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自負している。

自負している筈なのだが……。


アルマリアは不満を溜めた深い溜息を吐いて深呼吸をした。


上手くいかない。

何故か上手くいかない。


人生は上手くいかない。

アルマリアにとってそれは許しがたいことだった。


人生は楽あれば苦ありという言葉が存在する。

そのはずなのに、思えば苦ありの人生の方がいくらか多い気がする。


そんな人生にうんざりしていた。

そんな人生に嫌気が差していた。


歩く足が次第に早くなっていく。


胡散うさんばらしのために外に歩いていたのに、逆に気持ちがふつふつと煮えたぎり高ぶっていく。


ユースティスと喧嘩したことに対して苛立っていたが、それ以上に思っていたことはーーー


「お嬢様……、いつも以上に怒っていましたね……」


そう。

いつものアリアとはまた違った怒り方だった。


いつもの彼女なら一言述べた後説教が始まるが、その説教も姑の小言のようにぐちぐちと告げていく。


時間にしては三十分にも待たないはずだろうが、体感的には二時間くらいに感じる。


だが、今日はその説教がさらに三十分長くなった。

体感にして四時間くらい。


小言も激化を増して、今日はより激しかった。

その事実にアルマリアはある種、衝撃を受けていた。


確かに自分が悪かったかもしれないが、ユースティスにも非があるはずだ。


私だけが悪い訳ではないと心では思っているのだが、いかんせん胸の取っ掛かりが思うように抜けてくれない。


むしろ深々と突き刺さるかのような刃物の鋭さに心苦しさを覚え、胸を締め付けられるような感覚に襲われる。


再び重い溜息が溢れる。

憂鬱ゆううつな気分が何とも言えない嫌な気を指す。


何故こんな気分にさせられているのか。

遡ると、やはり原因は彼で間違いなかった。


「本当に。つくづく私の気を損ないますね……」


彼の頭が思い浮かんだ瞬間、更に沸騰してしまう。

元凶の人物が目の前に来てしまったら、思わず手が出て殴ってしまいそうだ。


彼とは馬が合わない。

だから彼が部屋を出た時は喜びを表したが、アリアの怒りが収まっていないのを感じたアルアリアも仕方なく部屋から出るしかなかった。


彼がいなければこんなことにはならなかったのに。

そう気分が高ぶっていく中でーーー


「……?」


視界の端に見覚えのある人物が目に飛び込んで来て、アルマリアはふと、その歩を止めた。


アルマリアの視線の先。

視界に入って来た人物は、何やらどこか一点を無心で見つめているようだった。


覇気のない顔が目に写り込んでくる。

ただそこに佇んでいるだけなのに、妙に目を奪われてしまう。


哀愁漂う暗く淀んだ表情で一点を見つめているのは、頭にバンダナを巻いた男が捨てられた子犬のような表情でそこにいた。


一体あの場で何をしているのか。

その正体を探るために近付こうと歩み寄る。


すると、先程まで一点を見つめていた筈なのにアルマリアが近付こうと歩きだした途端、不意に視線を切ったバンダナを頭に巻いた男が、どこ行く風でそのまま行ってしまう。


追いかけようと後をつけようとしていたアルマリアだったが、彼との間には距離があり、追うのを諦めて足を止めた。


一体あの場で何をしていたのか。

気になったアルマリアは彼が見つめていた一点を探るために、先程いた場所へと歩みだした。


気が付けば辺りは次第に賑わいを見せていた。

刻を過ぎていたことすら忘れて自分は反省をしていたのかと思うと急に自分が馬鹿らしくなってきた。


落ち込んで時間を使うくらいなら、いっそのこと楽しいことでもして時間を使った方が幾分かマシだろう。


と、つい先刻まで考えていた事柄を全て忘れ去ろうとする。


負の記憶は人間にとって都合の悪い事象でしか過ぎない。


ならば、その逆を考えることこそ思考の行く先に至る領域ではないかとアルマリアは自論して街に目を当てた。


道路には左右の隙間を埋め尽くさんばかりの商人あきんと達が、己が商品を自として繁華していた。


アルマリアは早速自身の目の前で商売を行おうとしている大柄の男に声をかけた。


「すみません」

『ん?何だ?店はまだ開いてねぇぞ?少し待てーーー』

「いえ、少しお聞きしたいことがあるのですが……」

『聞きたいこと?何だ?』

「この街に何か特殊な物を扱っている建物はありますか?」


声色を低くして尋ねてみる。

鋭敏に反応した男もまた目を鋭くさせた。


『特殊な物?何だそれは?』


どうやら異様な物言いに反応したようだ。

アルマリアは昨日言っていたユースティスの言葉を思い出し聞き出そうとしていた。


(不本意ではありますが、これも仕事ですね……)


目の前にいる男がその情報を知っているかなんて分からない。


焦点はそこに置いていなくてもいい。

一番重要なのは……誰が何を知っているか。


情報は誰に伝ってどこまで届いているのか。

そこが分かれば御の字である。


アルマリアは神経を研ぎ澄ませて耳を立てる。

果たして目の前の男は知っているのだろうかと。

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