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お茶のお姉さん



 アイテールの外れ、と言っても亡者などは存在しない場所、

 緑々《りょくりょく》とした茶畑がある場所、

 ススキのほこらからアイテールに向かう街道の途中の場所。

 一人の女性がせっせとその茶畑の茶の葉を収穫している。そこに訪れる龍人、声を掛ける、



「クロウディア」



「? 脳筋じゃないですか、どうしました」



 龍人を開幕脳筋と言うこの女性、クロウディアと呼ばれた女性、

 本名クロウディア・リデレ、褐色の肌と、黒い髪、

 前髪は向かって4・6で丈夫に分かたれ目の外脇を通るように鎖骨付近まで流れる、

 後ろの髪の毛は赤いシュシュでまとめられポニーテール、

 やや灰色のキャミソールのような紐部分がやや横幅がある黒い生地の肩紐の服と、

 肩を過ぎた当たりから始まる黒い手首前までの長さのデタッチドスリープ着用し、

 腰よりやや上から始まる茶色のスパッツ、生者のベルト、

 その下には黒いタイツ、

 膝と足首の中間から始まる茶色いブーツを着こなす20代半ばくらいの

 若干垂れ気味の豊満な胸を持つ女性である。



「頼みがあるんだけどよ」



「か、か、かわいいいいい~~」



「!? 龍人っこのご婦人は一体っ」



 龍人の話など聞いていないかのようにクロウディアはその同行者、

 いや同行動物であるアヒルのジョージに飛びつき胸で挟み込み、

 手で撫で撫で、顔でスリスリする。



「なんですか龍人、このアヒルちゃんは、この世界で始めてみましたよ」



「まーな、だいたい速攻魔獣にやられて魔獣の元になるからな、

 煮てもよし焼いてもよしなダックだ」



「それで、この子をどうしろと、料理は実はそんなに得意では無いのですが」



 クロウディアはジョージを見つめながら物騒なことを言い始める。



「まてっまてっ私は美味くないぞッ、保証する、

 それに罪悪感はないのかこの可愛いアヒル、ジョージを食べるなどッッ」



「冗談よ、冗談」



 クロウディアの手の中で暴れまくるジョージ、笑顔で冗談を告げるクロウディア。



「初対面でする冗談ではないな、

 なに、そいつ使えるなら使ってやってくれないか、

 まだ消える気もないみたいだしな、

 動物なのに『意志』がすごいのがビシビシ伝わってくる」



「いいわよ、一人でお茶作るのも飽きてきた頃合いだったし、

 ジョージ、これからよろしくねわたしは、クロウディア・リデレ、」



「改めて、アヒルのジョージだ、よろしく頼むクロウディア・リデレ」



 ジョージは自身の右の翼をクロウディアに差し出す、

 クロウディアは左手にジョージを乗せながら右手で握手をした。



「クロウでいいわ、ジョージ」



「なら私はジョーでいい」



「よろしくジョー」



「よろしくクロウ」



「それで、あの女の子はなに、龍人、実はなんだっけ?

 現代人で言うところの『ろりこん』なの?」



「ああ? そんなんじゃない、怨嗟の魔境で拾った、ジョージの恩人だ」



「最近見かける娘だけど、

 お茶買おうか買うまいか悩んで結局買わなかった人見知りな可愛い子なのよねぇ、

 結構気になってはいたんだけど」



「何だお茶も買えないのかよ、アイラちょっとこっちこいっ」



 遠目で眺めていたアイラを龍人は呼びつける、



「…別に、いい」



 一向に来ようとしないアイラにしびれを切らした龍人は首根っこを捕まえてクロウディアの前に運ぶ、



「…やっ、やめっだめっいいッッ」



「俺は嫌と言われたらさせたくなる性分でな、

 最強の天邪鬼とも言われたこともあるとかないとか、結構声も張れるじゃないか」



「ほれ、クロウディアにお茶をください、って言ってみろ、」



「……ッッ」



 ジタバタするだけで何も言わないアイラ、涙目である。

 ジョージは隙を見てクロウディアから逃げ出し、龍人の肩に逃げ込む。

「だめよ龍人、強制的にやらせちゃ、いじめってやつよ」



 無理やりな龍人を諌めるクロウディア、しかし、



「それにしても…」



「かわいいぃぃぃぃぃぃぃッッ」



「この青い髪、不器用さ、人見知り、

 わたしに子供がいたらこんな感じだったのかなぁ、それとも違うのかなぁ」



 龍人から強奪したクロウディアは立ちながら

 アイラを持ち上げつつジョージのように胸で挟まれ撫で撫でされるスリスリされる、

 若干嫌そうである。



「さあな、なんならこの世界で試してみるか?」



「だーめ、子供の前でなに言ってんのよ、

 テラ・グラウンドで子供ができるなんて聞いたことないわよ、

 それにあんたおっぱい揉みたいだけでしょ」



「チッッ」



 龍人は本気で悔しそうに舌打ちをひとつした。



「…く、くるしい」



 胸に溺れているアイラ、

 拘束と世界にみなされたのかようやく解放され地面に着地する。



「あらあらごめんなさい、わたしはクロウディア・リデレあなたは?」



 クロウディアはしゃがみ、アイラに視線を合わせながら自己紹介した。



「……あ、い、アイ、ラ・ノー、ズ」



 その視線に耐えられずアイラは左下に視線をやりながら名前を名乗る、



「アイラね、OK、わたしのことはクロウでもクロウディアでも好きに呼んで」



「………う、ん」



「かわいいぃぃぃぃぃなにこれぇぇぇぇ」



 小さく頷くアイラにクロウディアは再び抱きつき持ち上げ二回転ほど振り回す。



「い、いたい、」



「ごめんなさい、つい興奮しちゃって、そうだ、お茶飲みましょうもう、夜にもなるし」



 クロウディアはゆっくりとアイラを下ろしこの場にいる全員をお茶に誘った。





 緑の雑草が薄っすらと生い茂る茶畑の少し外れの一角に腰を下ろす龍人、

 アイラ、ジョージ、クロウディアは

 この世界の魔法以外の着火材『火花の石』を使いお湯を沸かし、

 沸かしたお湯の中にお茶の葉を入れコップに注ぐ、


 『火花の石』

 直径8cmの石、玉状のゴツゴツした変哲もない石、商人か、

 アイテールの灯火台に祈ると一日一個貰える祈ることで勝手にアイテムポーチに入る、

 もしくは始まりの狩人と亡者の森にある、

 巨大なる火花の石を鍛冶屋の資格の金槌で叩くことで

 アイテムポーチに限界値の99まで手に入れることができるアイテム、

 

 地面に置きもう一つの火花の石で叩くことにより地面においてある火花の石自体が

 一定時間燃える不思議な石。生者の間では枝木を拾い、貯蔵し、

 薪のようにするのが主流である。 



「どうぞアイラ」



「……あ、ありが、と」



 照れながら白いコップをクロウディアから受け取るアイラ、



「どういたしまして」



「ジョーは飲めるのかなぁ? まぁ冷めてからつまんでよ」



 クロウディアはジョージの前にもお茶を入れたコップを出す。



「了解した、お茶、初めてだ昨日龍人達が飲んでいたのを見て興味があったのだ。」



「ほら龍人も」



「わりいな、」



 龍人もクロウディアからコップを受け取る、



「ぜんぜん、龍人のおごりだし」



「なっ、まぁ、大したアニマじゃないしな…貢献しとくよ」



「まいどあり~」



 クロウディアは両手を前で組み、左頬の下に傾けてそう言った。



「商魂たくましいぜ」



 飲もうとした矢先このお茶代は龍人の払い、

 商人クロウディアに負けた龍人はお茶を啜る前に苦笑いした。



「それで、龍人とアイラはこれからどうするの?」



「アイラが『獣たちの怨嗟の魔境』に行きたいって言うからよ、

 それにとりあえず付き合うだけだ、

 どーせやることはアニマ集めだからな、

 多少の効率の悪さはあるが、雪原はこの間行ったし、灼熱は熱いし気まぐれだよ」



「ふーん、で、アイラはどうして怨嗟の魔境に行きたいの?」



「……つ、強く、なりたいから」



「も、もう何もできないのは、い、嫌だから」



 そのアイラの発言は、声音は、確かに本物、意志力を感じるそこだけは本物、



「……なら、一人で行動するなら地道にやれ、

 あそこでやられちまうようじゃ特攻に近い、

 力がないから強い奴と戦って経験値を得たい、

 その理屈はわかるしその矛盾は大切だが、

 基盤や環境がなきゃそれは自殺と変わらない、

 お前はまだ心も体も子供だ、背伸びしたいのなら信頼できる大人を頼れ、

 それができないならアイテール付近で地道にやるのが正解だ、

 それが思考型の、臆病者の、引っ込み思案な性格のおまえの正規ルートだ。」



「……ッッ」



「この世界は死ねる、たが子供なほど、一度の死で失うものも大きい、

 それどころか一度で消える奴がほとんどだ。

 見たところ一度も死んでないようだがな、運だけはあるようだ」


「子供はこの世界でも姿形が個体差はあれど成長する、

 現世で辿りつけなかったところまでいける、

 そのチャンスを失いたくないのなら、学べ、

 俺の言うことを信用して、信用するな、気に食わなくても噛み砕け、

 そして自分という名の釜で再構成して、自分の言葉にしろ、

 それができたらもう、お前はお前の望む強さを得ているはずだ、

 得ていなくても、見えるはずだ、感じるはずだ、まぁしらんけどな」



「…言うね龍人、さすが最強の脳筋、いや、今は最強のお節介屋かな」



「ちっうるせぇ似てるからな、昔の俺に、しょーがないだろ」



「んぐっんぐっ、た、龍人、…わたし、強くなりたい、

 ひっぐっひっぐっ、だかりゃ、しばりゃく隣にいさせて欲しいぃっ」



「……」



 泣きじゃくりながら、アイラは言う、

 龍人は目を丸くして無言でその言葉を受け止めていた。しかし、



「ハッッ、ハッハッハッハッッ」



「??? ひっぐっひっぐっ、なにが、おかしいの、」



 怒りながら泣きながらアイラは龍人の大笑いに突っ込む、



「よく言えたな、大丈夫だ、お前は強くなるさ、俺ほどかはしらんけどな」



「!? やめて、はずかしいぃ」



 龍人はアイラの頭を撫でまくる、グシャグシャになろうがお構いなしに撫でまくる、



「やめない、褒められとけよ、黙って褒められとけ。

 俺はロクに褒めないんだからな、最後かもしれん」



「や、やめ、てよぉ、龍人ぉ」



「ふふふ、問題なさそうね」



 クロウディアは二人を眺めながら微笑んだ。




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