまだ十分に使えます。二人で力を合わせれば、王国は安泰です」


その夜、大聖堂の控室。


アリアはベッドに横になり、ディオンがその傍らに座っていた。部屋には二人きりだった。


アリアは弱々しく手を伸ばし、黄金の光を灯そうとした。しかし、光はほとんど出ず、すぐに消えてしまった。


「ごめんなさい……ディオン様。今日は……力が出なくて……」


ディオンは彼女の手をそっと握り、淡々とした声で言った。


「もういい。お前は十分にやった。国境での連続浄化で、お前の希望まで削られているのがわかる。アリア……お前は優しすぎる。その優しさが、俺の呪いに飲み込まれる前に、離れた方がいい」


アリアはディオンの手を握り返し、震える声で答えた。


「離れません……ディオン様。私にとって、貴方様は……ただの英雄様じゃありません。一緒にいることで、私も救われている気がするんです。どうか……一人にしないでください」


ディオンは灰色の瞳を伏せ、静かに息を吐いた。


「お前がそう言うたび、俺は怖くなる。家族を失ったように……お前も失う日が来るかもしれない。それでも、まだ俺の側にいたいと言うのか?」


アリアは弱々しく微笑んだ。


「はい……います。貴方様が苦しんでいるのに、見て見ぬふりはできません」


部屋に重い沈黙が落ちた。


王都の凱旋は、民衆にとって大きな希望だった。


しかし、英雄の呪いは確実に深まり、

聖女の浄化の光は、明らかに薄れ始めていた。


上層部が待ち望む「希望の光」は、

すでに大きな裏切りと絶望の予感を孕みつつあった。

第13話、いかがでしたでしょうか。


王都に戻り、上層部の思惑が少しずつ見え始めました。

ディオンの自己否定とアリアの献身が、ますます切なく描かれています。


これから物語はさらに大きな転換点を迎えます。

感想や応援をいただけるととても励みになります。


次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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