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予測可能少年  作者: ぶれます
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1、じいちゃんの繰り言 (4/22 10:06 a.m.)

その日のテレビは朝からあの事件ばかりやっていた。

もう朝の10時。

いくら大きい事件だからといって、さすがに学校が休校になるとか、

そんなことはない。

だけど僕は高校を休んで、ニュースを見るように言われている。

理由は簡単。

僕のじいちゃんがあの人質事件で捕まっているからだ。


ニュースではずっと同じ内容ばかり繰り返している。

ろくな新情報がないんだろう。


日本の孤島にある研究所が武装集団によって占拠された。

犯人の人数・正体・目的、不明。

人質は僕のじいちゃんを含め数百人。

政府は手をこまねいているだけ・・・


----------------------------------------------


僕のじいちゃんは研究所の中ではかなり偉いんだそうだ。

最後に会ったのは去年の夏休みだった。


「光弘もだいぶ大きくなったなぁ」


目を細めてじいちゃんが言う。

研究所がある島で僕はじいちゃんと散歩しながら話をしていた。


「今年で16だよ」


「ほう、じゃあ進路とかもう決めたか?」


「具体的にはまだ。でも理系のクラスにした」


「そうか、そうか」


じいちゃんは満足そうだ。

科学者であるじいちゃんはもちろん、父さんも母さんも、みんなどちらかというと理系の仕事をしている。

子供のころから機械いじりが好きだった僕も自然とそちらの方向に流れて行った。


「しかし16にしては背がちぃっとばかし足りてないんとちがうか?」


いやなところに話題が移った。

たしかに僕は同年代の奴等と比べて背が低い。

一番のコンプレックスだ。

でもそれなりに努力はしている。


「でも喧嘩ならでかいやつにも負けないよ。体は鍛えているからね」


「なんか部活でもやっとるんかね」


「棒術やってる。背の大きい奴の脳天でも余裕で届くよ」


そばにあった2メートルくらいある資材用の角材でちょっと実演してみた。


「ほう。なかなかすごいもんだ。

 そうか体は鍛えているか。じゃあ結構もてるんじゃないか?顔は可愛いし」


僕の二番目のコンプレックスだ。

たしかに僕の顔は可愛い系らしい。女に間違われたことも一度や二度ではない。

でもかっこいい男を目指す僕にとってはあまり気分のいいほめ言葉ではない。


「じいちゃん・・男に『可愛い』って言うのはほめてないよ。

 ほめるなら『かっこいい』!」


「ほうかのぉ。ワシはいいと思うぞ。

 容姿端麗な棒術使いがばったばったと敵をなぎ倒す。

 絵としてはさまになる。容姿は女で実は男だったとかな」


話がとんでもない方向に行っている。


「なんでそこで女装の話が入るかなぁ」


「ん?知らんか?かの有名な五条大橋での牛若丸と弁慶の立ち会いでは

 牛若丸は女の格好で戦ったんだぞ」

 

それと僕となんの関係が・・

そう反論しようとしたそのとき、ふたりはじいちゃんの家に着いてその話はおしまいになった。



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