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第一話「Restart」

世界が壊れていく。


人同士の争いで。魔物による襲撃。

圧倒的存在による駆逐。

ーーーーそれらに属さない者の手で。


木々が燃え大地が割れ海は乾き空は反転する。

黒い影が国中を覆い隠し、建物は薙ぎ倒され、

祈る人々は悉く消し去られ、世界は忘れられていく。


その世界の中心に立つ青年は呆然と世界を見ている。


戦ってきた。守るために、

築いてきた。幸せのために、

用意した。まだ見ぬ誰かのために、

全ての行動は無意味だった。

蟻数匹が人に抗おうと努力するのと何ら変わらない


絶望?失望?悲しみ?憎しみ?わからない


後ろから名前を呼ばれた。

振り返ろうとした、そこで視界は暗転した。


またか....不思議とそう思った。





青年は目を覚ます。

薄暗く、そして静かな森の中で、

巨木というほどでは無いが確かに立派な木の根元。

木に寄りかかるようにして倒れている。


「ん...んん....」


外傷はない、服も汚れていない。

だが青年には記憶がなかった。


「........」


上半身を起こし、座るようにして周りを見渡す。

場所に関しても自分自身に関しても、

もちろんなぜここにいるのかも。

何もかもを覚えていなかった。


「.....どこだ...ここ...」


問いに答える者などいるわけもなく

木々は風に揺れるだけで、森は静寂を保つ。


「何も覚えてない....そもそも俺は誰だ...うぐっ」


頭痛が走る。ビキィっとひび割れるような痛み。

俯き、右手で頭を押さえる。

深呼吸をしてなんとか痛みを落ち着かせた。


俯いたまま目を開いた時、ふと目に入った。

剣が一本、そばに落ちていた。


「..剣?....俺の...か?」


鞘に入っているすこし汚れた、ロングソード。

手に取って半分ほど鞘から抜いてみるが、

特段変わった様子もない普通の剣。

ツンとする鉄の匂いが鼻につく。


「....まぁ、どちらにせよ。護衛用に持っていこう、何があるかわからないし」


剣を持ち立ち上がる。

鳥の囀り一つとしてならない、静かな森。


慎重に歩いていくも動物すらいない。

最初は気を付けていたものの、少しずつ緊張がほぐれ。

最後にはズカズカと歩いていた。




突然、静かな森が騒めく。

鳴かなかった鳥たちが慌てふためき飛び立ってゆく。


「な、なんだ?」


歩みを止めて剣に手を伸ばし警戒体制を取る青年。

そんな彼の少し前、10メートルほど先の茂みから、

3メートルほどの巨体を持つ猪のような生物が現れる。


茶色い毛皮に包まれ、口元に生える牙は、

その身相応にデカく鋭利。

金属のような物が顔全体を覆う。

蹄を地面を何度も蹴り上げ、

口からは蒸気のように荒く息を吐いている。


(確実に....襲おうとしている...俺のことを!)


自然と息が上がる。恐怖に足が震える。

剣を抜いても意味があるのかと疑問が浮かぶ。


刹那、脳内に映像が流れる。


"その生物が地面を蹴り突進を繰り出す。

直進では無く少し右に逸れ、彼の左半身を抉る"


意識が今に引き戻される。


「なんだ今の」


が、目前にはすでに突進を繰り出した生物がいる。

空気がひび割れるような速度。


「ぐっ!あぶねぇ!!」


映像が脳裏に残り、一か八かで右に飛び出す。

奇跡的に回避に成功し地面に転がる。


猪のような生物は避けられたことで木に激突するが、

その木を根本から薙ぎ倒し、停止。

彼の方を向き直す。


(さっき一瞬だけ見えたあの情景....偶然かはわからないけど、同じような動きだった...直進じゃなく左に...ただ違うのは...)


左腕に目をやる。抉られてはいないが、

服が破れ、大きな切り傷から血が流れ出る。


(いてぇ...なんなんだ...さっきの....)


傷を右手で押さえるも血は変わらず流れ出る。

緊迫に包まれさらに息が上がる。

目の焦点が合わず動悸が止まらない。


が、そんなことは知ったことではない。

地面を強く蹴り上げる音が耳に届く。


「!」


2度目の突進。先ほどとは違い、威力はもう知ってしまった。


傷ついた左腕を庇うように体の向きを変え、

体の右側を正面に突き出す。


ゴスッ!!


弾き飛ばされ木に激突し地面に倒れる。


(いたい...いたいいたいいたいいたい!)


右脇腹から全身に鈍い痛みが広がる。

じわじわと熱が、痛みが伝わってくる。

目の前がよく見えなくなる。


1度目よりも距離が近かったからか威力は落ちていた。

それでも十分すぎる威力。もう戦意はほとんどなかった


その時、また脳裏に映像が流れる。


"剣を持ち、生き物の正面に立つ。

足もふらつき視界もボヤつく。それでも立つ。

奴は地面を蹴って突進を繰り出してくる。

そこでタイミングを合わせ右に動き、

刃に当たるように剣を生き物の正面に構える...."


そこで映像は途切れる。


(また...なんなんだこれ....でもさっきと同じなら、やれるってことなのか?)


勢いよく飛んだからか、あの生き物は青年を見失っている。それでも時間の問題だ。


(.....やるしかない....のか....)


視界が霞む。息が荒い。

それでも、立たなければ——。

倒れたら、すべてが終わる気がした。

土を掴む。痛みで手が震える。

それでも、立ち上がる。


勝つために。

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