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9章 やがて光は訪れて

終始無言の二人に、ただでさえ外の雰囲気の不気味さに身を震わせていたロンドは、ものの数分でいよいよ耐えきれなくなって声を発そうと口を開く。


その静かさを我慢出来なかったロンドが話しかけてくる。


「それにしても姉ちゃんと兄ちゃんはかなり仲が悪いみたいだが……、昔何かあったのか?」

「……」


ロンドの問いかけにアルマリアは一瞬だけ無言になり、彼を見つめて逆に問いかけてくる。


「どうしてそう思うのですか?」

「いや何、見てる側からしたら何かあったとしか思えないくらい不仲だからよ」

「そうですか……」


彼女の節目な態度にロンドは何かあったと確信した。

それが一体何なのかは彼には分からない。


アルマリアは少し下に俯き、悲しげな瞳で地面を見る。

だが、それも一瞬の出来事。


すぐさま彼女は体裁ていさいを立て直してロンドに言う。


「別段仲が悪いわけではありません。私はただ彼が気に入らないだけです」

「それを仲悪いって言うんじゃねーかな?」


いまいち彼女の言葉に理解が追いつかなかったロンドが声をあげる。

一般的には彼女が感じている不信感こそ仲の悪さを現すはずなのだが……。


「そうなんですか?」

「まぁ、世間的には仲が悪いって言うと思うぜ?姉ちゃんがそう思っていなくてもな」

「なるほど……」


キョトンとした表情で、だがどこか納得したアルマリアが頷く。

ロンドはほうけて彼女を見た。


そうして時の流れが過ぎ行く中で、二人は来たるべき時に添えてその場でじっと様子を伺うのであったーーー。



♦︎♢♦︎



殺伐とした空気が辺りを支配していく。

張り詰めた緊張感に息がむせそうになる。


じっとこちらを見つめてくる村長に、ユースティスは困惑する。

身じろぎ一つも許さないといった感じだ。


ユースティスは一歩彼に近付くと、問いかけるように声を発した。


「ここで何をしている?」


その問いかけに村長は、より一層鋭い瞳をユースティスに向けて口を開けた。


「それはこちらのセリフですな。なぜ貴方方がこんな場所にいるのでしょうか?」

「……」


その問いかけに答えることは出来ない。


「元来ここは特定の人間しか入れない場所です。貴方方が入ってこられたのはそれが理由であると思っておりますが……、まさかバレてしまうとは思いませんでしたよ」

「そうか。あいにく、外にいる連中に付いて行ったらこういう形で出くわしたんだ。文句があるなら外の連中にでも伝えてくれ」


ユースティスが言うと、村長は扉の外を見つめた。

その先にいた男達二人が、


『『ヒィッーーー⁉︎』』


と声を上げて悲鳴が口から漏れる。


「なるほど。外の人間の方でしたか。いやはや、何とも運のいい方だ。こんなバレ方をするとは思いもしなかったですよ」


やれやれと溜め息をついた老人の重たい空気が男達二人にのしかかる。


その重さに耐えきれなくなった二人は、やがて足を震わせながら立ち上がると、明後日の方向を向いて一目散に逃げ走って行く。


『くそっ……、ここにはもういられねぇ。ずらかるぜ‼』

『ちょっ、待ってくれ〜‼︎』


颯爽と逃げ去って行く男達を村長がじっと見つめる。

ユースティスは彼らの姿が見えなくなるまで見守った。


そして、二人の姿が見えなくなったのを確認した彼は、再び老人に目を移して言った。


「さっき」

「ん?」

「特定の人間しか入れないと言ったな?それはどういう意味だ?」


ユースティスが聞く。

彼は先程村長が発した一言に違和感を覚えていた。


特定の人間。

つまり、普通の人間には入ることの許されない地下ということになる。


おおよその答えは出ていたが、回答を確かめるためにあえて村長に聞いた。


しかし、問いただした彼を嘲笑うかのように。

老人は鼻で笑った。


「あなたも分かっているはずだ。自分が何者なのかを……」


ずっと瞳の奥が黒くなる。

その意味ありげな瞳にユースティスは確信を得た。


「やはりそういうことか……」

「えっ?どういうこと?」


二人のやりとりを隣で終始見守っていたアリアだったが、遂に会話についていけなくなり声を出した。


彼女は頭にはてなマークを浮かべていた。

話を聞いていたアリアがユースティスに問いかける。


「俺の考えが正しければ、ここはコード持ちの人間しか入れないということだ。そして、俺達はコード持ちだからこそ、この地下場所の特定に成功したということになる」

「なるほど」

「それは同時に、個々に居る者達全員がコード持ちという証となる。つまり外に居た二人も、俺達の目の前に居る老人も……」

「……っ‼︎」


そこまで聞いて、ようやくアリアは理解した。

ゆっくりとユースティスから視線を外して目の前の老人を見据えた。


「村長さん……まさか、あなたも……?」


申し訳なさそうに問いかけてくる彼女に、老人は自らを認めるかのように目を閉じて答えた。


「うむ。ここで否定したところでお二方が信用するはずもない……だから、本当のことを言う。そう、私もコード待ちの一人であったよ」

「嘘ッ⁉︎だって、この街にコード持ちはいないって……」

「それは本当だ。私以外この街にコード持ちは存在しない」

「……」


彼の自白にユースティス自身も驚いていた。

まさか、目の前にいる自分の年の幾ばくかも倍にした年齢にも関わらず。

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