薄ピンクの便せん
お姉ちゃんへ
お姉ちゃんがこれを読んでいるとき、私はもうこの世にはいないでしょう。お姉ちゃんには、私を忘れていってほしい。そう思う自分もいれば、忘れられたくないと思う自分もいます。
私は中学生になってから、周りに自分が双子であることを話せなくなりました。双子だと人に話すと必ず優劣をつけられるからです。周りの友達も、両親でさえお姉ちゃんを否定して、私を一番だと言ってきました。
私は一番でいたいけれど、お姉ちゃんが二番目になるのは嫌でした。でも、お姉ちゃんはいつも私を一番にしてくれました。私に何か嬉しいことがあれば一番に喜んでくれて、とても褒めてくれて。
そんなお姉ちゃんが好きで好きで、そんなお姉ちゃんの優しさが私には辛かった。
『優秀な双子の妹がいて、お姉さん可哀想だね』
私が大学に首席合格したとき、隣に住むおじさんがこう言いました。そのときも、お姉ちゃんは笑って、「茉梨はすごいでしょ」とおじさんに私を自慢してくれました。お母さんもお父さんも友達もみんな、私に優しくしてくれて、お姉ちゃんよりも私の方がすごいと言ってくれる。それは幸せなことであるべきで、優しくしてもらえることは喜ぶべきはずなのに、私は辛くて仕方ありませんでした。お姉ちゃんを非難されているような気がして、私はずっと辛かったです。
でも、私を一番にしてくれるお姉ちゃんの前で幸せを嘆くことは間違いだとわかっていたから、何も言えませんでした。
行き場のない辛さが募って、その辛さの鎮め方をずっと探していました。
私はお姉ちゃんのせいで死んだわけでも、お姉ちゃんのために死んだわけでもありません。
ただ、ずっと死にたかった。そして、死んでお姉ちゃんに言いたいことがありました。
死んだ後、お姉ちゃんが私を追いかけてくるかもしれないと思うと、少し怖いです。だから約束してください。
どうか、悲しいとき、悔しいときは旦那さんの前だけでも泣いてください。私はもう、お姉ちゃんの泣き顔を思い出せないくらいずっと見ていません。どうか思いのままに泣いてください。そして怒って、喚いて、わがままを言ってください。
お風呂は誰よりも先に入ってください。
誕生日ケーキのろうそくは、誰の気も遣わず、思いっきり吹いてください。
私のおそろいを買わされるのではなく、好きな洋服を選んでください。
犬アレルギーの私のせいで犬を飼いたかったお姉ちゃんはずっと我慢してくれていたけれど、どうか新しい家庭では可愛い犬を迎えてください。
これからお姉ちゃんを一番にしてくれる旦那さんと幸せに生きてください。
今までずっと、私を一番にしてくれてありがとう。私のことを一番に考えてくれてありがとう。
私の誕生日に結婚式をする、とお姉ちゃんに言われたとき、どうして自分の誕生日と言ってくれないのだろうと怖くなり、私は何も言えませんでした。
遅くなってごめんね。
結婚おめでとう。
P.S. 約束守ってね。ちゃんと見てるからね。




