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遙か底の魔女の秘境

挿絵(By みてみん)



 龍人と旭は『腐り果てる前の亡者たちの箱庭』越え、

 目的地である『遙か底の魔女の秘境』に到着した。

 

 『遙か底の魔女の秘境』

 このルートの今現在の最深部、今現在、というのはこの世界は常に変貌し、

 拡張、進化するからである。

 今現在確認されているのはここまで、ということである。


 『遙か底の魔女の秘境』は緑々生い茂る木々や草、

 灰色、いや白に近い灰色というべきか、いや白でいい、

 白と緑と木の茶色、そんな色の世界。

 木は太い根っこや、幹がいろんな方向に自由に伸びたりしている。

 所々にある白色の建物にもその木々は絡まり側面を破壊し

 中にまで侵入していたりする。

 白灰色のゴツゴツした壁、小さな崖が連なるが、遙か上空には空も見える、

 『神に至れぬ古竜の巣』のようにロープが引いてあり、崖から崖へ移動可能である。



「で、ここはどんなステージなの」



「まぁ文字通り魔女の秘境なわけだから、

 魔法、魔術を使う魔女みたいのがいっぱいだ、

 物理攻撃は半減だったような、魔法が有効だが俺達の選択肢はない、

 物理で殴る攻撃力半減から始まるアンチ脳筋ステージだ。」



「あと確か蜘蛛がいたかな、変わってなければだが、

 まぁ俺も初見のつもりでやるから事前情報は当てにするな」



「魔法と魔術かぁ遠距離攻撃うざそう」



 少し警戒しつつ歩いた所で旭に飛来する雷の魔法、

 第二魔法 誘導される雷の矢 旭は躱す、



「えっなにっ二つ?? どこからっ」



「下だ、そして上からだ、あと遙か前方に多数、

 まだ索敵範囲外だがもう少しでも近づいたら集中砲火だなこりゃ、

 上下はともかく前はこんなにうじゃうじゃいなかったぞ、」



 龍人と旭はロープを伝って丁度高低差で言うなら中間地点の場所に降り立ったが、

 上と下から白いローブを纏った魔女に魔法を今現在も一定のリズムで放たれ続けている。



「あんなの弓じゃ届かないわよっ」



 下の敵ともかく高所は弓で何とかする他無い、

 旭も魔法は使えるとは言え、最低値の1しか上げてない、

 そして氷の第二魔法、近距離用の魔法しか放てない、

 必然的に攻撃手段は弓になる。

 

 もちろんこのステージを進んでいけば

 高所にも出ることは可能ではあるが、

 際限なく放たれる魔法の中でくまなく探索攻略は骨が折れる、

 これだけの数の敵がいる場合倒している間に復活する可能性も高い。



「弓…か、そういやそんなのあったな、」



「?」



 龍人は取り出す、それは言葉通り弓、黒と赤の配色の大きな弓、



「超重量の弓 ロンギヌス」



「なにそれっ」



「昔もらったんだよ。お下がりだ、そしてかなりレアだ。

 そして俺は当然こいつを扱えるほど技術力は足りてない」



「え? なにそれ、だめじゃん、索敵範囲に入ってるあの二人はともかく

 かなり遠くに見える奴にそもそも届くの? 」



「見てな」



 『対竜用の特殊な矢』龍人はそれを取り出すと弓を構える、

 それは螺旋状の槍のようなもの、龍人は放つ、まず近場の魔法を放つ高所の方に放つ、



「「シッッ」」



 その掛け声とともに放たれた矢は見事命中する、

 それもものすごい着地音を奏でて、



「すごっ」



「どうだちょっとエ◯ヤっポイだろ、

 技術力はないけど脳筋で無理やり威力を上げた脳筋の弓よっ、見たかっ」



「いたっいたっ」



 龍人は旭に自慢げに語りかけている間に雷の魔法を幾つか受けてしまう。



「向こうも狙ってるんだから、なにやってんのよ。

 エ◯ヤなら花みたいな盾あったでしょ出してみなさいよ」



「うんなもんあるかっくそっ遠距離から薙ぎ払ってやるぅっっ」



 下と、そして前方に複数ばらばらで待機している白、

 黒のローブを纏う魔女たちに遠距離から容赦なく矢を放つ、

 技術力が足りていないため威力は半減しているが

 そもそも龍人が説明したとおり吾妻龍人は脳筋、

 馬鹿げた筋力を活かし、そのデメリットを補うほどの威力を含んでしまっている。



「みろっみろっドドリアさん旭さん、人がゴミのようだっきれいな花火ですよッッ」



「楽しそうね」



 フ◯ーザのモノマネを踏まえつつ、

 何かスイッチが入ったかのように矢を放ち続ける龍人、

 実に楽しそうである。

 

 遠距離からあらかた魔女たちを片付けた二人は、

 下方にロープを使わず落ちて着地し、前へと進む。



「キャッ」



 旭は進んだ先で突如拘束される、



「見たこと無いななんだこれ、擬態系の木のモンスターか、」



「それにしてもおまえ、少しは成長しろよ、

 道中の敵になると『ゆるゆる』なのどうにかならんのか」



 龍人の指摘は最もであるが、

 旭を拘束したのは木に擬態した木のモンスター、

 ツリーオクトパスである。


 茶色の木の肌で根っこや木の幹の部分が触手のようにうねる、

 いかにもなモンスターである。



「なによ、『ゆるゆる』って酷くないっさっさと助けなさいよッ」



「もがけばいいだろう、永続の拘束攻撃なんて存在しないんだからな、

 どういうたぐいの攻撃か知らんが、解けないなら抵抗しろ」



「ちょっあっもうッなにこれぇ、なんかっ吸われてっあっ」



 旭は淫靡いんわいあえぎ始める、

 恐らくドレイン系の攻撃なのだろう、

 抵抗しなければ体力をいたずらに吸われ続けるようだ。



「これはこれは、なかなか、非常にダイレクトな、いや その、」



「木の枝から水がっあっいやっみちゃっだめっあっ」



 木の触手から水が滴り落ちる、旭の白い下着が濡れる、

 木の触手は首を、胸を、腹を、股を、太ももを足首を絶妙なテクニックで締め付ける、



「……」



「黙って鑑賞するなぁっっこのばかぁぁッッ」



 枝の触手から抜けだした旭はロングソードでツリーオクトパスを斬りつける、

 ツリーオクトパスは意地を見せる、木の触手の打撃の攻撃、

 鞭のような攻撃、旭は躱す、前に出ながら躱す、

 そして連撃、攻撃を躱しながらの4連撃、

 ツリーオクトパスは生気を失い、しおれて倒された。



「……」



「もうやだっさいってぇっしばらくこの濡れ濡れ状態なのっもうっ」



 無事ツリーオクトパスを倒した旭は現状を把握し嘆く、

 龍人は無言でその様子をただ鑑賞し続ける。



「………」



「ちょっと龍人、なんとか言いなさいよ、」



「ありがとうございますっありがとうございますッッ」



 旭から視線をそらさず龍人はただ感謝を述べる、

 大事なことなので二回繰り返すことを忘れない。律儀な男である。



「龍人…あんた」



 旭はジト目でその龍人に呆れ返る。



「まぁ冗談はさておいて、あらかた片付いたな、

 毎回あいつが出てきたら捕まってくれよ、素晴らしい目の保養になる。

 それでなんだ、体力吸われたのか? どんな感じだったんだ?」



「イヤよっ、なんでわざわざワザと触手プレイしなきゃいけないのよ。

 まぁあの攻撃は体力は吸われる感じで…その、ちょっと…」



 旭はもじもじする、

 一々聞かれたことに全て答えなくともいいのに答えようと懸命に言葉を選ぼうとする。



「ちょっと気持ちいいのか、献血気持ちいいとかそんな感じか?

 それともおっぱい吸われてる感じか?」



「献血は知らないけどそうなのかな? 

 どっちかって言うとおっ…って、なに言わせんのよッッ」



 旭はそれに乗る、天然的に乗る、だがさすがに最後は突っ込む、

 龍人の腰あたりを名一杯張り手で叩く、



「イッてぇッッ、


 ちっ、ともかくいつまでも漫才してるわけにもいかんな、

 そろそろいくぞ」



 龍人は切り替えて更に前を見据えて走り出した。


「やッッ」



 旭の気合の入った攻撃でその場で絶命する大きい蜘蛛、

 縦に1メートル奥行きと横幅が4メートルはあるだろうか。



「気持ち悪いわね…私蜘蛛は苦手なんだよなぁ」



「わかる わかるぞ、フルチンで意気揚々と風呂場に入った時、

 風呂場の窓からやたら足の長い蜘蛛が侵入して壁に張り付いていた時の緊張感、

 懐かしい、

 大人になってからググったらイエユウレイグモってのが引っかかってな…

 これかぁぁぁッッッッてなったんだ。

 害虫捕食してくれるらしいがフルチンだろうが完全武装だろうが今でも相対したくないな」



「なにそれ…あといちいち愚地◯歩が菩薩の拳を開眼したみたいな演技いらないから」



「本体はめちゃちっちゃいのに足がめちゃくちゃ長いんだ…

 人の顔以上あったよなぁ思い出補正かもしれんが」



「やめて、想像してゾッとしちゃう」



「あとあれだ、自転車で移動中とか、ランニング中に蜘蛛巣、

 身長高いから誰もそこ通らないから……俺が一番被害にあってた、絶対あってたッッッ」



 龍人は癇癪を起こした子供のようにそう言い放つ、



「あー体大きいとそういうのあるのね、

 自転車は私でもたま~にあったからわかるけど、

 龍人は余計に有りそう(笑)」



「(笑)じゃねぇ、百年経とうが千年経とうが万年経とうが忘れねぇぞッッ、


 ……思い…出したッッ」



「思い…出したッッ、じゃないわよ、

 そういうネタは今はいいからあほ言ってないで先行こうよ、ここの建物に入るのよね」



 旭はそう言うと歩みを始める、目の前の建物に、



「ああ、でも――」



「なに?」



 旭は振り返る、建物に入りつつ振り返りながらも進む、



「気をつけろよ、そこ蜘蛛の『巣』だからな、

 人の話を最後まで聞かずズカズカと警戒もせず建物中心まで行くのを…

 止めるように…」



 龍人は脳直で言いながらそれがもはや手遅れであることを言いながら自覚する。



「…『ゆるゆる』だな…」



 龍人は左手の人差し指で頬を掻きながらそう言い放った。

 その瞬間天上から数多くの蜘蛛、

 名称はビックスパイダーという安直な名前の蜘蛛は

 旭の目の前に気持ち悪いほどにその姿を見せる。



「ぎゃーーーーーーーーッッ」



「ちょっとっちょっとっ馬鹿じゃないのッッ何匹いるのよッッ」



 悲鳴を上げこの馬鹿げた蜘蛛パーティーに文句をつけつつ

 旭はロングソードをブンブン振るい攻撃をする、

 しかし多勢、体力もそこそこ、

 1匹倒した所で攻撃範囲の狭いロングソードではそれが限界。

 本来大剣など大型装備が好ましい所。



「ここから見るに正確には何十匹だな、うわー昔より数増えてるなー(棒)」



「ロングソードじゃ駄目っ装備変えないとっっ」



 建物の真ん中での装備変更、

 しかし大量の蜘蛛に囲まれた状況でそれは叶わない、

 攻撃を当然受ける、それも多方面から、



「あーあー」



 龍人は左手で目を覆う、あちゃーと言う感じで覆う、



「きゃッッ痛っ痛ァッッッ」



 蜘蛛、ビックスパイダーの攻撃パターンはさほど多くない、

 多数の足を使った立ち上がりながらの前足達での攻撃、

 ジャンプしての体当たり、

 そして口から吐き出す白いドロドロとした糸攻撃である。



「……(ですよねー、ですよねー、いいぞっ、

 蜘蛛ッッ少しだけ、お前たちを許せる時が来たっ、

 なんとかライフッッ頑張れ頑張れッッ)」



 龍人は建物の入口付近で左手で握りこぶしを作り、

 胸のあたりでそれを少しがんばれがんばれと上下させ敵であるはずの蜘蛛を応援する。



「やだっ糸が絡まってっあっまたっ吸われてるッッ、ウソでしょっもうッッ」



「……」



 白いドロドロの糸は付着すると若干透明になり、

 体力を吸い始める、

 口から吐き出された糸は口までまだ繋がっており旭はそれを幾つも受けている。

 もちろん糸自体が当たったとき痛みを伴うダメージが有る。



「痛っ痛っちょっとっ開放されてもッッ

 一振りしてる間にっまたっ糸がっもうっさいってぇぇッッ」



 糸から開放されてロングソードの攻撃を繰り出そうとするも

 他の糸がすぐに吐き出され躱しようもなく拘束される。



「………」



「龍人っあんたっ胡座あぐらかいてないでっちょっとっ痛っ痛いぃぃ」



 旭の言うように龍人は堂々と胡座をかきながら背筋を伸ばし、

 大剣ヴォルファングすら手放して両の手を両膝に添え観賞を決め込んでいた。

 龍人はその姿勢のまま真剣な眼差しで口を開けた。



「…おっぱいむしゃぶり券、5枚でどうだ」



 龍人の提案はおっぱい、それ以外興味がない、

 何も変わらぬ真剣な眼差しで旭に取引を持ちかける。



「ちょっあんたっさいってぇぇッッ

 この状況で私のおっぱい天秤にかけるのッッさいってぇぇぇッッッッ」



「…あいつは行っちまったのさ。それこそ死の向こう側、

 おっぱいを守って、均一に与えられる死の向こう側へ」



 龍人は建物の上部を見ながらそう言い放つ。



「わかったっわかったからぁっっ

 イノセ◯スごっこしてないで5回でも6回でも

 私のおっぱいむしゃぶっていいからぁッッ

 ていうかもうデザートみたいに勝手にしろって言ったじゃないッッッ

 さっさと助けなさいよぉぉッッッ」



 『もうとっくの昔に自由にしていいと言ったわけだから

 5回と言わず幾らでもしていいから』と

 旭は取引など必要ないことを告げ龍人に助けを求める。



「承知ッッ」



 龍人はそう言うと、地面においてあった大剣ヴォルファングを手に取り、

 地を這うように移動し、間合いを詰め、

 ヴォルファングで横薙ぎ攻撃を出す、ビックスパイダーを一網打尽にしていった。



「ふぅぅぅ助かったぁぁぁ、あんなのずるいじゃない」



 旭はようやく開放され、また地面に座りこけている、



「いや、普通警戒するだろ、事前に道中蜘蛛1、2匹でてきて、

 そしたら大きな建物、大きな玄関口、薄暗い内部、

 小学生でも警戒するぞ、変なところで脳筋無鉄砲だよなぁ、

 それがお前のいいところでもあるが」



「うぅぅ、龍人の言葉の飴と鞭が傷にしみるよぉ…」



「これから相当厳しくなる、昔と比べて敵の多さがぜんぜん違う、

 相当攻略されてなくてこの辺は相当『魔窟』だ、BOSSだと思って行くぞ」



「うん、そうする」



 旭は立ち上がり、気合を入れ直す、龍人と旭は建物の奥へと進んだ。





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