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攻撃を躱してより高く飛翔する。

尚も逃げ回る人間に無人は食らい付こうとする。


リースは度々後方を確認しながら、無人との距離を確実に広げていった。


読み通りスピードの遅くなった無人は追いつけなくなりリースから離れていく。

体力勝負で勝てる見込みなど無かったが、どうやら運が味方していたようだ。


余裕が出来たリースは翻して矢を構える。

狙いはもちろん機動力である足元。


体から伸びる鋭利な白い足に矢を構えて標準を合わせる。


「奪うわ。残りの足……」


ポツリと告げる。

決して罪の意識があるのではない。


ただ自然と口から零れてしまっただけだ。


きりきりと耳元で音が鳴る。

張り詰めた弦が軋む。


その音を確認し、伸ばした弦から手を離す。

瞬く間に飛んでいった鋭い矢が無人目掛けて飛来する。


狙い通りの足を穿ち、機動力をいだ。

機動力である足が無くなった無人はそのまま地面を滑るように転がる。


これで無人は動けなくなる。

もう追われる心配もない。


リースの勝利だ。


一時はどうなることかと思ったが、何とか危機を逃れることは出来た。

動けなくなった無人は自身がこれからどうなるのかを悟っているかのように。


ただじっとその場から動かなくなった。

その様子にリースは無言で見つめる。


死を悟った生物の行動。

それがリースの目に焼き付けられる。


この情景を一体何度自分は見てきただろう。

数え切れないくらい見てきた。


その瞬間を見る感情は特に存在しない。

あるとすれば、虚無感くらいなものだろう。


すっと、目の奥を曇らせ無感情のまま弓を構える。

狙う的は一つ。


矢を構えて弦を引く。

不思議とその流れは自然なものであった。


流れる動作で狙いを済ませる。


リースは真っ直ぐ視線を向けて、弦を引いているその手をゆっくりと離した。

無慈悲な一矢が投射される。


ゆっくりと向かっていく矢をじっと見つめながら目で追っていく。

そして、もう少しで当たるという直前で―――それは何の悪戯か。


突如暴風が吹き荒れ、その矢はミリ単位でずれる。

あからさまに狙ったかのようなタイミングの風にリースは訝しげな表情でその様子を見守る。


矢にとってミリ単位でもずれてしまえば、それは標的にぶつかる前に大きなずれが生じ、如実になって現れてしまう。


そして、狙いを外した矢が体に突き刺さり、無人は悲鳴のような怒号を上げる。


耳を切りさかんばりの爆音がリースの耳を劈く。

今一度外した場所を冷徹な瞳で見つめ、再度矢を用意し弦を引く。


今度は完全な無風であるためコンディションは最高だ。

しっかりと計算し、無人に刺さるような角度で構える。


手の震えが収まるまでじっと待ち、ぴたっと止まる。

一度深呼吸をし、姿勢を整える。


凛とした射出。

その姿に誰もが見惚れるだろう。


きっと鋭くした目を向けて、リースが手を離そうとした。

―――その時だった。


「リースちゃん!」


突然の声にリースは動きを止める。

同時に彼女の頭には疑問が生まれた。


何故―――この声が聞こえるのか。

嫌な予感を過らせ、甲高い声に反応して首を向けると、そこには的中して欲しくない答えがあった。


リースの視界にはアリアと他の面子の姿が確認出来た。

と、同時に彼女は歯噛みをする。

 

「どうして来たの!」


憤慨している様子のリースにアリアは動揺を隠し切れない。


「リースちゃんの身の危険があったから!」

「何よそれ!私がか弱いって言いたいわけ!?」

「そうは言ってないよ!ただ……一人でやるよりも皆でやった方が―――」


アリアが言い切る前にリースが答える。


「私はカルーラに伝えてとだけ頼んだのよ!来てくれなんて頼んでないわ!」

「でも―――」


やはり、アリアの言葉に耳を貸すことも無く遮って言う。


「うるさい!とっとと消えて!」

「どうして一人で倒したがるの?」

「あんたには関係ない。ほっといて!」


アリアには彼女が苛立っている理由が分からない。


「どんな理由があるか分からないけど……っ‼」

「お嬢様どういたしますか?」

「お願い―――アルマリア」

「かしこまりました」


アリアと喧騒していると、突然女性の声が聞こえた。


凛と澄んだ声で颯爽と現れた女性はアリアのお願いに承諾すると、無人を屠らんとするために一歩足を踏みしめアリアの前に出て来る。


アリアの後ろから現れたのは―――淑女アルマリア。

涼しい顔をした彼女が詠唱を告げる。


「燃えよ私怨……」


詠唱を終えると、その手には銃が握られていた。

そして、標準を合わせたアルマリアが引き金を引く。


一発の空薬莢が飛んだ。

無人はもう動かなくなっていた。


砂塵の如く消失していく。

霧散する情景を眺めながら、アリアの元に戻る。


「終わりました」

「ありがとうアルマリア」


アルマリアの無事の帰還にアリアは胸を撫で下ろして告げる。


「……」


アルマリアによって倒された無人から視線を外してリースは無言でその場から立ち去る。


「リースちゃん……」


無言で去っていくリースをアリアは止めることが出来なかった―――。



★☆★

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