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愛と終着の奏  作者: いなほ
23/23

春休み②


 「アハハ、ピザパーティしてたらコーラ被っちゃってね。アハハ。髪もこんな色に…」


 夏樹さん、そのセリフ、めちゃくちゃ気にいってヘビロテじゃん。


「えーそうなの??」


「アハハ。冗談だよー。僕、クォーターだから」


「そなんだー」


「知ってる?コーラにタブレットのお菓子入れるとすごい事になるって」


「えー。どうなるの?」


「すんごい吹き出すみたいよ。ぶしゃーって」


「えー 見てみたい」


「…やめろ、食べ物を粗末にすんな」



 午後から遊びにきたリコちゃんに対して結構飛ばしている夏樹さん。


 「それでね、うちにホームスティに来る子ってママの知り合いのお子さんでね。島が火事になっちゃって家がなくなっちゃったんで日本に避難しにくるんだって」


「マウイ島の火事かー。その子もその子の家も大変だったんだろうな。」


死んだ人もいるって聞いた。日本ではそんな火事とかピンとこないけど、TVの映像では町中が炎にまかれていたよね。


「TV電話でママと話してたんだけど、その子、日本語がわからないらしいんだ。リコも英語とかしゃべれないから…」


あ、そうか。それでクォーターの夏樹さんが英語をしゃべれないかなと気になってたんだ。


「そっかー。ごめんね、僕、日本生まれの日本育ちで、外国にも行った事なくて、通訳とか無理かな。」


「そっかー。うん。でもリコがしゃべれるようになれればいいんだよね!」


「…リコちゃんはえらいな」


「えへへ~。ピアノの練習と一緒だね!何回も練習すれば、出来るようになるよね。たぶん!」


「うんうん。きっと出来るようになるよ」

「リコちゃんはええ子やぁ。ほら翻訳アプリとかもあるし!何とかなるよ。おねぇさんもがんばるから!」


 何故かヒロインまでやる気満々だ。


 まぁ遥も当然巻き込まれてるよね…。



「…もう無理。おなかに入らない。てか、何そのオソロのTシャツ」


そして残ったピザ回収班として尊が呼ばれているのであった。


「ごめん、尊、無理しなくていいよ。…Tシャツは洒落というか何というか。」


そっと目をそらす冬哉さん。うん夏樹さんと二人ではっちゃけちゃったという自覚はあるんだね。

ピザの購入は計画的に。



「あ。だめ、尊、そのコーラは吹き出すから。」


ぷしゅッ


一度噴出して収まったからなのか、次回はそんなに吹き出なかった。


「あーあーあー」

「はいっ。これタオル!」


ヒロインはタオルを手にすでにスタンバイしてたみたい。


「ふいてふいて。炭酸抜けちゃったね」



「こんにちはー」


「よう来た。よう来た。ピザ食べる?」


「…何、そのTシャツ…」


「あ、遠野じゃん。え?オソメチャンって何??」


桃〇持って石内兄妹もきたー。


てか呼んだんだよね。ラインて便利。


「俺このゲームで旅に興味が出てきたんだよね」


「あー。ね」



何て事ない春休み。


親戚のお兄ちゃんとお兄ちゃんの友達と幼馴染達。


こんな日が続くといいな。と遥は思っていた。

でも、その頃…。




「ねぇねぇ。本当に来るかなぁ」

「ネットで出会った人とリアルで会っちゃダメってお姉ちゃんが…」

「大丈夫でしょ。こっちは5人いるんだし」

「ねぇねぇ。本当に効くの?その痩せ薬」

「津川っち太ってないのに何でそんなの欲しがるの?」

「だって恥ずかしいんですもの。吉田君、私より足、細いんだよ?」

「まだ、吉田を狙ってんの?無理じゃね?」

「みちゃみちゃ、ハッキリ言いすぎ」

「次行った方がいいよ。津川っち」

「…そう簡単に割り切れないよ。私にはわかるもん」

「…しーちゃん」


ちょっと派手目な私服を来た5人の少女が、駅のロータリーの花壇のベンチの所に集まっていた。

はっきりいって目立つ。

でも、本人たちは自分達が注目を浴びていることには気がつかないようでお喋りに興じている。


「…来ないねー」


「悪戯だったんじゃね?あたしそろそろりくと待ち合わせしてるから帰るねー」


「え?みちゃみちゃ、そんなぁ」


「待ってー。みちゃみちゃ、私も帰るー。お姉ちゃんが心配してママに言いつけるかも知れないし」


「ごめん。私も」


そろそろ夕方になりかけて、気温もぐっと下がってきた。


「うー寒い。」


残された二人の少女は顔を見合わせる。


「来ないかもしれないし、帰ろうか」


「…そうだね。二人じゃ、危ないかも」


諦めて、自転車置き場に向かう。


線路の高架下にある自転車置き場は、まだ帰宅する人はまばらで、人気が少ない。


「ねぇねぇ…あの人、何してるんだろう」


二人の止めた自転車より出入口に近い所に止めた自転車に男性が一人、自転車にまたがったまま、項垂れているが、様子が変だ。


「なんかちょっと怖い」

「変な人かも…」


二人は大回りをして自分達の止めた自転車に近寄る。



予兆も何もなく、男は自転車から降りると、隣の自転車を蹴飛ばした。


ガタガタガタッ


ドミノ倒しのように自転車が次々と倒れる。


「キャーッ」


二人の自転車も倒れ、はずみで一人の少女も自転車ごと地面に倒れた。


「しーちゃん!」


倒れた少女を助け起こそうともう一人の少女がかけよる。すると二人の近くでふいに声がした。


「なんで一人で来ないんだよ」


自転車を蹴飛ばした男だった。その男、目つきが変だった。光がまったくないような…。


二人があまりの出来事に固まっていると、たまたま自転車を止めにきた大学生風の男が驚いて声をあげた。


「何してんだ!!!」


おそらく、男が自転車を蹴飛ばした事を言っているんだろう。


「うるさいな。おまえ関係ないだろ」


男は大学生の方をふりむくとそちらを睨んだ。


「警察呼んだ方がいいよ!」


大学生に向かって違う人の声がかけられた。


「呼んでください!もう呼んじゃって!その方がいいから!」


違う方向からも別の人の声がして、男は一瞬ひるんだ。


「来い!」


男は転んでいない方の少女の方の腕をつかんでひっぱった。


「いや!」


「女の子から手を放しなさい!。今、人をよんだからっ!!」


別の方角からも女の人の声がして、男は怯む。


「やめろって言ってるんだろ!」


大学生が少女の腕を掴まえている男の腕をつかんだ。


「ちいっ!」


男は少女の腕を放すと大学生を突き飛ばすようにして押しのけ、反対方向に向かって逃げだした。

車止めを飛び越え、自転車置き場のゲートをくぐりぬけ逃げていく。


男に突き飛ばされた大学生は何とか転ばないようにたたらを踏んで持ちこたえたようだった。


「あぶなー俺も自転車倒すところだった」


安堵の溜息をつくと、大学生は少女二人に向かって声をかけた。


「大丈夫?」


「もうすぐ警察が来るから」


警察を呼んでくれた通りすがりの女の人も二人のそばにやってきた。


「怖いねー。なんだったんだろ?あの人」


口々に声をかけられても、二人の少女は恐怖のあまり、お互いにしがみついたまま何も言えなかったのだった。


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