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「なるほどな……。兄ちゃんの言葉が本当ならこの街の人間はどうかしているということだ」
「その通りだ。そして、恐らくその原因は平和ボケした時間が長過ぎたことによる結果だろう」
つまり、この街の平和な時間があまりにも長過ぎたために彼らは感覚が狂っているということになる。
何とも悲惨な事態だ。
「平和も続けば堕落するのですね」
「……」
「どうしました?」
突然黙ったユースティスにアルマリアが問いかける。
「いや……、もしかしたら―――」
何やらブツブツ言ってあるがアルマリアには聞き取れない。
やがて、ハッとなったユースティスは彼女から視線を外して言った。
「すまない。忘れてくれ」
彼の中で考えがまとまったようだが、アルマリアには伝えず自分の中で留めておくことにした。
「それで?今日はどうするんだい兄ちゃん?人にバレたらまずいなら、下手に動くのも得策とは言えねぇんじゃねぇか?」
「あぁ」
「だが、このまま大人しくじっとしているのも正直いい案とは言えない」
「……」
再び黙ってしまったユースティスにロンドは口角を上げて彼に言った。
「なら、ここで張り込みをするのはどうだい?」
「張り込みだと?」
ロンドの提案にユースティスは首を傾げる。
「まぁ、つってもこの時間帯はさすがに危険だろうな。万が一物音立てたら明るいから一発でバレちまう。そこで、夕方にでも張り込みを行えばいい」
「何故、夕方なんだ?」
「人気が少なくなるのは決まって夕方なんだよ。活動時間を見れば明らかさ」
「ふむ……」
ユースティスは彼の提案にしばし考える。
(確かに一理ある提案だが……)
彼はすんなりと受け入れることが出来ずに渋る。
そもそも全員で張り込んだところで利益があるのかどうか分からない。
ならば、情報収集を優先させた方が少しでも行動範囲を広げることが出来るはずだ。
それに今回ここに来た理由は、その奥を探るために全員を呼んだのだ。
(しかし……)
ユースティスは再度渋る。
簡単には決まらない。
彼の考えを待っているロンドはアルマリアとアリアを見る。
二人は特に口は出さないと言った様子でユースティスを見つめていた。
この三人の中で意見を決めるのは、どうやら彼の役割らしい。
女性陣二人は彼の意見に従って動くということが多いようだ。
じーっと二人が見つめていると、ユースティスの答えが出たのか。
彼は口を開けて言った。
「今下手に動いても上手く行く気がしない。故に、ロンドの言う通り様子を伺いつつ行動に移すべきだと判断した」
「なら、決まりだな」
ユースティスもロンドの考えに賛同したらしく、様子を見て実行に移すべきだと三人に伝えた。
彼の意見にアリアとアルマリアはただ黙って頷く。
かくして今後の方向性が決まった。
「取り敢えず、四人全員でここを張り込んでも意味はあまりないだろう。二人ずつに別れて行動することにする」
「二人ずつですか?」
「あぁ、アルマリア。お前もお前で行動することがあるのだろう?」
「気付いていたのですか……?」
「昨夜少しだけ様子がおかしかったからな。何か見つけて来たのだと思ったまでだ」
ユースティスは涼しい顔でそう言ってみせた。
アルマリアが遅く帰って来た理由を薄々感じ取っていた彼は、彼女なりに行動したいと思っていたのですら読み取っていたようだ。
「そうですね……、私も話しておきます。実は昨夜とある方の情報から森林の中にあるトンネルと思われる場所を発見しました」
「それは本当か?」
「はい、嘘はつきません」
「トンネルか……」
トンネルという単語にユースティスが反応を示した。
「昨日男二人がそのトンネルから出てくる様子を見ていたのですが、彼らはそのトンネルを『ルート』と呼んでいました。もしかしたら、この場所と何か関係があるのではないかと……」
アルマリアは少し下を俯いて答えた。
何故、彼女が下を向いたのかユースティスは理解していた。
きっと昨日のうちに言わなかったことを彼女は後悔していたのだろう。
それが形となって罪悪感が浮き彫りになったようだ。
そのことを瞬時に理解したユースティスは特に責め立てるわけでもなく彼女に言った。
「ならば、アルマリアとロンドはそのトンネルとやらを見ていてくれ」
「俺もか?」
「そうだ。何かあった場合、足手まといとなるお嬢様を扱えるのには、まだ慣れていないだろうからな」
「足手まといッ⁉︎私がッ⁉」
ユースティスの辛辣な言葉にアリアは驚いてショックを受けた。
「足手まとい……」
肩に悪霊でも付いているのではないかと錯覚するほど落ち込んだアリアを無視してユースティスは話を続けた。
「何かあったら直ぐに連絡が取れるようにしておけ。駆けつけられるくらいには用意しておく」
「はいよ」
「分かりました」
二人が承諾したのを確認したユースティスは、アルマリアとロンドに早速指示を出す。
「早速行動に移す」
「分かりました。では、私と彼はトンネルの方に向かいます」
そう言ってアルマリアがトンネルのある方へ向かっていった。
「兄ちゃんの方こそここを任せたぜ。どちらかと言えば、こっちの方が神経使いそうだ」
そう言い残してロンドは彼女の後を追うようにして去っていった。
後に残った二人はじっとその場から留まる形で滞在していた。




