おつかいの報酬
最初で最後の村アイテール、
いつも通りのアイテール、その一番大きな建物 大聖堂。
朝凪 旭は静かな面持ちで膝をつき目を閉じ、
両手を握り合い祈りを捧げレベルアップをしていた。
「はい、レベルアップは成されました。いいですよ。旭さん」
金髪の巨乳美人、神の代行者ユーノは旭にレベルアップが済んだことを告げる。
「…ありがとう、ユーノさん」
「…なにかあったのですか?
いつもの元気がないように思えますが、龍人さんと喧嘩でもしたのですか?」
「なっ、なんでそこで龍人が出てくるんですかっ」
「ふふふ、『脳筋の相棒』なのだから
当然関係していると察するのは必然だと思いますが」
龍人の名前を出したらいつもの元気な旭が飛び出し微笑みながら語る神の代行者ユーノ、
「…まぁ関係なくはないけど、いや、ほぼ100%な気もするけど、
でも100%私の問題だから」
旭はそう言いながら事前に決めていたステータスを上げる。
「…あの龍人さんと並んで歩くのは
第三者の私から見ても大変なのは想像しなくてもわかります。
なにか悩んだ時は話を聞くことくらいしかできませんがいつでもいらしてください」
「…ありがとう、でもその言葉、今は忘れる。
甘えになりそうだし、逃げ場所はあっていいけど、
最初から設定してあるのも私は今は嫌な予感がするから、
それでももし何かあった時思い出したらその時はお願いするかも」
「ふふふ、それでこそ脳筋の相棒です」
「ありがとう、じゃ行くねっ」
旭は大聖堂の出入り口に向かって歩きだす、
「はい、いつでも私はここに居ます。
それと龍人さんにもレベルアップがなくてもたまには顔を見せて欲しいとお伝え下さい。」
「え、ユーノさん、実はライバルッッ」
その言葉に旭は立ち止まり振り返りそう言葉を返す。
「ふふふ、どうでしょう?
昔はよく話し相手になってくれたんですけど
最近全然来てくれないのですよね。
まぁ、ライバルかどうかは
それもあなたの強さになるのならそれもいいのではないでしょうか?」
「むむむむ、ユーノさんおっぱい大きいし…綺麗だし…まぁ伝えときます。
じゃっ」
旭は神の代行者ユーノの体を上から下まで隈なく視姦し、
その視線は再度胸におっぱいに行き着き、
最終的にユーノの顔に行き着き旭は伝えておくと発言した。
「はい、お気をつけて」
神の代行者ユーノは旭の立ち去る背中を微笑みながら見送った。
『始まりの狩人と亡者の森』、
とある場所、大きな木、大木、大樹、
正式名称『過ぎ去りし大樹』、
吾妻龍人は一人佇む、それに手をやり、呟く、
「陽花里も、勇人も、先に来ちまったんだよなぁ、
ここに来る度に確かめるが何度やっても結果は一緒だ」
「龍人っ」
旭の声に振り返る龍人、
「おお、来たか、」
「確かめてたの?」
「つい…な」
「私はお父さんが来ててお母さんが来てないんだよなぁ」
『過ぎ去りし大樹』、龍人なら自身の両親、妻、息子、
およそ一親等だけだが、自分の親族がこの世界に『来ているのか』、
『来ていないのか』だけわかる不思議な大樹、
無論一夫多妻制だろうが、再婚を繰り返そうがそれは変わらない、
この世界が内縁と認めたのなら知ることは可能である。
「親父とお袋…ね」
「龍人、旭」
その声の主はジャック・ユーキリス、
若干息を切らしながら『過ぎ去りし大樹』のもとにやってくる。
「来たか、早かったな」
「『光の衣の柱石』で知らせてくれたんだ、それは飛んで来るよ」
『光の衣の柱石』、生者が持つアイテム、連絡手段としても用いられるアイテムである。
互いに承認し登録を済ませたのならピンチのときなどに使用し、
申請された側が了承すれば空間を超え白い衣を纏い、
助けを求めた生者のもとに駆けつけることができる便利ツールである。
故に連絡手段として使われる事が多い。
「まぁ事が事だからな、そりゃそうか」
「それで、あったのか? 薬は、」
「結論から言うと、そんなもんはなかった。だが――」
「だが?」
「こいつだ。」
龍人は取り出す、それはアニマの結晶。
「アニマの…結晶? それがどうしたと言うんだ」
「こいつは、魔女の秘境のBOSS、魔女エレナ・ブラン・ヒートのアニマの結晶だ」
「…エ、エレナだと?」
ジャックは顔色を変える、その名前は自身の娘の名前、察する他無い、
「察しが良いな、つい100年前だ何年前だかは魔法使いブランだったが、
そのあたりに浮遊していたアニマが新たな核となり、
再構成されたBOSSだと思われる、彼女は、お前の娘、エレナ・ユーキリスだ」
「馬鹿なっエレナは、俺達より早く来て、この世界で命を全うしたはずだっ、」
「その通りだ。まぁ、百聞は一見にしかず、所有権を移す、触ってみろよ、
お前にも見せてくれるはずだ」
手を震わせながらアニマの結晶を受け取りジャックは龍人達が見たイメージを見る。
「…ッッッ……龍人、これは…、」
「なんの因果か俺が最後に看取ったらしい、
そしてその意志は、長い間この世界を漂い、
BOSSの中で再び芽吹いた。
こんな事例は今まであったか知らんが、少なくとも俺は知らん。」
「…まだ、エレナはBOSSとして存在しているのか」
「確認したわけじゃないが多分な、何度か倒せば、ブランに戻るかもしれんがな、」
「そうか…これをしばらく借りていいか?」
「ああ、嫁さんにも見せてやるといい、それが薬となるかは知らんがな、
それと、これは魔女フレデリカからのジャックへのプレゼントだ、」
龍人は『不可視のBOSS戦』を4つ、ジャックに渡し、譲渡する、
「何だこれは、不可視の休息じゃないか」
「よく見ろよ、アイテム名、」
「不可視のBOSS戦? なるほど、こんなものがあるのか、」
ジャックはフレイバーテキストを読みその効果を知り納得する。
「BOSSをスキップできるなら
今のアリスの状況でも連れて見に行くことくらいは可能だろう」
「…ありがとう龍人、旭」
「礼に早い、半分はフレデリカだしな、そして勿論タダじゃない、」
「そうだったな、そういえば何も報酬の話はしていなかったな」
「だから考えた、報酬は、『カオスアニマを賭けて戦うこと』だ、ジャック」
「!?」
「どうせいつかはやりあうんだ、白黒つけようや」
「……」
「カオスの契約書を使い、
2対2のカオスアニマを賭けた戦い、基本タイマンで、勝った方の総取り、
片方同士が負けても最終的に勝ち残った二人が1対1でやり合い勝ってた側の勝ち、
場所はガルデアの塔、」
「その『薬』が、作用しようがしまいが戦おうや」
「……わかった、とりあえずアリスにこれを見せる。
そうだな…一週間…いやエレナに会いに行く事も考えて十日ほど待ってくれないか」
「ああ、いいぜ、じゃあ十日後、朝、ガルデアの塔、中腹の広場で待ってるぜ、
もちろんなにかあったら連絡してくれ」
「ああ、それでいい、とりあえず今はアリスの所に行くよ」
「ああ、」
ジャックは過ぎ去りし大樹を後にする、龍人と旭はそれを見送る、旭は口を開く、
「龍人、これで よかったのかな…、いや、これでいいってわかってるけど」
「…ああ、俺らは『さいってぇ』でいい、
さいっこうを目指してるんだからな、誰かにとっての悪にも喜んでなるさ」
「そう…だね」
旭は小さくなったジャックの背中を最後まで見送った。
「「おりゃぁぁぁぁぁッッッ」」
ここは忘却の雪原、
龍人は防寒装備を身に纏いながらヴォルファングで
無尽蔵に湧き出てくる亡者を駆逐している。
手に入るアニマは灼熱の黒鉄城に比べればやや少ないが、
体を動かすならここが一番かもしれない。
龍人の気合の入った剣撃と声がただそこそこの吹雪の中巻き起こり続ける。
「元気そうだな、龍人」
「!?」
「どうしたジャックもう行ってきたのかよ、約束の日までまだ時間があるぞ」
その声の主はジャック・ユーキリス、同じく防寒装備で大型クラブ、
大樹の大づちを装備している。豪快に亡者を吹き飛ばす。
「なに、身体を動かしたくてな、それにここは俺達や他のやつの稼ぎ場だぞ龍人」
「そりゃっそうだったなッッ、」
「アリスとエレナの所に行ってきたよ、
そして話したよ、全部なっ、戦うことは俺たち二人の総意だっ」
「…そうかっ」
「だが、負ける気はない、
ユーキリス夫妻の実力を存分に味わって、カオスアニマになるんだなっ龍人ッ」
「味わってはやるが、勝つのは脳筋と痴女だぜッッ」
豪快に二人の聖者が雪の中、大物武器を亡者に叩きつけた。




