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「分かりました」
「お嬢様早く行け」
「私が先頭なの忘れてた……」
ユースティスに催促されて、自分が先陣を切るはずだったことを忘れていたアリアが慌てて隠れていた影から出た。
アリアは一気に走り切ると、バンダナ男の元へと駆けて行き、目の前を遮る自分の近くにいた無人の一体を腰に添えていた剣を鞘から抜きざまに一閃する。
「はぁぁぁぁああああ‼︎」
剣の鋭い攻撃が無人を斬り捨てる。
間髪入れず、再度振り向きざまに切っ先を無人へと向けた。
気合いのある声とともに、力強く握られた剣が無人に突き刺さる。
そのまま突き刺さった剣を両手で握りしめ、力一杯下へと力を加えた。
鈍く硬い音がした瞬間ーーー。
力が勝ったアリアの剣が無人の無機質な体を粉々に砕く一撃を与えた。
「何だッーーー⁉︎」
突然の出来事に驚きを隠せないバンダナ男が、無人を倒す同士であるアリア達の存在に気が付き始めた。
「子供だと?」
その姿にバンダナ男が訝しげに睨んだ。
そして、無人に攻撃を与えつつアリアに近付いてくる。
背中越しにアリアに近付いて、一言告げる。
「なんだお前?見たところ子供じゃねーか。帰れ帰れ。ここはお前みたいなチビが来るところじゃねぇーんだよ」
無人に向かって攻撃するアリアに対してバンダナ男が軽くあしらおうとするが、
「その口を閉じろ」
「お嬢様に今の言葉もう一度言ったら、どうなるか分かりますよね?」
突然向けられた銃口と切っ先にバンダナ男は顔を引きつらせて手を挙げる。
何が起こったのか分からなかった彼が背後をちらりと見る。
その二人はアリアを守るようにしてこちらに視線を向けていた。
突然現れた少女に驚いたと思えば、彼女の後ろを付いていた二人の恐ろしいほど怖い形相に、
「お、おう……」
アリアから一歩退いてたじろぐ。
彼が一歩後ろに下がったのを見て二人が武器を収めると、アリアは躊躇することなく無人に向かって前進する。
「おい‼︎あぶねぇぞ‼︎」
小柄な少女が自分を差し置いて無人に向かっていく姿に、ふざけているのかと憤慨する。
勇敢にも彼らに対峙しようと歩いていく少女にバンダナ男が忠告するが、アリアはその声など耳を傾け聞けずに更に大きく一歩前に進んだ。
躊躇いもない少女の前進にバンダナ男が惚けていると、彼女は歩く足を早めて言った。
「大丈夫。私には二つの武器があるから」
バンダナ男は最初少女が何を言っているのか理解出来なかった。
ただ、目の前の少女が無人に向かっていく姿を眺めていることしか出来ない。
進みに進んだアリアは無人の前まで来た。
こちらを観察するように警戒態勢を取っている無人に対して、一歩も引けを取る事がないアリアが自分の後ろにいたアルマリアを見つめて言った。
「アルマリア、行ける?」
「畏まりました」
アリアに促されたアルマリアは、彼女より前に出て言った。
「ベストコード」
そう唱えると、アルマリアの服の裾から黄金に輝く金色のカードが飛び出した。
アルマリアはそのカードを手に持って自身の前に差し出した。
「私怨」
続けて唱えると、黄金のカードが突如光を放ち、その姿を変えて変形する。
やがて光が和らぐと、彼女の手に金色のカードは無く、代わりに黄金に輝いた美しい銃が握られていた。
ショットガンにも似た銃を彼女は片手で握り締め、照準を無人へと合わせた。
こちらに向かってくる一体の無人に銃口を向けて、アルマリアは一つ引き金を引いた。
その瞬間、彼女の銃から放たれた爆音と爆風が一着線に向かって無人に飛んでいき、あっという間に一体を飲み込んでいった。
彼女の銃弾の威力に、バンダナ男は驚いて思わず腰を下ろした。
見たこともない銃から放たれた弾丸が、瞬く間に無人を飲み込んで行くその姿を見て、夢でも見ているのかと錯覚に陥る。
だが、アルマリアの攻撃もつかの間。
すぐに残りの四体が彼女の元へ駆け寄って行く。
彼らは同胞をやられた敵を討ちに、アリアの元へと迫っていた。
「おい‼︎ボーッとするな‼︎攻撃が来るぞ‼︎」
立て続けに迫ってくる無人達に、一歩後ろに下がって後退するアルマリア。
彼女の前には、アリアの横にいたユースティスが仁王立ちで無人達を待ち構えていた。




