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「どうしたのロンド?」


明らかに挙動不審な反応を示しているロンドの態度に首を傾げる。


アリアの問いに、様子を見ていた二人も彼を見つめた。


三人の視線を一気に受けたロンドだが、帰ってきた言葉はやはりーーー


「すまん。説明をしてくれ」


の一点張りだった。

仕方なくアリアは詳細について語っていく。


「村長に無人の討伐を頼まれたってのは聞いたよね?」

「あ、あぁ……」

「無人をあらかた片付けるのが、私たちの今回の目標だったの」

「成る程……」

「でも、貴方があらかた倒してくれたおかげで、私達は大した体力を使わなくて依頼を達せしてしまった」

「……」


そこまでようやく聞いて納得したのか。


話を聞いていたロンドが考えるように顎に手を置いた。


「貴方がほとんど倒してしまったのに、私達が報酬を貰うのはあまりにも無法過ぎる。だから貴方に報酬を受け取ってほしいって条件を出したのよ」


説明を終えたアリアが考え込んでいる彼を見つめる。

決して悪くない提案だと我ながら思った。


自分達が倒してもいない無人を、ロンドが倒したのなら功績は彼にあると言える。


自分達が依頼を受けていなければ、彼が依頼を受け持っていたのかもしれないと。


あくまで過程の話をするが、やはりアリア達が貰うのというのは些か不躾である。


そうして提案にも似た提示を受けたロンドが、罰が悪そうな瞳でこちらを見てきた。


断られるであろうことを予測していた三人は、次いだ言葉にーーーー


「あ〜……、何か勘違いしているようだから言うが……。俺はあんたらとは反対方向から逃げてきたんだぜ?」


一瞬理解が及ばなかった。


彼の告げた言葉を理解するのに、多少の時間を有した。


やがて、いち早く理解を得たユースティスが恐る恐る聞き返すことにした。


「確認するが、俺達と反対方向から逃げてきたと言うことはーーー」

「恐らく兄ちゃんが想像している通りだ」

「成る程な……、道理で合点がいった」

「え、どういうこと?」


ユースティスが納得する中で、一人だけ理解出来ていなかったアリアが困惑した表情でユースティスを見つめた。


彼は理解出来ていないアリアに対して口を挟もうとしたその時ーーー


「つまりはこういうことですお嬢様」


彼より先に口を破った者がいた。

ユースティスが声のする方に顔を向けた。


その視線の先に彼女はいた。


目を瞑り、両の手を前に傾げた淑女ーーーアルマリアが彼の代わりに答えた。


「彼はこの道を向けようとして無人を偶然倒したのではなく、私達が今いるこの場所より先の向こう側から来て一旦引き返した。その時にこちらに向かってくる道中で無人と対峙したーーーということです」


アルマリアの説明が告げたことーーー

それはつまり……。


「彼は、私達と同じようにホルノマリン街から出てモルベス街道を抜けようとした。しかし、途中で何かあり……仕方なく引き返したが、無人と遭遇して倒さざるを得なかったということになります」


アルマリアが淡々と告げていく。

その言葉が正しかったのか。


ロンドが頭を掻いて反応する。


「あ〜、そっちの姉ちゃんの言う通りだ。一旦引き返すしかなかったんだな。これがまた……」

「一体この先に何があると言うのだ?」


ユースティスが問う。

多少のことで逃げ出すことはありえないと判断する。


無人を討伐出来るほどの力を有している彼ですら、一旦は引き返すしかないと判断した。


それが意味することはーーー


「一度見た方が話は早いだろうな……」


彼の神妙な面持ちが、酷く視界に映り込む。


「付いて来てくれ」


そう言うと、彼が先頭を先立って歩く。

釣られてアリア達も彼の後ろを付いて歩いていく。


果てなき一本道を歩き始めた四人は、無人の警戒を怠らないよう辺りに注意しながら歩を進めていく。


道中四人は無言であった。


無人の警戒を怠らないためには、静かに声を押し殺して歩かなければならない。


無人はひっそりとこちらを危機迫らんとする動きで向かってくる筈だ。


奴らの特殊な聴覚により、こちらが大きな音を出せば直ぐに射らんとする。


無人といえど、無音でこちらに接近するのは困難極まる。


なればこそ、奴らが発する少しの音でも聞き逃せば、それはイコール死に直結しーーー命取りとなるだろう。


だから四人は一言も発さない。


発せば無人に探知される可能性が上がってしまうからだ。


そうーーー思ってはいるのだが……。

しかし、一人だけ。


その静寂が我慢出来なかった者がいた。


よく見れば、彼女は人知れずうずうずと体を反応させている。


違和感を感じた二人の紳士淑女が、黙ってその様子を見守った。


ロンドの後ろ姿を見つめながら、アリアが尋ねた。


「ねぇ」

「……何だ?」


声を掛けられたロンドは、彼女の視線が自分に向いていると知りつつ、そちらには顔を向けずに返した。


「娘さんと暮らしているって言ってた……よね?」

「あぁ、それがどうした?」

「いや……、娘さんって今一人なのかな〜って思ってね」

「あぁ?」


何を言いだすかと思えばとーーー

呆れ返って息を吐く。


だが、ふと視線を後ろに向ければ、彼女の心配そうな瞳がそこにあった。


ロンドは息を飲んだ。

そこに彼女の勇姿があった。


きっとーーー彼女なりの心配をしてくれているのだろう。


そう思うと、彼女の底の深さを感じ取れるような不思議な感覚に襲われる。


成る程なとロンドは思う。


ふと、彼女の後ろを守るようにして歩く二人の紳士淑女を見た。


凛とした佇まいの二人組。


彼らはアリアが話している最中も、ただじっと一定の距離を保ちつつ歩いている。


彼女を守らんとする意志がひしひしと伝わってくる。


確かにと、気配を察知してみれば彼らから放たれる無数の狂気が肌を伝ってきた。


無人が自分達の前に現れない理由がロンドには鮮明に理解出来た。


この少女が今日まで生きて来た理由すら分かった気がする。


子供だと甘く見ていたが……、


実のところ彼女を慕う人間が、今日まで彼女を護衛していたのではと。


そう思って再びアリアを見る。

しかし、ならばこそと。


彼女を守ろうとする意志が無ければ、付いていくわけはないかと……


それらが垣間見えた瞬間だったと、ロンドは思い視線を戻した。


「大丈夫だ。今は叔母に預けてある。一人じゃねーよ」

「本当……?」

「嘘つく必要あるか?」

「それもそうだね」


笑顔を見せて納得した表情をした。

その笑顔に、ロンドは離れた娘のことを思い出した。


彼女の笑顔にはどこか似た雰囲気を纏っていた。

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