表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/106

error code.82

流れるように手を離して、滑らかな一射が無人に飛んでいく。


その一撃は見事無人のこめかみ部に命中し、その命を絶つ。


跡形も無く消失する運命に抗うことは出来ない。


これで終わりと思い、リースは視線を外して末路を見るのを止める。


そして、気が付く。


先程あれほど油断するなと説いた自分が傲慢にも程があるような行動をした。


そのことに深く失念する。


すぐさま後ろを振り向き無人に目を合わせると、予想通り無人に矢は届いていなかった。


舌打ちをして悔しがるリース。


どうやって防いだのか見ることが叶わなかったリースの失態が前面に出された証拠だ。


まだ健在である無人を見て、リースは先程と同じように矢を構えて狙いを合わせる。


勢い良く弦を引いてすぐさま矢を放とうとする。


無人を狙うために視線を向ける。

すると、無人は既にこちら側に攻撃を仕掛けてきた。


何やら鋭い刃物のような物が視界に飛び込んできて、彼女は咄嗟に横に逃げる。


しかし、その回避行動により体勢が崩れてすぐに動きだすことが出来なくなる。


はっとすると、目の前を迫りうる無人の姿がそこにはあった。


動き出すタイミングが一歩遅れた。


それだけの距離のはずなのに酷く遠く見える。

横に動けば難を逃れられるのに。


その足は動かない。

眼前を素早い動きで詰め寄せてくる無人。


遠くで見ている者からすれば、リースの動きの方が遅く見えるかもしれない。


しかし、リースはその意見に対して否定的な答えを述べさせて頂きたいものだと思った。


自分が遅いのではない。

目の前にいる無人が圧倒的に早いのであると。


回避行動を取るリースに容赦なく攻撃が飛んでくる。

ギリギリ間に合うかという間合い。


体を捻って必死に避ける。


「……っ」


間一髪のところで避けることに成功したリース。


が、続けてやってきた攻撃に成す術も無く、瞬時の反射で前に手を出すと、運良く弦が攻撃を受け止めてくれた。


しかし、勢いを殺すことの出来なかった彼女は後方に激しく吹き飛ばされる。


地面に体が擦れて体中砂塗れになる。

華奢な体が軽く宙を舞って何度も回転する。


やがて、その勢いが収まる。

息切れが激しくなり、呼吸が乱れそうになる。


リースは胸に手を当て、必死にそれを抑えて呼吸を整える。


しかし、そんな猶予も余裕も無人は持たせてくれない。


連激の如く浴びせられる攻撃を耐え凌ぐかのように弦で弾いて応戦する。


接近戦に持ち込まれている時点でリースに勝ち目は薄いのだが……。


それでも対抗出来ないわけではなく、一個一個の攻撃をしっかりと目で見極め、落ち着いて対処している。


だが、いつまでもこの状態が続いてしまうのも良くない。


持久戦になれば体力の少ないリース側の敗北に他ならない。


自分の負けに繋がってしまう戦い方は避けなくてはならない。


如何せん、危惧的状況だ。


何とか自分優位な戦い方に持ち込みたいのだが……

一人ではどうする事も出来そうにない。


それもそのはず。

対峙しているのは彼女を除いて他にいない。


村人のいる方向からは遠ざかっている。

であれば、無人から意識を逸らすなど力量の範囲を超えている。


他に興味を示すものがリースの傍に転がっていない時点で距離を離すことすら難しい。


辺りを手当たり次第見渡しながら、無人の興味が自分から他に向けられるようには出来ないかと。


切羽詰った表情で模索する。

目線を泳がせているが、中々めぼしいものは無い。


それどころか物陰すら徐々に無くなっていた。

これでは距離を離す前に詰め寄られてしまう。


懐に入られたらそれで終わりだ。

なんとしても存命したいところだ。


万策尽きてはいるが出来る限りの事はするつもりだ。

左右に揺さぶり標的を撹乱させる。


簡単には主導権を取らせない。

弱肉強食の世界を何度も渡ってきたリースにとって、これくらいの境地は幾度と無く体験してきたことだ。


彼女の逞しい知識が強く生き、粘りを見せる。

本来ここまでしつこく纏わり付かれたことは無いのだが、今回は少しばかり今までの無人とは違うようだ。


恐らく強さ的には今まで会ってきた無人の中で最上級だろう。

それでも恐怖を感じるには至らず。


適切な対処が出来るうちは命の保証はある。

まぁ、無人が相手なのに代わりは無いのだろうが……。


そうして上手く逃げていると、無人の体力に翳りが見え始めた。

思わぬ展開にリースは驚く。


(もしかすると、ここ以外にも襲った可能性がある……?)


あくまでリースの予想だが、他にも襲ってきた可能性があるのであれば、体力が存分に削られている可能性がある。


確かにそれならば、無人がこちら側にやってきた理由も頷ける。

希望が見え、リースのやる気は向上する。


このまま体力を削っていけば、いずれ気力を損なうだろう。

そうなれば、こちら側の完全勝利だ。


ほんの少しだけ足に力を込めて、より早く逃げ回る。

踏ん張り所といったところだろう。


リースの早さが上がったことにより無人の様子が変わる。


抑えていた本能をリースに丸ごとぶつけるといった真理の如く。


獰猛さを増して突撃してくる。

しかし、余裕の出来たリースには届かない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ