2人でないと
「おっかえりぃ~」
魔女フレデリカ・アラーノは龍人と旭をくるりと回って陽気に出迎える。
「悪いが これは渡せそうにない、」
「? とりあえず事情を話してよ」
開口一番アニマの結晶を渡せないという龍人に
怪訝そうな顔で事情を話すよう促す魔女フレデリカ。
「なるほどね、理解した。
まぁいいから一旦譲渡して。
わたしはそれを部分的に削ぎ落とす技術があるから、
アイテムの名称もフレイバーテキストも変わらないし、
微々たるものでいいからさ、
事情が事情だからわたしはそれでいいわ。他の物は採ってきたんでしょ?」
一連の事情を聞いたフレデリカは納得し、
結晶を一時的に渡すようお願いする。
「ああ、ほれ」
龍人はお願いされていた蜘蛛の糸などを展開させ、
手早く所有権をその場に放棄する、
アニマの結晶も一時的にフレデリカに渡すため譲渡申請をする、
フレデリカもこれを手早く受領する、
「おーさすが脳筋、仕事はきちんとこなすな~、えらいえらいっ」
「で、そいつから薬創れるのか?」
エレナ・ブラン・ヒートのアニマの結晶を眺めているフレデリカに龍人は問う、
「んー? それは無理じゃないかな? 他の研究には使えると思うけど」
「まぁ渡せないとあんた自身も言ってたけど、
このアニマの結晶自体がジャック、アリスの薬になり得ると思うし、
可能性すらもはや微塵も感じていない物で余計な期待を持たせてもしようがないでしょう」
そう言いながらフレデリカは手に魔力を込めてアニマの結晶を一部を千切り取る。
「そうか…まぁ、そいつを手に取らせてみるのが一番の薬だわな」
フレデリカは未だ多くが残る原本のアニマの結晶を龍人に渡し、
譲渡申請する。
「それにしても偶然なのか運命なのか、二人は愛されているのかもね、
傍目から見ているとこの世界に導かれているような感じもするよねぇ~」
龍人はそれを受領しながら言った。
「そう言われると何も言えんな。
ジャックに依頼されて行った先に、
やつの娘の魂が乗り移ったBOSSが居たわけだからな、
まぁ向こうが導かれてるのかもしれんが、この場合ジャックの方とは思えんな。」
「この導きとも取れるなにか、それすらも利用する? 吾妻龍人、」
「…さあな、」
龍人は『本当に導かれてるのかもわからない』、
『利用できるものは利用するまでだが』、と言う声音でフレデリカの問いに答える。
「まあいいでしょう、もうアニマの結晶の一部も貰ったし、行くといいわ、
もうここには用はないでしょ?」
「ああ、世話になったなフレデリカ」
「ふふふ、そうだ、これを持って行くといいわ、」
フレデリカは赤い液体の入ったコルクでフタのされている小瓶と
不可視のBOSS戦2つを龍人に譲渡する。
「なんだこれ?」
龍人は左手で受け取り、適当に観察する、龍人はアイテム名などを確認する。
「な~に小瓶の方は特に意味は無いの、研究成果の一つだよん、
わたしの研究の半分以上は特に意味は無いこと、だからね?
後でフレーバーテキスト確認しておきなよ、
不可視の方は恐らくエレナ・ブラン・ヒート見たいでしょう、
ユーキリス夫妻がね、
BOSS戦がなければここまでくるくらいはできるだろうし?」
龍人はそれがなんなのか理解したのかアイテムポケットに収納する。
「おまえ気が利くな、さすが俺より長く居るだけはある」
「その褒められ方あんまりうれしくないかなぁ。
それより、旭ちゃん、一言もしゃべらないけど、わたしは見ていたよ、
たとえそれが領域の中だとしてもね」
「!?」
旭は驚く、領域、あの白い領域の中でさえ見ることができるのかと、
そしてそこで行われた行為は、今彼女は触れてほしくない部分でもある。
必死に整理してどう立ち向かうのか、彼女はこの間も思考し、危機感を感じ、
明日に目をやっていたからだ。
「ふふふ、そんな顔をしないでよ、公言はしないし、わたしは好きだよ、
二人みたいな『足掻く者』がね、旭、あなたはその中で一番だわ。」
「実に好ましいよ、なにかあったら来るといいわ、
自己対話の変わり、キャッチボールくらいなら相手にはなると思うよ。
まぁ他にも頼れる生者がアイテールの回りには居るから必要ないでしょうけどね、
まぁそれでも補えない何かがあった時、
わたしは全力で答えるわ。だた、それだけを言いたかったんだ。」
「…お節介ですねフレデリカさん、」
「ふふふ、まぁまた会う機会があったらゆっくりお茶でも飲みましょう、」
「…はい、」
「じゃあな、」
「さよなら、フレデリカさん」
旭はお辞儀をしてこの魔女、フレデリカ・アラーノの工房を後にする。
一人になったフレデリカはしばらくして口を開く、意味深に語りだす。
「1万年を超える脳筋を追いかける、一年にも満たない、
今にも消えそうな白き閃光、か、
闇に飲まれても、光り輝く閃光であらんことを」
手早く敵の相手もそこそこに『遙か底の魔女の秘境』を抜け
『獣たちの怨嗟の魔境』の道中で不可視の休息を使い就寝の体制に入っていた。
BOSSは復活しておらず、素通りだった。
もしかしたら他の生者なら出現する可能性はあるかもしれない。
旭はお茶をすすりながら同じくお茶をすする龍人の顔を眺めている。
「なんだよ」
「…なんでもない、」
あまりにもジッと見られていたので龍人はなんかあるのかと問いかけたが、
旭はなんでもないと返した。
「まぁこれだけは言っておく、
おまえも言ってたが『転生』を目指すってのは一人じゃ無理だった。
今回の戦いでよく感じた、実感した、お前が欠けたら恐らく俺もいけない。
俺とおまえの差は今のところステータス、一瞬の一歩、簡単に言うならそれだ。
だがステータスだけはどうしようもない、
恐らく俺のステータスをおまえが目指しても意味はない。
ともかく旭、おまえは最後に俺に並べばいい、
いや、そんなもの貫いて超せばいい、…手段はわからんがな、」
「…それが、どんなに大変なことでも?」
旭の問いかけに、龍人は一度目を瞑り、目を開き言う、
「お前は、くるさ、一万年以上の差がどうした、
おまえはその脳筋の相棒なんだろ?
おまえが隣りにいて、俺は違和感を感じていない、それは本当だ」
「…うん、ありがと」
「……」
少しの静寂、暖かなムード、良いムード、旭は言葉にする、
「でもおっぱいは今日はダメ、」
「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ」
「いいムードやったやん旭さん、」
龍人は身振り手振りで訴える、おっぱいおっぱいと、
「わかってるんだから、魂胆。なにがやんだ、似非関西人」
「ぐぬぬ、」
「ふふふ、バカみたい、男って」
「まぁそうだな男は基本馬鹿だ、今日は大人しく寝とくよ、
おまえも考えまとめたいだろうしな、スッキリしてからのほうが燃える。」
旭が笑ったことで龍人は満足したのかおっぱいを揉みたいという矛を抑える、
「はぁぁぁぁ、ほんっとおっぱい脳筋おじさんなんだから…」
「そうだな俺はおっぱい脳筋おじさんだな、もうおっぱい脳筋おじさんは寝るぞ。」
「はいはい未練が垣間見えるけど、お休み、龍人」
ありがとう
旭は龍人に感謝を口にせず、心の中で感謝を述べた。
その声を聴く者は想った本人しかいない。
だがその感謝の波紋は確かに彼女の中で響き渡った。




