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そんな考えすら起こす気にならない正義感を備えた少女がいることを紳士と淑女は知っている。
凛とした瞳で、しゃんとした背筋。
まだ諦めていない闘志が内から溢れ出して他の三人の元にひしひしと伝わってくる。
そう。
アリア一人だけはまだ諦めていない。
無人の群れから逃げたというのに、その瞳は既に無人を倒すといった表情でいる。
ユースティスの話の内容をしっかりと聞いていたはずなのに、それでも彼女には退却するという文字は無いのだろう。
三人に伝わってくる頑固とした態度の少女の姿に、考えを改めさせざるをえなかった。
そして、その答えが正しかったと証明するかのように、少女は淡々と述べるのであった。
「ここで諦めることは簡単だと思う。見捨てて無人から背を向けて逃げ出せば、この先どれだけ楽なんだろうかと思う。だけど、逃げることなんて出来ない。目の前で人がいなくなる世界に変わってしまうのならば、その変貌だけは止めなければならない気がする。確かにこれは私達の使命なんかじゃないと思う。他の誰かがいずれはやってくれるであろう事柄だと思う時もある。だけど、私の体はそのことを許さない。他の誰かがやるのは今じゃない。幾年も先のことかもしれない。だとしたら、今目の前で無人に壊される世界に成れ果てようとしているのならば、私たちコード持ちとしての責務を全うしなければならないと思うの。信じて行動に移さなければならないと……」
伝わってくる。
アリアの思いが。
拙いくらい稚拙で子供だからこそ、より一層残酷な世界を大人の世界を知らないからこそ言える発言に
「ふ、お嬢様の傲慢さには毎度のこと骨がいるな。こちらの身にもなって欲しいものだ。まったくもって簡単に言ってくれるなこの世間知らずは……」
「ごめん。でもこれだけは例えユースティスが相手でも譲れないの」
全てを見透かした目でこちらを見つめてくる目に、ユースティスはじっと彼女を見つめる。
やがて、口を開いた。
「だからなのかもな。世間を知らないからこそ誰もが出来ない行動を取れるということなのだろう。それはについてはお嬢様のことを評価してもいい部分だ。救いの手を差し伸べた以上は最後まで責任を持って挑まなければならないということか」
と、ユースティスはどこか納得した表情で言った。
その答えにアリアは喜んだ。
ユースティスは承諾してくれたということだ。
自分の提案を。
探るように後の二人にも問いかけるのではなく、目で見つめてその答えを待つ。
「俺も構わねぇぜ。もともと乗りかかった船だ。なら、最後まで付いていくぜ」
ロンドは親指を立ててアリアの提案に乗る。
そして、最後の一人。
凛とした佇まいで、目を瞑っていたアルマリアは、声を発さず無言のままでいた。
彼女が言葉を発するまでアリアも無言を貫き通す。
やがて、先に口を開いたアルマリアが言う。
「私は正直この街に来てから終始不安材料がいっぱいでした。お嬢様を危険な身に合わせまいとしていました。しかし、それは間違いでしたね。どうやらお嬢様は危険など顧みないお方のようでした。いくら言ったところで変わらないのであれば、変わる必要なんて初めから無いのでしょう。ならば、私の行き着く答えはおのずと決まっております。お嬢様が進む道が私が進むべき道です。付いていきますよどこまでも……」
アルマリアの答えも他の二人と同じ回答だった。
結局自分ひとりが反対したところで、お嬢様の意見が変わることは無い。
ならば、自分はこの方の出した答えを辿るだけでいい。
同じ道に寄り添う付き人であればいい。
私の出した答えよりもきっと、お嬢様が出した答えの方がよほどいい回答に近づけるのだから。
そう自分で思っているのならば、付いていく他ない。
心で決心を固めて、アルマリアはアリアを真っ直ぐ見つめるのであった。
「ふっ、結局行き着く答えは一緒のようだな」
「えぇ……。何を言ったところで止まる方ではないことを、私達はよく知っているではありませんか」
「そうだな……。俺達は知っている。お嬢様が他人を見捨てるような真似はしないことを……」
「私達は知っている。お嬢様がどんな屈強に立たされてもその心が折れないことを……」
「ならば、成し得ることはただ一つ」
「えぇ。お嬢様が示した道が正しいことを、私達が全霊を持って証明しなければならない」
二人の答えは一緒だった。
アリアが居るところに二人ありといった様子で、ユースティスとアルマリアの意見が交わる。
答えは決まった。
行く道は決まった。
すぐさま行動に移ろうとロンドが急く。
「よし。早速戻ろうぜ‼グダグダしてたら無人がさらに増えちまうだろう」
「急くのもいいが言ったことは忘れていないな?」
「あぁ、黒の無人は白の無人より強い可能性があるんだろう?」
「覚えているならいいが、一つ注意が必要だ。先にも言ったが黒色の無人がいる以上、戦闘は激化するだろう。ここで最も重要なのは黒色の無人がどれだけの戦闘能力を保有しているかが一つの大きな問題となる」
「強さが分からないならどうするんだ?」
「ふっ……、幸いここにはコード持ちが三人いる。探りながら図るとしよう」
ユースティスは言う。
これは純粋な生き勝負だ。




