11章 継続
「ミスコード……私怨‼」
アリアは詠唱を唱えた。
瞬間的に出されるカード。
手に持った際、燃え盛る焔がカードを浸透し尽くしていく。
広がる炎が焼却され、次に現れた銃剣が無人の前に出現する。
銃口を無人に向けてアリアは引き金に手を掛け引いた。
向かってくる爪に一発の銃弾を放つ。
飛来してくる攻撃にアリアが放った弾丸が命中した。
破砕し粉々になった爪がアリアの前を通り過ぎ、地面へと零れ落ちていく。
「嬢ちゃん、力を使ったな。どうやらうまく制御出来たみたいだが……」
「無理もない。運がよかったというべきだろう。それに力を使わなければ、今頃はこの世にいなかっただろうからな」
「助けに行かなくてよかったのか?死んだら困るんじゃねーのか?」
「確かに困るな。仕える人間がいなくなった紳士とメイドは行き場を無くす」
「姉ちゃんが凄い形相で見ているんだが……」
つい目に入ったアルマリアの顔が思わず見えてしまった。
彼女の鬼の形相にロンドは無人よりも恐ろしさを感じた。
有無を言わせない彼女から視線を外してアリアを見た。
そこにいたのは立派に無人と対峙している少女の姿。
その姿にロンドは感心する。
自分も弛んでいる心を動かして身体を掻き乱す。
「やるかね……」
「ん?」
「何でもねぇさ。集中だろ?」
「分かっているならいい」
ロンドとユースティスが互いに離れてそれぞれの前に現れる無人を次々と屠っていく。
だが、目の前には必ず立ち塞がるようにして無人の群れがいる。
倒せど倒せど減ることのない無人の群れに、四人はより集中力を高めていった。
そうでなければこれほどの無人を捌き切る技量を成し得るはずがなかった。
ユースティスが真剣で無人の懐を掻っ捌いて倒す。
ロンドが大剣を振り回して無人を粉々にする。
アルマリアが銃を乱発して無人の体に弾丸を埋め込んでいく。
アリアが銃剣と小刀を使ってことごとく来る攻撃を巧みに弾き飛ばしながら倒していった。
四人の洗練された動きに、目の前で見ていた村長は驚きを隠せずにいた。
彼らの動きは簡単に身に付くような技量ではない。
それこそ幾たびの戦場を駆け抜けてきた歴戦の戦人の様によく似ていた。
どれほどの無人を倒せば、これほど凄まじい動きが出来上がるようになるのかと。
村長は感心と共に気になった。
長年平和ボケしていた自分には到底出来ない芸当であったとすぐに理解を得た。
四人の無人を捌き切る姿に魅了をされていると、不意に無人が横切った。
飛んで行った方向に目を向ける。
よく見れば、勢い良く吹き飛ばされた無人が村長の目の前を通り過ぎていったらしい。
次の瞬間、顔を通過する風圧に蹴落とされそうになる。
「おお、すまんすまん。つい張り切りすぎちまったな。わりぃ……」
村長に平謝りをしたのは大剣に身を委ねたロンドだった。
彼は力いっぱいに振り回した衝撃で無人が村長に当たるのを間一髪のところで調整して未然に防いだのである。
彼は鬼のような強さを見せつけ無人を次々を屠っていった。
その姿に村長は訝しげな表情をぶつけた。
(彼は一体何者なのだろうか?)
疑問が頭をめぐる。
何せ彼からはアリア達とは異なる強さを感じ取っていたからだ。
コード持ちである村長は殻がコード持ちではないことを出会った時から感じ取っていた。
にも関わらず、ロンドは無類の強さで無人をいとも簡単に砂へと返していた。
本来の力がコード持ちと同等の強さを誇っていることに内心村長は動揺していた。
こんな人物は生きてきた中で一度も見たことがなかった。
力を保持していないはずの彼の強さに村長は違和感を覚える。
村長の浮かない顔に気が付いたユースティスは、同じようにロンドに焦点を当てた。
彼の気持ちも理解出来ないわけでもなかった。
自分達も初めて見た時は驚いたものだ。
だが、今はとても心強い味方だと認識している。
正直ここまでやる男だとは思っていなかったが――――
ユースティスは思いの外やりやすさを感じていた。
もし三人だった場合、ユースティスとアルマリアどちらかは確実にアリアを守りながら戦わなければならなかった。
そうなれば当然二人の負担も大きくなり、その分自身の命の危険性が高まっていた。
しかし、その危険性はロンドがいることによって看破された。
彼の存在はとても大きかった。
ユースティスは後ろに注意を向けていなかった。
何故なら、彼の後ろには心強いロンドがいるからだ。
そのおかげで自分は目の前の敵に集中出来ている。
だがそれはロンドにとっても同じことだった。
彼は大剣を豪快に振り回して無人を薙ぎ払う。
振り払った後の反動の影響でロンドは少しの間動けなくなっていしまう。
通常ならばそんな大技を発動すれば、隙が生じて無人の攻撃の餌食となるのは確実だった。
振り切った反動でロンドは動けなくなり、無人に背中を見せる形で無防備になる。
首を左に九十度動かして無人の様子を伺う。
視界に映った無人は鋭く尖った爪をロンドの背中目掛けて突き刺そうとしてくる。
反応速度限界の更に上を行く攻撃が自分に飛んでくるのをはっきりとした意識で確認する。
徐々に迫ってくる攻撃に反応出来ないロンド。
時が流れるにつれてその距離を詰めていた攻撃は―――ロンドの背中に届く寸前で消え失せた。




