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「ところで嬢ちゃん。いい加減服着たらどうだい?」

「っ⁉︎」


極力アリアの方を見ないようにしていたロンドが呆けて佇んでいるアリアに指摘する。

自身の羞恥に気が付いた彼女は、そそくさとシャワー室に入って着替えること数分。


着替えを済ませたアリアがシャワー室から出てきた。

アリアの準備が終わったのを見たユースティスは、一言ポツリと呟いた。


「出掛ける」

「そうしましょう」

「私まだ朝食べてない……」

「よろしかったら、歩きながら食べられる朝食用意しましょうか?」

「いいの?やったぁー‼︎」


ルニーの提案にアリアは大喜びで声をあげた。

そうして四人はかくも朝から出かけるのであったーーー。



♦︎♢♦︎



外に出れば、街の風景はいつもと変わらず平凡な日々を迎えていた。


商人達の朝は昨日と変わらず早い。

朝早くから商売道具を開かしている男達が複数いた。


彼らは今日も生き抜くための所業を成していく。


彼らの様子を横目で確認しながら、四人は悠々と歩いていた。


街は夜の静寂を取り戻すかのような形で徐々に賑わいを見せる。


そんな中、朝食を食べながら歩いている少女と、彼女の後ろを取り巻きのように付き添いながら付いていく三人の姿がそこにはあった。


その一行が街の遊歩道を突き進んで行く。


一番前を歩く少女に釣られて彼女の後ろ守るようにして歩くユースティスとアルマリア。


そのすぐ後に続くようにしてロンドが、彼らの後ろを離れないようについて行く。


四人は街の活気に身を当てながら歩き続けていた。

全員が無言で歩いている中ーーー


一番前を歩く少女アリアがルニーに作ってもらった朝食を口に咥えながら話し始めた。


「そふぉにひてもどおひてひょうはでんいんでほぉうおううるの?(それにしてもどうして今日は全員で行動するの?)

「口に物を含んで喋るなと言っているだろう」

「そうですね。今のはさすがに私でもフォロー出来ません」

「ご……ごめんなさい(ゴクン)」


二人に注意されたアリアが謝り口に含んでいた食べ物を飲み込んだ。


その様子を伺っていたロンドが話の腰が折れたのを戻すために聞いた。


「んで?確かに俺も気になっていたが、どうして全員での行動にしたんだ?」


ロンドはユースティスの顔を見ながら答えた。

対して彼はロンドの顔を一切見ないまま答える。


「あまり個人行動を取ったところで意味が無いと悟ったからだ。収穫が無いのならば、個人で動く意味はない。故の行動だ」

「確かに私達は収穫と言えるものはありませんでしたが、それでも確かなものはなかったとは言えないのでは?」

「昨日お嬢様とロンドは動いていなかった。実質二人で動いていたなら情報収集力は二人分だけだ」

「二分の一では少ないということですか」

「その通りだ」


アルマリアとの会話を一段落させたユースティスはそれ以上語らず黙り込んでしまった。


彼の様子を見る限りでは、どうやらユースティスはまだ情報を欲しがっているらしい。


情報に対して貪欲なのだろうか。

それともただの心配性なだけなのだろうか。


彼の様子を伺ってアリアは朝食を食べ終わった。


口元に寂しさを覚えながら歩いていると、不意に後ろから黙っていたはずのユースティスが言った。


「今日全員での行動は見せたいものがあったから提案した」

「見せたいもの?」


ユースティスの言葉にロンドが反応する。


「昨日の調査で分かったことーーーいや、知ったことを全員で共有するための行動だと思え」

「なるほど……」


彼の話を聞いていたアリアは首を縦に振って頷いてみせた。


今日の行動にはきちんと意味があっての行動であるということアリアは理解する。


四人が歩を進めていく。

進めていった先は異様な雰囲気が漂っていた。


街の活気は無く、人の数も次第に少なくなっていった。


その光景に三人の顔に雲がかかり怪しさを増していく。


進んでいく先に街の活気はやがてほとんど無くなり、鬱蒼と生い茂る森林の木々が視界に入り込んでくる。


「なんか、段々と薄暗くなってくるんだけど……」


アリアは辺りに目を回して不気味そうに見つめる。


「不気味な空気を感じますね」


涼しげな顔で反骨音を響かせ歩いていくアルマリア。


「なーんか出そうだな」


鋭く目を光らせて周囲を警戒するロンドと三者三様の行動が出る。


だが、そんな三人をさしたる様子も興味も示さずユースティスは一言告げる。


「付いて来れば分かることだ」


そう言って、先に早歩きで先導していく。

その様子を見ていたアリアは、


「もう、ユースティスはせっかちなんだから‼︎」


と、一際大きな声で彼に浴びせてみせた。

遠のいていく背中を見つめていたアリアに隣で手を前に組んでいたアルマリアが彼女の両肩に手を置いて言う。


「仕方ありませんよお嬢様。あれが彼のディフォルメです」


遠い目をして言う彼女に、


「あれで通常なんかい……」


ロンドが呆れ混じりに溜息を吐く。


男の彼でも追いつけないほどハイスペースで歩いていく。


恐らく走れば間に合うだろうが、歩きと走りでは割に合わないと思って彼は走ることはしなかった。


つかつかと足音をさせながら、他の三人を置いてけぼりにして進んでいく。


一目散に歩いていく理由は、いち早く三人に見せなければならない光景だからである。


あの光景こそが、この街の謎に迫る事柄かもしれない。


先走る感覚に襲われる。

そう思って、ユースティスが歩いているとーーー

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