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「……っ」


突如、彼は足を止めて背後にいる全員に向けて左の掌を差し向けた。

咄嗟に出された左手に驚いたが、じっとその手を見つめて三人は固まった。


彼から制すように出された左手が眼前に迫る。

止まれという合図なのだろう。


三人はすぐさま静止すると、その場から物音をたてずに立ち止まる。


その様子を見守っていたユースティスがそっと木々の隙間から顔を出し、じっと物陰に隠れて様子を伺う。


「あれは……」


ユースティスが見つめた先にいたもの。

それはーーー


『進捗の方はどうじゃ?』

『順調です。いい感じに客足が伸びてますよ村長』

『そうか……』

『村長の言う通りでしたね』

『我々が生き残るには……、他の街との関係が重要になるからの』

『そうですね。何分小さな国ですので』

『全く……。不憫じゃの』


老人と若い青年が何やら話し込んでいる様子がユースティスの視界に飛び込んできた。


一人は最初自分達に無人討伐の依頼をしてきたホルノマリン街の村長。


もう一人は彼の側近の者のようだ。


男二人は何やら話しているが、あまりに距離が遠過ぎるので、口元が動いていることだけしか分からなかった。


真剣な眼差しで遠くを見つめているユースティスを、三人は黙って見つめていた。


彼が見ている先に何があるのか。

三人の位置からは見ることが出来ない。


一体何を見ているのか三人が気になっていると、ようやく一段落し終わったのか。


ユースティスが手招きで全員に来るように促してくる。


アリア達は互いに顔を見て頷くと、慎重に足を進めてユースティスに近付いた。


彼は全員の顔を一瞥し見つめると、そっと顔を出すように指示を出す。


まず始めに、アリアが音を立てないように木々の隙間から顔を出しその先を見つめた。


ガサッという小さな音がアリアの耳に届く。

アリアはそっと顔を動かして様子が伺える位置に構えた。


彼女の視線の先には、老人と青年が草木の生えた森林に立って会話をしている姿が目に入ってきた。


「あの二人は……、一体何をしているの?」


アリアはユースティスにしか聞こえないように小さな声で問いただした。


質問を当てられたユースティスは、しばし黙っていた後、ゆっくりと口を開いて答えた。


「さぁな、ここからじゃあの二人の声が聞こえない。確かめられない以上、確たる証拠とは呼べない。仮に会話をしていたと言ったところで内容を話してくれるとも思えない。せめて、あの会話の内容が聞ければいいんだがな……」


ユースティスは奥ゆかしく思いながら歯噛みをした。

せめてもの願いは会話の内容が掌握出来れば良かったのだがーーー生憎それも敵わず。


悔しがっているユースティスに、黙って見ていたアルマリアが言う。


「それは恐らく無理でしょう。この位置からあの二人の会話を読み解くことが出来る人間はいません。それこそ特殊な聴力を持った方でない限りは無理ですね」

「分かっている。いちいち同じことを言うな」

「二度言った方が記憶にも残りやすく、耳に入りやすいでしょう?」

「ふっ、聞くに耐えん声なら敵わんな」

「ならば、私の美声で酔わせてあげますよ」


ばちばちと火花を散らし一触触発ムードを漂わせる二人。


武器を構えようとする二人に対して、


「おいおい‼︎ここで武器出すのは危ねぇだろ‼︎」


と、咄嗟に二人の手を取ったロンドが間一髪のところでその動きを制した。


もしこのままアルマリアが銃を構えて発砲していたら、あの二人に気付かれてしまい大変なことになっていただろう。


そんなことをしていると、何事もなく終えた村長と青年が周囲を警戒しながら立ち去っていく。


その様子を見ていたアルマリアが小さく声を発する。


「やはり、あの場所に何かあるのでしょうか?明らかに動作に違和感がありましたし」

「そうだな。そして、今日ここにきた理由も全く同様だ。あそこにはここにいる者全員に見せたかったものがある」

「そうなんだ。なら、早くその場所に行くべきじゃないの?」

「そうしたいが、さっきも見た通り人がいる。ということは迂闊に近付いて誰かにバレてしまえば最悪の場合ーーー」

「何をされるか分かった者でもありませんね……」


アルマリアが唸るように言う。

話を聞いていたアリアも理解したようで黙っていた。


「だが、じっとしているのもおかしい。そもそもこの街の違和感にもう少し早く気が付くべきだった」

「と言いますと?」

「俺達はここに来てからろくに無人を討伐出来ていない」

「そうだね」

「だが、普通俺達が無人を倒していないことを知ったら街の住人はどういった行動に出ると思う?」

「それはーーー」


アリアは考える。

もう自分達の身に危機が迫っていた場合。


早めに対処してくれる方が安心感を得られるはずだ。

にも関わらずこの街の住人は、まるで無人の存在を忘れているかのように平然と過ごしている。


その事実にアリアは気が付いた。


「普通なら責め立ててもおかしくない?」

「その通りだ。なにせ人を簡単に死なすことの出来る無人が目の前に現れているのだ。俺達に無人討伐を任せているからといっていくら何でも悠長過ぎる」

「確かにそうですね……」


アルマリアが頷く。

彼の言葉が最もだったからである。


自分達の身に危険が迫っているにも関わらず、そして自分達がこの街に来ているのを知っているにも関わらず彼らはまるで無人をないがしろにしている。

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