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嘘偽りのない言葉。

彼の本心から出た言葉。


それは四人の心に深く突き刺さった。


確かに村長の言う通り、無人の大群を相手にして勝てる見込みなどほとんどなかった。


逃げたくなるという意思も十分にあった。


頭では今すぐにでもこの場から脱出して平穏な地に赴いて安心のひと時に感極まりたいところだ。


だが、どうにもそうはいかないようだ。

それもそのはずだ。


だって、逃げ出してもいいといった張本人でもある村長が、言葉とは裏腹な表情で顔が強張っていた。


本心とは異なる表情を鋭敏に感じ取ったユースティスは、試すように問いただした。


「もし、その言葉が本心で口から出たでまかせではないというのならば、俺達はこの場に村長を置いて一目散に退散しよう。村長とこの街に住まう人間すべてを犠牲にしてこの先も見事に生きながらえて見せよう。しかし忘れてはいけないことがある。それは俺達はこの街を捨てて生き延びた後、ホルノマリン街のことなどすべて忘れて存在そのものを無かったことにすることも容易に出来る。村長が決めた選択肢の一つで本来救えたはずの人間すべてが犠牲になる可能性もあるだろう」

「私以外の人間も見捨てるということですか……」

「そうだ。俺達はコード持ちだ。そこら辺にいる村人の比でない程協力な力を有している。逆に言えば、村人は力を有していないが故に、無人の餌食となることは必須だ。俺達ならば長らく生き延びることすら可能だ。もし、力を有している俺達が全てをかなぐり捨ててこの街から逃げたとしよう。だが、逃げ出した後の後悔なんてものは存在しないと思った方がいいだろう。さて、もう一度質問をする。仮に俺達が罪悪感を帯びることなくこの街から去ることになったとして、そのことをホルノマリン街の長であるあんたは果たして許すことが出来るのか?」

「……」

「なんだ?無言では何一つ分からない。口で言ってくれ」


まるで、そうであることが当たり前であるかのように、村長は口にしなければならなかった。


「どうか……」

「……」

「どうかこの街をお守りくだされ。それだけが心残りになりそうですので……」


悔しまぎれに零れた染みる感傷に、波長を合わせて誇張した。


「承知した」


彼の素っ気ない態度に、黙って聞いていたアリアが近づいてポツリと言った。


「ユースティスは素直じゃないな~。全く」

「さっさと戦闘態勢に入れ」


苛立ちを覚えた紳士がアリアを睨んだ。

二人は村長から離れるように無人へと歩み寄った。


その二人の後ろ姿を見た村長は不思議そうな表情を浮かべて言った。


「不思議な方だ。まさかそちらから救いの手を差し伸べてくれるとは」


村長が発した声に反応したユースティスが不意に立ち止まって彼に向き直り言った。


「……簡単に見捨てられるほど人間できていないのでな」


彼の発言に息を呑んだ。

ポツリと呟いた言葉だったが故にずっしりと来るものがあった。


しかしーーー。


「ですが、本当によろしいのですか?これほどの無人を前にして戦場に立つなど愚行そのもののはず。太刀打ちできる可能性すら残ってるかさえ怪しいはずですが……」


見捨てられないからと言って簡単な決断できるものなのだろうかと。


自分より幾分も年が若い青年の思考に追いつかない。


「それに関しては任せろ。なにせ俺達はそのためにここにいるのだからな。無人を狩る。その一点だけに集中すればいいだけの話だ」


凛とした態度。

その言葉に偽りなし。


「随分簡単に言ってくれるな兄ちゃん。流石にこれほどの数を相手にしてそのセリフが吐けるタフさがあるとは思わなかったが……」

「ロンド。何を思っているが知らないが俺も結局のところ人間だ」

「冷徹に見えて実のところは救うべく命のために抗おうってのかい。さすが若さだね〜」

「それほど年は変わらないだろう」

「いや、精神的にさ。兄ちゃんからは俺なんかよりよっぽど生きてきたやつの匂いがする。なんて言うかあり方そのものが違うってやつさ」

「どう感じようと構わない。だが、今は目の前の敵に全集中を注げ」

「はいよ」


ロンドはユースティスの指示に従って無人と敵対するために姿勢を整えた。


そんな彼が無人と向き合っている中で、ユースティスの隣にふっとメイド服に身を纏った淑女がやってきた。


「お話は終わりましたか?」

「あぁ」

「それは何よりです」


彼女は目を瞑って言った。

隣に居座る淑女にちらりと目をやる。


「アルマリア。お前はこの考えをどう思った?」


彼は問いただした。


「どう思った……ですか。それはまた難しい質問ですね」


恐らく彼は自身の考えについて聞いているのだろうとアルマリアは思った。


先刻の彼の意思に正直アルマリアは驚いていた。


確かに相談もなしに決断に至ったのは何とも居た堪れない気持ちになった。


お嬢様の命の危険が及ぶ可能性が増える事項であるのならば、それは対処としては先決ではない。


敵の力量を測れない程阿呆である人物ではないことは分かっている。


だが、それでも―――


この選択が果たして正しかったのかと言えば、実際の所正しい選択肢ではにはずだ。


彼が成したこの回答も一任した私の責任も付いてくるのではないか。

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