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一瞬は躊躇ったその問いに、アリアは少しだけ困惑する。

それは、旅をする理由に困るのではなく、何故問うのを一度止めかけようとしたのか。


とても気になるところだが、彼は話を進めてしまう。


「いや何、気になったものでしてな。この年ですし、もう旅をするということも出来ませぬ。しかし、今回旅をしているあなた方がこの場にいる。であるならば聞く他ないと思いましてな」

「そういうことでしたか」


知りたがっているというカルーラに、アリアは事の詳細を説明する。

自分達が旅をするに至った経緯を―――。


「なるほど……」

「大した内容ではないですよ?本当にどこにでもあるような理由だと思います」

「いえいえ。そう卑下にするものではありませんよ。立派なものです。覚悟というものが付いていなければ到底出来ない」

「そう……ですか?」

「えぇ」


カルーラに言われてアリアは照れる。


「見たところあなたが一番若いように見える。失礼ですが、お年は?」

「私ですか?十六歳になります」

「なんと……それは大変若いですな……となりますと、うちのリースと同い年ということですな」

「え?そうなのですか?」


カルーラの言葉にアリアは驚く。


「その反応、意外でしたかな?」


細く笑む彼にアリアは率直に感想を述べる。


「えぇ……、とても私と同い年には見えないくらい堂々としていますし……」

「ふぇふぇ。あの子は少しばかり我慢強いだけです。他は至って普通な少女です故」


彼の話を聞いてアリアはますますリースのことが気がかりになった。

自分と同い年という共通点。


それだけで親近感が湧いてくる。


「リースなら先程向こうの影に向かいましたぞ。あちらは無人が現れるスペースなので彼女が見張りを買って出ているのです」

「……」

「気になるのではないですかな?同い年とは早々出会えないと思われます。たくさん話すといいでしょう」


そう言ってカルーラは重い腰を上げる。

そして、アリアに一つ笑いかけ、その場から離れていった。


ぽつりと残ったアリアはしばらくその場にいた後、ゆっくりと立ち上がり意を決心してリースの元に向かうことにした。


カルーラの言葉を思い出してリースがいると思われる場所へと向かう。

彼の話を聞いて本当に驚いた。


まさか彼女が自分と同い年の少女であったということに。

何故驚いたのかというと、彼女はどこはかとなく大人びていた。


感情のコントロールは出来ていないもののその姿勢や仕草が自分とはまた異なっていた。

何よりも凛としていて勇ましく、そしてどこかで陰りも垣間見えた。


だから自分よりも年上と予想していたのだが……

存外外見では分からないということなのかもしれない。


中身を確認しないで判断するには少し早計であったということだ。

自分の未熟さを改めて再認識し、辺りを見渡す。


すると、カルーラの言葉通り彼女はそこにいた。

じっと何かを待ち構えるかのように、その場を仁王立ちで見据えていた。


「……」

「リースちゃん」

「……」


試しに声を掛けてみたが反応してくれない。

それほどまで集中しているということなのだろうか。


「何しに来たのよ……」


しかし、すぐさま反応を示してくれたことにアリアは喜ぶ。


「どうしてここにいることが分かったわけ?」

「それはさっきカルーラさんが来て、リースちゃんはここにいるだろうって教えてくれたの」

「余計なことしか言わないわね……あいつ。それで?ここに来たのは何の用なわけ?」

「用っていう用はないけど……私、リースちゃんと話したいな~って」

「私は話すことなんてないわ」


彼女は冷たい態度でアリアに接する。

しゅんとなるアリアが口を開く。


「さっきカルーラさんが来てね。教えてくれたの」

「何をよ?」

「リースちゃん私と同い年なんだって」

「それがどうしたの?」

「いや、同い年と会うなんてこと滅多にないから」

「そうね。私もたった今あなたに聞いてそう考えたわ。でも、それが何だって言うのよ?あなたと会話したところで意味があるとはとても思えない」


確かに彼女の言い分は最もだ。

何一つ間違っていないだろう。


「私には唯一のコード持ちとしての役割がある。あなたと仲良く談笑している暇なんてないわ」

「うっ……」


そう言われてはアリアに成す術がない。

ただ純粋に話したかっただけのアリアにとって、彼女の邪魔をするのは心もとない。


暫し無言になった。

そして、諦めたのかその場を後にしようとする。


彼女のがっかりした様子をリースはちらりと見る。


「ふんっ……」


小さく息を吐いた。

正直ほんの少しだけアリアのことを離していた。


嫌悪感抱く程度は持ち合わせている。

嫌いだと思う自分もいる。


同時に嫌いになりきれない自分もいるのが事実だ。

彼女は自分より少しばかり眩しい。


いや、眩し過ぎるのだ。

あのキラキラとした透き通る目を見ていると、なぜか心にチクリと針が刺さったような痛みが襲ってくる。


自分にはあの目を同じようなことが出来るのだろうかと疑問に思う。

同年代ということを知って驚いた。


ここには自分の年に近しい者はいても、同い年はいない。

だから彼女が同い年であるということに悔しさが込み上げる。


自分とは対照的な存在を目の当たりにしたときの感覚は最悪だ。


(まぁ、どうせすぐにいなくなってしまう存在だ。どうってことは―――)


その時―――

急に風が吹き始めた。

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