error code.12
「何してるんだ‼︎死ぬぞ‼︎」
バンダナ男が忠告するが、一切聞こうとしないユースティスがそこにいた。
そして、遂に三人の前に無人が姿を現し、攻撃をしようとしていた。
ゆっくりと時間が流れる感覚に襲われ、バンダナ男は覚悟を決めた。
もう駄目だと思い、思わず目を瞑りそうになった。
視界がブラックアウトしていく。
その時ーーー
「ふん……」
鼻を鳴らしたユースティスに、バンダナ男は閉じかけていた目をこじ開けてその様子を伺った。
無人から放たれた鋭く伸びた爪がユースティスに向かってくる。
常人では捉え切ることすら不可能な早さの攻撃。
だが、ユースティスは臆することなくその攻撃を一瞥すると、
「エラーコード」
アルマリアと同様の言葉をボソリと呟いた。
すると、ユースティスの裾から漆黒に塗りたくられた黒色のカードが出てくる。
「私怨」
続いて詠唱を唱えると、黒色のカードが淡い青色の光りを伴いながら輝きを放つ。
カードが姿を変えて黒色に彩られた色彩の剣がユースティスの手に握られていた。
剣を前に掲げると、徐に向かってくる攻撃を斬り捨てた。
無人の攻撃を防いだユースティスは澄ました顔でアリアを見る。
その憎たらしい顔に、アリアの隣にいたアルマリアは憤慨しながら彼女に続いて、無人との距離を一気に詰め唱える。
「私怨……バースト」
銃口を無人に向けて一気に引き金を引く。
そして、無人にトドメを刺した。
粉砕していく無人を見つめながら、アルマリアは銃の弾を替えて戻ってくる。
「全く……、攻撃を防いだぐらいでいい気分にならないでください」
「ふっ、すまないな。つい己の力を見てもらいたくてな」
「くだらない……」
「ほう?もう一編言ってみろ」
そう言う彼の手には真剣が握られていた。
不気味に光る剣を前に、全く物怖じしないアルマリア。
その二人に挟まれたアリアは、少し目を細めて言った。
「まだ終わってないよ二人共……」
呆れ混じりに吐いた言葉が二人の耳に届く。
これがアリアの最大の武器、
最強の矛ーーーアルマリア。
最強の盾ーーーユースティス。
二人の武器。
それと、
「ミスコード‼」
アリアは詠唱すると、服の裾の隙間から真っ赤に燃えた赤色のカードが飛び出した。
「私怨‼」
続いて発した言葉に呼応して、赤色のカードが光を放ち、形を変えていく。
光の収束と共に、アリアの手には銃剣が握り締められていた。
三人の姿を見たバンダナ男が驚いたように声を上げた。
「お前ら……、コード持ちだったのか。それも、戦争の受け継ぎってやつか」
バンダナ男が喋りながらアリアに近付いてくる。
まだ無人がいるというのに。
彼は呑気に話しながらこちらに向かってくる。
「俺も昔は戦争に参加しようとしたさ、まぁ子供だったから無理だったがな」
だが、アリアの懸念はバンダナ男が見事に粉砕した。
懐に入り込んだバンダナ男が無人に一撃を与える。
それだけで無人は粉々に消し飛んだ。
いつの間にか残っていた無人はあっという間にいなくなり、バンダナ男は戦闘を終えていた。
「貴方……なかなかやるのね」
「それは俺のことかい?冗談はよせよ。おたくらの方がよっぽどやるぜ。特にあんた。子供かと思ったがーーー立派な力持ってるじゃねーか」
バンダナ男が力一杯アリアの背中を叩いてくる。
流石男性と言うべきか。
背中がヒリヒリして痛い……。
愛想笑いを浮かべたアリアが、ふと気付いたように言った。
「あははは……、そう言えば、貴方のお名前聞いてなかったわね」
「ん?俺か?俺の名前はサンドルス・ロンドだ」
「そう。じゃあ……、ロンド。貴方はどうしてここに?」
「いきなり名前呼びかよ……。まぁ、いいけどよ。俺はこの道を抜けようとしたんだ。俺は元料理長でよ……、トゥディって言えば分かるか?」
その単語に聞き覚えがあったユースティスが、顔を歪め反応した。
「トゥディと言えば……」
「有名な名なの?」
「最近出来たばかりの料理店だ。その味は絶品で三ツ星は硬いと言われてたが、突如店を畳んだらしい。何でも、従業員全員が辞めたと聞いている」
「料理長の俺が辞めれば皆辞めてったさ」
「成る程な。だか、いかんせん分からんな……。何故輝かしい未来を捨てて、死と隣り合わせの危険が伴う無人を倒そうとしてるんだ?」
確かにユースティスの疑問も最もである。
料理長という立派な職があるならば、こんな辺境の地にいなかっただろうに。
ましてや死と隣り合わせにも近しいこの世界で、あえてこの道を選んだことを気にするのも当然だ。
ユースティスの鋭く睨んだ目が飛んできたが、対してロンドは何か思い当たるのか突如顔色を暗くして答えた。
「家族をやられたんだ。この世でたった一人の妻をな、夫の俺が妻の仇を取らないでどうするんだって話だ。今は妻から託された娘と二人で暮らしてる。娘は母親が死んだことを知らねぇ……、仇を討ってから報告するつもりさ」
ロンドの顔を見た三人は息を呑む。
彼にも思うところがあってこの場にいるのだと。
それぞれの思いが交錯する。
皆が何か悲しい事情を持っている。
それがこの世界だ。
「……貴方にも貴方の意思があってここにいるってことね」
「そういうことだ。お前らは何でここにいる?」
ロンドは疑問の目を向けて聞いてくる。




