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「耐えられぬ重圧から逃れる為に、わしは取引に応じた。ここは小さな街だが、食料は豊富に作れる。外に出れば、食べることすらままならない。無人の領域によって疲弊ひへいし切っている人間が一体何人いると思うとる?数え切れないほどいる彼らから得られるものは莫大だ‼︎この街にいる人間達が生き残る為には、多少の悪事など目を瞑れる‼︎」

「だがしかし、武器の密輸は国のルールで禁じられているはずだ。それを犯すということは国に反し、悪に染まると同義だ」

「そんなものは全て綺麗事に過ぎない。偽善者ぶるのも大概にしてほしいものだ。他人に正義を押し付けるほど悪質なものはない」


まるで頑固者のじじいのように頑なに自分の主張を曲げない村長に、ユースティスは顔を歪めて驚嘆する。


「本当にそれでいいと思っているのか?」

「貴方方に何が分かりますか‼簡単に街を壊された貴方方に‼︎」

「……ッ」


思わぬ言葉にぐうの音も出ない。


「この街の維持に一体どれほど苦労させられたか……」


ユースティスは返す言葉もなかった。

ましてや、自分は村長などという大役を任されなかった身だ。


村長のプレッシャーなど到底計り知れない。

だが、やりきれない気持ちがあるのもまた事実。


「街の人間はどう思っているんだ?」

「皆認めております。『無人から逃れるためならば』と、受け入れてくれましたぞ」

「おかしな奴らだ……」

「何もおかしくなどありませぬ……、それが真実です」

「無人が怖くないのか?」


彼の問いかけに村長は、ほんの一瞬だけ言葉を詰まらせる。


しかし、それも一瞬のことで頭で考えていた言葉が口から放たれる。


「貴方達だって初めて無人を見た時は動揺したことでしょう」


老人の物言いに、黙って聞いていたアリアが答えた。


「……それは、そうだけどーーー」

「しかし、今の貴方達は無人を見て、どういう反応をしますか?」


間髪入れずに問いかけてくる言葉にアリアは反応出来ない。


彼女の代わりにユースティスが答えようとする。


「……今はもうーーー」


だがやはり、またも遮って村長が言う。


「今はもう何も思わないでしょう?恐怖はあれど、驚愕はないはずです」

「無人がいることが当たり前と思っているからか?」

「そうです。村人達も貴方達と同じような考えに至っているからこそ、恐怖ですら克服出来る」

「ありえない」

「ありえることです」

「くそっ……」


ユースティスは悔しそうに歯噛みをする。

力強く握られた拳をアリアは悲しそうに見つめる。


「何も悔しがる必要はありません。変えれないものは沢山ある」


その答えにユースティスは、より悔しそうに表情を変えた。


村長に説き伏せられ無言になってしまう。

沈黙が支配して行く中でーーー


「一ついい?」


と、そこまで二人の話を聞いていたアリアが一つの疑問を胸に抱いていた。


彼女は手を挙げてユースティスの顔を見る。


「何だ?」

「村長さんが無人を倒してたのは分かってるんだけど、それだけで無人がこの街に来ない理由になるの?」


彼女の発した言葉にユースティスは無言だった。

アリアの疑問も最もだった。


たしかに、彼一人で無人の群れを抑えることなどほぼ不可能に近いだろう。


だがーーー

ユースティスはアリアから視線を外すと、自分達の周りにある鉱石を見つめて言った。


「恐らく、密輸して俺達の武器となっている素材を集めることで、街に一種の結界のようなものが貼っていたのだろう。だから、無人は襲って来なかった」


彼の視線が鉱石に向かっていることに気が付いたアリアもまた地面に転がっている無数の鉱石に目がいく。


ユースティスの見解に対して村長は首を縦に振って頷いた。


「左様。さすがにコードオーバーを体現している私とて一人で無人を収めるほどの力はありませぬ。頼る者もおらず……。なればこそ、他の物に頼ったまでです」


ユースティスはなるほどと思った。

部屋を埋め尽くすほどの鉱石があれば、無人を寄せ付けない力を発揮するのも不思議ではなかった。


「だが、解せないことが一つある。ここだけしか鉱石がなかった場合、結界を張るほどの力はないはずだ」


ユースティスは確かめるように問いただした。

すると村長は、ふっと口角を上げて笑う。


彼の態度にユースティスの疑念は確信へと変わった。


「無論。ここにあるだけでは結界など貼れないでしょう」

「やはりそうか……」


不敵に笑む老人に、ユースティスは確証を得た。


「どういうことなの?」


彼が何かに気付いていることを悟ったアリアが三度彼に問いかける。


「鉱石はここだけではないということだ」

「そうです。あちこちに点在させてあります。でなければこの街は今頃ーーーいや、もっと昔からとっくに滅びていたでしょう。あなた達の街のようにね……」

「一体どれだけの鉱石を集めた?そこまで集めるには一体どれほどの人間を使ってきた?」

「質問がいちいち多い方ですな……。それを聞いたところであなた達に何のメリットがあるのですかな?」

「メリットなどない……。だが、この街にいる以上何も知らないわけにもいかないからな」

「なるほど……。知りたがりな方だ」


村長はやれやれといった様子でユースティスから視線を外した。


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